君の可能性の始まり

The Beginning of Your Potency

 前回、学習前の準備として、
 ①まずゆっくり呼吸しながら体の力を抜いてリラックスする。
 ②リラックスしながら、学習者として理想的な自分をイメージする。(らくらく問題を解いている姿でも、集中して取り組んでいる姿でも、好ましい自分の姿であればよい)
 ③思い描いた自分の姿に対して「わたしはできる」と確信を持つ。(できるぞ、と理想の自己イメージに声をかけてもよい)
 ということを書いた。さっそく、実践した生徒から質問されたので、答えよう。
(Q)「らくらく問題を解いている自分」「集中して取り組んでいる自分」はイメージできました。そして、その自分に「おまえはできる」と声をかけました。そうしてから、学習を始めたのですが、効果が上がっているのかどうかわかりません。今後、どうしたらいいのですか?
(A)しばらくのあいだ、続ければ、効果がはっきりしてくる。理想の自己イメージにしたがって、実際に問題を解く。集中して取り組む。実際に行動を起こすことが重要なのだ。その行動自体も経験されるので、繰り返して続けることによって、さらに理想の自己イメージどおりの自分になっていく。いわば、セルフ・エデュケーションだね。
 自己イメージと行動の関係を考究し、自然療法として実践するフェルデンクライス・メソッドの創始者であるモシェ・フェルデンクライス(1904-1984)は、「何年もかかってできあがった自己イメージにしたがって、誰もが、それぞれのやり方で、話したり、動いたり、考えたり、感じたりする。行動の仕方を変えるためには、自分の中に持っている自己イメージを絶対に変えなければならない」という。行動を変えるためには、現在の自己イメージを変えることがMUSTなのだ。
 自己イメージは、静的なものではなく、動作、感情、感覚、思考によって成り立っている。
 たとえば、歩きながら、サルをイメージすれば、君は次第に背を丸くして歩くようになる。(もしかしたらキーキー鳴いてしまうかも?)王様をイメージすれば、次第に胸を張って歩くようになる。泥棒をイメージすれば、抜き足差し足で歩くようになる。お嬢様をイメージすれば、内またで上品に歩くようになる。(実際にやってみよう。体がイメージに従うことに驚くはずだ)
 さて、これまで学習の取り組みをいやがっていた君が、心機一転、リラックスして、すすんで問題を解くようにする。(解けない場合でも、前向きな気持ちで解こうとする)また、目の前のことに、集中して取り組むようにする。この行動自体が変化であり、これを繰り返して続けていると、この変化が習慣になってくる。変化が習慣として固定したとき、学習嫌いだった君は、どんどんと積極的に学習に取り組む君に変わったのだ。
 いやいや学習に取り組んでいれば、それが習慣化して固定してしまう。(そして、学習が苦手な自己イメージができあがる)
 気持ちよく学習に取り組んでいれば、それが習慣化して固定してしまう。(そして、学習が得意な自己イメージができあがる)
 もし、いま学習が苦手で、これから得意になりたいのなら、これまでにできあがった自己イメージを絶対に変えなければならない。その方法の一つが冒頭の学習前の準備なのである。
 フェルデンクライスの言葉を君の励ましのために一つ。
 「僕が窮地にいるのを君は目撃した。そして、ここからが僕の可能性の始まりなのだ」

学院長 筒井保明