君は君のことをやる!

You do your thing !

 人と人との関係を「縁」という。「因縁果」(原因・縁起・結果)の「縁」であり、縁がなければ因も果もない。お釈迦様の悟りは、この「因縁果」を「空」と達観したことである。
 「袖振り合うも多生の縁」という。私たちの悩みや苦しみの多くは、この多生の縁によって生まれる。
 まず親子から始まり、兄弟や姉妹、友だち、学校生活や社会生活の中で出会う多くの人たち…
 人は、基本的に人間関係で悩む。
 悩みのもとは「縁」だ。だから、「縁」を制御できれば、悩みは消えるだろう。すくなくとも、悩みが薄くなるはずである。
 では、悩みの「縁」とはなんだろうか? 人の「心」である。「なぜこうした状況が起こったのか」を解釈する人の考え方・受け止め方(ビリーフ、文章記述)が悩みをつくる。
 仮に、目の前に、宿題を忘れた生徒たちに対して、猛り狂っている先生がいるとする。
 ある生徒は涙を浮かべてうなだれている。ある生徒はうろたえて不安におびえている。ある生徒は反発してにらんでいる。ある生徒はあらぬ方向を見ている。ある生徒は冷静に叱責を聞いている。
 かれらの反応の違いは、「できごとに対する考え方・受け止め方」(ビリーフ)の違いなのだ。
 心理学者のアルバート・エリス博士は、この過程をABCモデルとして、

A 出来したできごと(Activating Event)あるいは、逆境(Adversity)
B 考え方・受け止め方(Belief) ある状況に立ち至った理由に対する説明のつけ方
C 結果(Consequence)「考え方・受け止め方」が引き起こした感情や行動

 とした。(仏教では、A原因、B縁起、C結果となる)そして、B「考え方・受け止め方」を書き換えることによって、ストレスや逆境
に対応しようというのが、エリス博士の心理療法である。
 上記の例でいえば、「生徒たちが宿題を忘れたことによって、先生が猛り狂っている」という事実(A)→「先生が猛り狂っているのは大人げないが、宿題を忘れた私たちの将来を案じるあまりであろうから、非は私たちにある」という考え方・受け止め方(B)→「先生が落ち着くのを待って、先生に謝る」という結果(C)、のようなA→B→Cが望ましいところであろうか。
 以上のように、何が起きた(A)としても、君は自分の考え方・受け止め方(B)を選択することができる。その選択によって、君の対応や解決法(C)が決まる。
 くよくよと悩むということは、(B)の考え方・受け止め方に問題があるのだ。悩むのではなく、君の考え方・受け止め方をチェックして書き換えれば、悩みは消えていくだろう。
 心理学者のフレドリック・パールは、人間関係について、つぎのようにいう。

私は私のことをやる。君は君のことをやる。I do my thing and you do your thing
私は、君の期待に応えるために存在するわけじゃない。I am not in this world to live up to your expectations
君は、私の期待に応えるために存在するわけじゃない。and you are not in this world to live up to mine.
君は君であり、私は私である。You are you and I am I
偶然にお互いを発見すれば、すばらしいね。and if by chance we find each other, it's beautiful.

 君は誰かの期待に応えるために存在しているわけではなく、自分の目標を達成するために存在している。君は君のことをしっかりとやればいい。

学院長 筒井保明