かけざんの基本は正確な九九

 かけざんの基本は、九九。
 こんなことをいうと、みなさんは、「そんなのあたりまえじゃないか」と、笑うかもしれません。
 でも、みなさんのまわりにいる中学生のなかに、もし「数学が苦手なんだ」という中学生を見つけたら、
「おにいさん。おねえさん。一の段から九の段まで、できるだけ急いで九九をいってみてください」
 と、ていねいにおねがいして、実際にやってみてもらってください。
 きっと六の段から少しずつ時間がかかるようになるでしょうし、もしかしたら、ときどきまちがえるようになるでしょう。
 中学生の場合、「数学が苦手」のうらには「計算が苦手」がかくれています。そして、「計算が苦手」のうらには「計算練習の不足」や「九九のまちがい」がかくれているものです。
 ところが、中学生は、小学生よりもプライドが高い。
「いまさら、九九や計算練習など、できるものか!」
 そういって、中学校の数学の問題に取り組むでしょう。そして、答え合わせをして、その結果にがっかりと落ち込むのです。
「どうして答えが合わないのだろう?」
 考え方をまちがえているのなら、考え方を正しい方向に向ければいいのです。
 数学のおもしろさは、考え方のおもしろさですから、正しい計算力を身につけている生徒にとっては、「まちがえ」もまた楽しいものなのです。
 しかし、そもそも正しい計算ができない生徒にとっては、数学は苦しみでしかありません。数学が苦手であったり、きらいであったりする原因は、計算力が大きく不足していることです。計算が遅く、そのうえ不正確であれば、だれだって、算数や数学の問題に取り組むのがいやになってしまいます。
 いっぽう、そろばんを練習しているみなさんは、速く、正しい計算ができるようになりますから、算数や数学がきらいになることはないでしょう。計算がラクになれば、算数や数学は楽しいものです。
 さて、「九九」は、中国で生まれました。
 英語では、チャイニーズ・マルティプリケーション・テーブルとかナイン・ナイン・マルティプリケーション・テーブル(Nine Nine multiplication table)というようです。
 ほとんどのかけざんテーブルは、10×10までですが、現在では12×12までのかけざんテーブルも出まわっています。
 さらに、25×25までのもの、30×30、33×33までのものもあり、どこまで暗記するかは、個人で決定すべきことでしょう。
 みなさんは、まず、速くて正確な「九九」をしっかりと身につけてください。そして、その「九九」を使って、かけざんをたくさん練習してください。
 江戸時代には、そろばんの流派によって、わりざんの九九もありましたが、みなさんのわりざんは、かけざんの「九九」を使います。江戸時代であれば、百川流(ももかわりゅう)といわれるかもしれませんね。

学院長 筒井保明