そろばんの夢

 そろばんを楽しく練習して、夜、ぐっすり眠ると、起きたときには覚えていなくても、「そろばんの夢」を見ていたはずです。その証拠に、きのう、練習したそろばんがしっかり身についていると思います。
 人がなにかを身につけるのは、眠っているあいだです。
 睡眠が深くなっていくときに、その日に学んだことを整理し、夢を見る浅い睡眠のときに定着させます。ですから、そろばんが身についたとすれば、この夢を見る浅い睡眠のときに身についたので、「そろばんの夢」というわけです。
 もし、みなさんが漢字や英単語を覚えるのが苦手なら、夜、寝る前にさっと復習して、すぐに眠ってしまえばいいのです。すると、眠っているあいだに、「漢字の夢」や「英単語の夢」を見て、朝、起きたときにはしっかり覚えているでしょう。これは、その日の学習のうち、新しいもの、重要なものから、脳は睡眠中に整理・定着するという仕組みを利用するのです。この仕組みはすべてに有効ですから、ぜひ活用してください。
 さて、山手学院は、全国珠算教育連盟に加盟していますので、全珠連の検定試験を目標の一つとしています。検定試験の特徴の一つが「スモール・ステップ」。珠算検定試験は級位(一級~十五級)・段位(準初段~十段)を合わせて全三十五段階、暗算検定試験は級位(一級~十級)・段位(準初段~十段)を合わせて全二十四段階になっています。
 検定の目標設定は、現在の実力で取得できそうな級位・段位でもいいでしょうし、あるいは、「飛び級」のようにホップ・ステップ・ジャンプで駆けのぼってもいいでしょう。小学生の段位者のほとんどは、後者のタイプですね。
 そろばんのヒケツは、中国の思想家である孔子(こうし)がいうように、
『あることを知る人は、あることを好む人にかないません。あることを好む人は、あることを楽しむ人にかないません』
 つまり、なんとなくやっている人は、すすんでやっている人ほど上達しないし、すすんでやっている人でも、楽しくやっている人ほど上達しない、ということです。ですから、みなさんは、楽しく、そろばんに取り組んでください。
 中国には、三国志の蜀(しょく)の国を建てた三人の英雄の一人、関羽(かんう)が算盤(さんばん・そろばん)を発明したという伝説があります。時期としては、三世紀の初頭です。(算盤の発明は二世紀ごろといわれます)
 孔子は紀元前の人ですから、あったとしても、算盤ではなく、算木(さんぎ)でしょう。
 計算が楽しければ、算数はかならず得意になります。「そろばんの夢」を見るくらい練習しましょう。


学院長 筒井保明