Day: November 13, 2019

そろばん通信|2019年1月号

右脳開発?  「そろばんで右脳開発!」という言葉を聞いたことがありますか?  「そろばんで頭がよくなる」というのなら、よくわかりますが、「右脳開発」といわれると、わかったような、わからないような…  「右脳開発」という言葉は、どちらかというと、古い言い方です。  一九八〇年代に『右脳革命』という本がベストセラーになりました。脳を左右に分けて、「左脳は言語で考え、右脳はイメージで考える」という説が一般的になったのです。もう四十年ちかくも前の話であり、神経科学もさらに進歩していますから、現在では、「イメージを自分で操作することで頭がよくなる」という言い方がいいでしょう。  なぜなら、脳の左右の分担には、ずいぶん個人差があって、脳の働きを右脳と左脳に分けることは厳密にはできないからです。傾向として、左脳は言語的な働きをつかさどり、右脳は非言語的な働きをつかさどる、というほうが正しいでしょう。  さて、ものごとを身につけるとき、言語から非言語へ、意識から無意識へ、という習得の流れがあります。  たとえば、みなさんが、先生から指示を受けます。ボディーランゲージといって、からだで表現する先生もいるでしょうが、多くの先生は「言葉」で指示を与えます。スポーツでも、芸術でも、習い事でも、まず言葉で説明しますね。そして、多くのみなさんは、左脳でその言葉を聞いて、実際の行動を起こします。  このとき、みなさんは、上手にできるでしょうか。  残念ながら、先生の指示(言葉)を意識しているあいだは、上手にできません。  最初はうまくいかなくても、しばらくのあいだ、同じ動作を続けましょう。すると、だんだんうまくいくようになってきます。動作の全体像(イメージ)が把握できますと、同じ動作が、指示(言葉)がなくても、自然に、無意識に、スムーズにできるようになります。つまり、左脳的な処理から、右脳的な処理に変わるわけです。  一九八〇年代には、まだ「人間は言葉で思考する」という考え方が主流でしたが、現在は「人はイメージで考え、思考を言葉で表現する」という考え方になっています。  相対性理論を発見したアインシュタインも「まずイメージで考え、考えがまとまったら、苦労しながら表示記号に置き換えているのです」といっています。  そろばん(とくに暗算)は、「イメージ操作」(玉の位置の変化がイメージ)の練習です。そういう点では、たしかに右脳的な操作ですから、「右脳開発」といっても、まちがいではないでしょう。  そろばんのスピードは、習熟度に比例します。 学院長 筒井保明

そろばん通信|2018年12月号

そろばんの夢  そろばんを楽しく練習して、夜、ぐっすり眠ると、起きたときには覚えていなくても、「そろばんの夢」を見ていたはずです。その証拠に、きのう、練習したそろばんがしっかり身についていると思います。  人がなにかを身につけるのは、眠っているあいだです。  睡眠が深くなっていくときに、その日に学んだことを整理し、夢を見る浅い睡眠のときに定着させます。ですから、そろばんが身についたとすれば、この夢を見る浅い睡眠のときに身についたので、「そろばんの夢」というわけです。  もし、みなさんが漢字や英単語を覚えるのが苦手なら、夜、寝る前にさっと復習して、すぐに眠ってしまえばいいのです。すると、眠っているあいだに、「漢字の夢」や「英単語の夢」を見て、朝、起きたときにはしっかり覚えているでしょう。これは、その日の学習のうち、新しいもの、重要なものから、脳は睡眠中に整理・定着するという仕組みを利用するのです。この仕組みはすべてに有効ですから、ぜひ活用してください。  さて、山手学院は、全国珠算教育連盟に加盟していますので、全珠連の検定試験を目標の一つとしています。検定試験の特徴の一つが「スモール・ステップ」。珠算検定試験は級位(一級~十五級)・段位(準初段~十段)を合わせて全三十五段階、暗算検定試験は級位(一級~十級)・段位(準初段~十段)を合わせて全二十四段階になっています。  検定の目標設定は、現在の実力で取得できそうな級位・段位でもいいでしょうし、あるいは、「飛び級」のようにホップ・ステップ・ジャンプで駆けのぼってもいいでしょう。小学生の段位者のほとんどは、後者のタイプですね。  そろばんのヒケツは、中国の思想家である孔子(こうし)がいうように、 『あることを知る人は、あることを好む人にかないません。あることを好む人は、あることを楽しむ人にかないません』  つまり、なんとなくやっている人は、すすんでやっている人ほど上達しないし、すすんでやっている人でも、楽しくやっている人ほど上達しない、ということです。ですから、みなさんは、楽しく、そろばんに取り組んでください。  中国には、三国志の蜀(しょく)の国を建てた三人の英雄の一人、関羽(かんう)が算盤(さんばん・そろばん)を発明したという伝説があります。時期としては、三世紀の初頭です。(算盤の発明は二世紀ごろといわれます)  孔子は紀元前の人ですから、あったとしても、算盤ではなく、算木(さんぎ)でしょう。  計算が楽しければ、算数はかならず得意になります。「そろばんの夢」を見るくらい練習しましょう。 学院長 筒井保明

そろばん通信|2018年11月号

そろばんは楽しい。  そろばんは手をつかいます。手は脳の運動野のおよそ三分の一、感覚野のおよそ四分の一を占めていますから、手を動かすことの重要さがわかるでしょう。脳の運動野と感覚野にとっては、手は身体の中でいちばん大きな部分なのです。  そろばんを練習して、そろばんが得意になってきますと、そろばんに対応する脳の部位が発達してきます。そろばんができなかった自分とそろばんができる自分は、もうちがう自分です。なにかができるようになると、そのぶん、かならず自分の可能性が広がります。ですから、どんな学習でも、すすんで身につけるようにしましょう。  そろばんと暗算の関係は、そろばんの土台のうえに暗算があります。「意識する・意識しない」にかかわらず、そろばんを習得した人が暗算をするとき、そろばんによって発達した脳の部位が活性化します。同じように、ピアノを習得した人がピアノの演奏を聴くと、ピアノによって発達した脳の部位が活性化しますし、サッカーの選手がサッカーの試合を観戦すると、サッカーによって発達した脳の部位が活性化します。英語では脳の発火(ファイア)といって、カチッと火がつくイメージです。  さて、脳が指令を出してそろばんをはじくわけですが、実際にそろばんをはじくと、その動きが脳によって学習されます。計算する指の動きが運動野や感覚野によって調整され、練習をくりかえすと、速く、正確に、どんどん上達していきます。  音読も同じです。最初はたどたどしくても、なんども声を出して読んでいるうちに、自分の口や舌が運動野や感覚野によって調整されて、じょうずに読めるようになっていきます。じっさい、言語は、自分の声を調整しながら身につけるものですから、日本語にかぎらず、外国語も声を出すことが必要です。  明治時代から、「読み書きそろばん」は、日本人が身につける基本の学習です。音読で声を出すこと、文を手で書くこと、そろばんのたまを指ではじくこと。すべて脳の運動野と感覚野をつかいます。小学生のとき、脳の運動野と感覚野をつかって学習することは、脳の発達にとっても重要なことなのです。見るだけ、聞くだけの受け身の学習ではあまり身につきません。  そろばんは楽しいものです。みなさんがそろばんを練習するときには、ぜひリラックスして、らくな気持ちでおこなってください。かたくなったり、あせったりしたのでは、なかなか上達しません。楽しく練習するのが、そろばん上達のひけつです。  音読やそろばんが得意になると、国語や算数が好きになります。学習は「好きこそものの上手なれ」です。  笑顔で、楽しく、そろばんに取り組みましょう。 学院長 筒井保明