さくらんぼ計算は考えかたのひとつ

 「さくらんぼ計算」は、考えかたのひとつであり、計算方法のひとつです。ところが、計算の答えがあっているにもかかわらず、やり方がさくらんぼ計算になっていないと、△や×をつけたり、ひどい場合は、叱ったりする小学校の先生がいるようです。
 文科省としては、「こういう考え方もあるよ」というレベルの話なのですが、勘違いした先生が無理強いすると、子どもたちが混乱してしまいます。
 小学校学習指導要領【算数編】から、小学生や保護者の方を悩ませるさくらんぼ計算に該当する部分を引用してみましょう。


 「様々な計算の仕方が考えられる」と明記されています。
 数字をドッツ(Dots)としてとらえられるなら、かんたんなことですし、わたしたちが頭のなかで無意識にやっていることでもありますから、さくらんぼ計算をめんどうに感じていやがる小学生の気持ちもわかりますね。
 こういった問題は、そろばんにも、暗算にも、存在します。
 江戸時代、そろばんには、多くの流派がありました。割り算にも九九があり、吉田松陰先生も松下村塾で教えていました。明治、大正、昭和の初めごろまで続いていたようですが、みなさんは、おぼえません。
 現在では流派の色はあまり濃くないのですが、たとえば、かけ算のとき、かけられる数とかける数をそろばんに置くか置かないか、先生によって分かれたりします。両方置く先生、片方置く先生、どちらも置かない先生、また、生徒の学年や習熟度によって使い分ける先生がいます。
 正しい答えを得ることにちがいはないのですから、どれを選ぶか、君たちが決めてもよいのです。
 ところで、西洋式暗算Mental MathにもLeft to Right(左から右に計算する)派とRight to Left(右から左に計算する)派がいますが、わたしはLeft to Right(右から左に計算する)派です。つまり、大きい数のほうから計算します。
 山手学院のそろばん指導者である西岡先生のような達人なら、ただちにそろばん式暗算で正確な答えを得るでしょうが、西洋式暗算の場合、たとえば、15,280円の品物と23,120円の品物を買うとき、15,000円と23,000円を先に足して38,000円を得てから、400円を得て38,400円になります。これが、西洋式暗算Left to Right(左から右に計算する)派の足し算です。「すばやく概算を得れば、生活上も便利ではないか」というのがLeft to Right(左から右に計算する)派です。
 小学生低学年のみなさんは、もしかしたら、さくらんぼ計算に悩まされるかもしれませんが、計算の考えかた、計算のしかたは、いろいろあることを知ってください。
 そろばんは、計算の考えかた、計算のしかたとして、歴史と伝統のあるものです。
 リラックスして、たのしくそろばんに取り組みましょう。

学院長 筒井保明