いま、君は、目標に向かって、進んでいる。

You're on your way to achieve your goal.

 男子4人、それぞれの前学年の通知表評定が、全員、9科目合計で30であった、とする。
 それぞれの反応が、A君「まずい!」、B君「まずい!」、C君「まずい!」、D君「別に」であった。このとき、A君とB君とC君は、同じように見える。D君は、関心がない? じつは 全員、通知表評定という出来事に対する受けとめ方が違った。
 A君は、日ごろから「父母をよろこばせたい」という考えであるから、「父母をよろこばせることができない」と受けとめて、「まずい!」と反応した。
 B君は、志望校の推薦入試の条件が評定合計37であるから、「志望校に推薦してもらえない」と受けとめて、「まずい!」と反応した。
 C君は、いつも同級生にいろいろと言われるから、「バカにされるかもしれない。はずかしい」と受けとめて、「まずい!」と反応した。
 D君は、通知表がよかったらゲームを買ってもらえる約束をしていたが、それほど欲しくなかったので、「ゲームを買ってもらえないけど、どうでもいいや」と受けとめて、「別に」と反応したのである。
 さて、先生は、この4人に対して、どういう面談を行ったらいいのだろうか。
 成績に関しては、生徒の目標が設定されていないと、論理的に話すことが難しい。評定合計30が、いいのか、わるいのか。目標がなければ、判定できない。
 B君の面談は、かんたんである。「推薦入試のためには、通知表を37以上にする必要がある。本気で目指すなら、中3の1学期の通知表を上げることだ。具体的な取り組みは…」と取り組み方法を指示して、励ませばよい。
 A君の面談は、ちょっと回り道になるが、「ご父母の希望は、具体的にどれくらいだ?」「36以上です」「君は、本気でご父母をよろこばせたいのか?」「はい」とうなずいたならば、「では、具体的な取り組みは…」と取り組み方法を指示して、励ませばよい。
 C君は、受けとめ方による悩みであるから、論理的に「他人が君の成績を批判することはできない。君がはずかしいと思うだけで、同級生は君の成績にまったく関係ない」ということを納得させて、「君の目標は?」「○○です」「それを達成する具体的な取り組みは…」と取り組み方法を指示して、励ませばよい。
 いちばん問題なのは、D君である。ご褒美を目当てとした努力は、ご褒美が必要でなくなったとき、動機を失ってしまう。たとえば、お母さんをよろこばせるためにお手伝いをしている子どもは、いつでもお手伝いができるけれど、お小遣いが目当てでお手伝いをしている子どもは、お小遣いがもらえないとき、手伝う気持ちを失いがちだ。
 D君に対しては、学習はご褒美のためにするものではなく、自分の目標を実現するためのものであることをしっかり認識させなければならない。そうしないと、「なにも買ってもらえないなら、なにもやらない」という反応が生じる恐れがある。学習の主体は、自分だ。「目標に対して、通知表の評定は○○以上が望ましい」という考えをもっていれば、通知表を分析することによって、これからやることが決まってくる。D君に必要なものは、自分の目標(達成したい数字)と、「やればできる」という確信である。
 自分の目標と「やればできる」という確信があれば、どんな結果も、目標を達成しつつある自分の励みになる。
 いま、君は、目標に向かって、進んでいる。

学院長 筒井保明