そろばんで集中力を身につける(2)

 前回は、集中力を妨げる原因について話しましたので、今回は、そろばんで集中力を身につける実践方法について説明しましょう。
 集中力が身につくだけでなく、そろばんの上達速度も確実に上がりますから、必ず試してください。じつは、そろばんだけでなく、学習にも、スポーツにも、芸術にも役立つ方法です。
 まず、なにごとであっても、スタートは、リッラクスした状態から始めます。
 小学生がリラックスする方法はかんたんで、目をつむって、ゆっくり呼吸しながら、肩の力を抜いていくだけです。慣れてきますと、ちょっと目をつむるだけでもリッラクスできるようになります。小学生の潜在能力は、大人よりもはるかに高いのです。リラックスしているとき、脳波はアルファ波(α波)であり、学習を吸収できる状態です。
 ところで、サッカーの試合の解説で、「この試合はホームだから、力を発揮できそうですね」「今回はアウェイなので、苦戦しそうですね」のように、「ホーム」と「アウェイ」という言葉が使われることを知っていますか。
 ホームというのは、本拠地。ふだん練習している場所です。
 アウェイというのは、本拠地から離れた場所。つまり、敵地です。
 ホームではリラックスした状態から試合に臨めるので、選手たちは持っている力をじゅうぶんに発揮できます。アウェイでは緊張した状態で試合に臨むことになるので、選手たちは持っている力を上手に発揮することができません。
 緊張した状態にあるとき、人は、ものを学ぶことや力を発揮することがむずかしくなるのです。たとえば、急な火事や地震のときに判断が停止して動けなくなってしまうのは、極度に緊張してしまうからです。「いざ」というときに、ただちに避難するためには、事前の訓練が必要になります。(緊急避難訓練はそういう点で必要なのです)
 ともあれ、みなさんは、そろばんの練習前に、ぜひリラックスしてください。リラックスしてから取り組みますと、集中できますし、習得速度も速くなります。  つぎに、集中力のツボ。中国では、ツボのことを「経穴」(けいけつ)といいます。上の前歯の歯茎に近いところに、頭がよくなる、健康になる、集中できる経穴があるそうです。「舌抵上顎」(ぜつていじょうがく)という指示に従って舌を動かすと、この図のようになります。舌の先が当たっている部分が集中力のツボだといわれます。
 ここで気がつくのは、この舌の先が上あごに当たっている状態は、そのまま「鼻呼吸」の状態です。鼻呼吸は集中力を高めますので、この集中できるツボは、もしかしたら「鼻呼吸」の効果であるかもしれません。ツボを押さえた結果であっても、鼻呼吸の結果であっても、集中力が高まることは確かです。
 さあ、二つの準備ができました。そろばんに向かって、軽快にそろばんの玉を弾いていきましょう。

学院長 筒井保明