やりたいことを見つけよう!

You've got to find what you love.

 スタンフォード大学の卒業生たちに向かって、「やりたいことを見つけよう」と励ましたのは、アップル・コンピューターの創業者スティーブ・ジョブズだ。彼自身は、あるカレッジを半年で退学した。理由は、学校に価値が見出せなかったから。このとき、彼は、なにをやりたいのか、まったくわかっていなかった。その後、好奇心と直感が導くままに出会ったものごと(その一つがカリグラフィー=文字を美しく見せるための筆記法)が、将来のある時点で、アップル・コンピューターにつながったとき、無限の価値に変わった。このことをスティーブ・ジョブズは、「点々をつなぐこと」connecting the dotsと表現した。
 空間と時間のなかでものごとが関係することをお釈迦様が縁起と呼んだように、ジョブズは、自分が出会ったものごとが現在や未来のものごとにつながることを「点々をつなぐこと」といった。「先を見て、点々をつなぐことはできない。ふりかえって、点々をつなぐことができるだけだ。君の未来において、なんやかやで点々がつながっていくことを信じるんだよ」
 カリグラフィーを学んでいるとき、それがアップル・コンピューターにつながるとは予想もしていなかった。アップル・コンピューターの開発に取り組んでいるとき、カリグラフィーという点がつながったのだ。
 スピーチのなかほどで死の問題に触れた後、「時間は限られている。他人の人生を生きるな。教条に騙されるな。君の目標を他人に評価させるな。君の心と直感に従う勇気を持て。心と直感は君が何になりたいのか知っているものさ」と若者を励まし、最後に、『全地球カタログ』の編集者スチュワート・ブランドの話をして、その最終巻の裏表紙に早朝の田舎道の写真があり、その下に「ハングリーであれ。バカであれ」Stay Hungry. Stay Foolish.という言葉があるのを紹介して、自分自身と卒業生たちへの締めくくりのメッセージとしている。ハングリーも、バカも、この文脈では、肯定的な意味だ。
 さて、2019年に開校する細田学園中学・高等学校は、ジョブズの「点々をつなぐこと」を踏まえて、ドッツdots教育を行う。教育目標として、学校で体験したことが生徒一人ひとりの未来につながっていくことを目指している。細田学園は、この数年、人気も実績も高くなっている学校であり、中高一貫教育の成果が期待できる学校になるだろう。
 細田学園は、教育内容を明確に示している学校の一つだ。教育方針や教育内容を明示することによって、自然と受験者の層が変わってくる。教育内容が一般的なものであれば受験者は広範囲になるが、教育の特徴がはっきりすると、その方針や内容に賛成する生徒・保護者に絞り込まれてくるからである。
 どちらのほうがいいかというと、教育内容ははっきりしているほうがいい。「やりたいこと」「やりたいことにつながること」がその学校にあれば、志望校として安心して選べるだろう。
 スティーブ・ジョブズがカレッジを退学したのは、やりたいことがなかったからだ。ジョブズは、「やりたいこと」で学校を選ぶべきであったろう。
 中学、高校、大学、大学院…と、上級に上がるにしたがって、やりたいことはより明確になるはずだが、おぼろげであっても、とりあえずであっても、やりたいことを考えてから学校を選んでほしい。「なぜ進学するのか」といえば、その場所が自分の将来につながると判断するからである。
 さあ、やりたいことを見つけよう。行きたい学校を見つけよう。

学院長 筒井保明