新しい感動と新しい響きのなかへ出発しよう!

Depart in new affection and new sound!

 日本の教育の世界で、アクティブ・ラーニングという言葉が頻繁に使われるようになっている。
 教育に関して、日本はいつも後追いであり、1991年の※「アクティブ・ラーニング(クラスルームに感動を作り出す)」というレポートあたりが引き金になっているのだろう。
 学習効果が、学習者の能動性・受動性に左右されることは、ずいぶん昔から指摘されていることだ。
 最初の問いかけは、「受動的な方法で、人は、学ぶことができるのだろうか?」であった。
 受動的な方法とは、授業形式のことである。授業を聞く生徒を調べた結果、平均値として、授業開始10分から15分のあいだに集中力は最高になるが、その後、徐々に下がっていくことがわかった。もちろん、教師の工夫で、集中力を取り戻すこともできるのだが、全体としては下がっていく。そして、集中力の持続時間は、生徒の学力に基づくこともわかった。学力が低い生徒は短く、学力が高い生徒は長い。つまり、学力の高い生徒にとって授業形式は有効であるが、学力の低い生徒にとって授業形式は効果が低い。
 学校がアクティブ・ラーニングを進めていくとしても、さしあたっての問題は、「生徒の学力層を分けることができるのか」ということになる。そして、「能動的な学習への移行は同時にリスクが高くなるという事実に対処できるのか」ということになる。(この二つの問題を解決しないと、アクティブ・ラーニングはうまくいかない)
 さらに、教師の力量も問題になる。学力層に合わせた適切な問いかけができなければ、議論や討論をともなうアクティブな授業は成立しない。また、入学試験を経た後の高校や大学ならば学力層が均質であるかもしれないが、公立小学校・中学校では学力差が大きい。
 そういっても、この議論は、教師側から見たアクティブ・ラーニングであり、君たちは、生徒側からアクティブ・ラーニングをとらえればよい。
 まず受動的学習(パッシブ・ラーニング)とはなにか。「読むだけ。聞くだけ。見るだけ。見て、聞くだけ」ということだ。つぎに能動的学習(アクティブ・ラーニング)とはなにか。「話す。書く。行う。教える」ということだ。
 ある統計では、学習の定着度を「読むだけ10%。聞くだけ20%。見て、聞くだけ50%。話して、書く70%。やってみる90%」としている。あるいは、「読む10%。見て、聞く20%。実演を見る30%。話し合う50%。やってみて繰り返す75%。人に教える90%」となっている。
 私自身は、正直、「ほんとうか?」と思う。「どういう読み方をしたか」「どういう聞き方をしたか」「見て、聞いた後、なにをしたか」を問題にしないと、土台のない学習になるリスクがある。
 「受動的学習は、入力。能動的学習は、出力」ととらえれば、どちらも重要であることがわかる。
 おもしろいことにアクティブ・ラーニングのレポートを読んでいると、君たちではなく、先生の方がよく学べることになる。なぜなら、人に教えることが最も学習効果が高いからだ。
 君たちにとってのアクティブ・ラーニングとは、「話すこと・書くこと・試してみること・人に教えること」にほかならない。「読むこと・聞くこと」は、そのための土台である。土台となる知識や能力があってこそ、積極的に、自主的に学ぶことができる。
 しっかり授業を受けることからスタートしよう。
 ※Active Learning : Creating Excitement in the Classroom by Bonwell and Eison

学院長 筒井保明