Day: January 9, 2021

学院長からのメッセージ 2021 February

できるだけのことをやる! You can do it!  人は未来に生きる。人の目標が未来にある以上、人は未来に向かって生きている。  神経科学の世界では、人の認識が外界の刺激に対して必ずほんの少し遅れるので、「人は過去に生きている」と表現するけれど、それは人の認識を現在として考えるからだ。たとえば、君の近くで爆発が起きたとする。閃光と爆音が起きた瞬間に対して、ほんの少し遅れて人は反応するので、君が爆発に驚いたとき、爆発はすでに過去になっている。  でも、これは、わたしたちの認識の問題であって、わたしたちの生き方ではない。  君が学習するのは、100%、未来のためであって、過去のためではないだろう。「2週間後のテストでしっかり得点したい」という近い未来があるから、「1年後に志望校に合格したい」という少し遠い未来があるから、「大学を卒業したら、エンジニアになりたい」というやや遠い未来があるから、必要なことに取り組める。学習にかぎらず、「見たい」「聞きたい」「食べたい」「プレイしたい」など、その対象はすべて未来の時間に属している。いいかえれば、すべての目標は未来に存在している。  受験生にとっては、近い未来に「入学試験」がある。そして、合格したいから、君は学習している。目標を達成するために、君は、毎日、できるだけのことをやろうとしている。どのくらい学習したらいいのだろうか? ここまでくると、できるだけのことをやるだけだ。  できるだけのことをやることは、未来の君につながる大事な経験になる。その結果がどのようなものであっても、それは、君にとって、一つの通過点だ。重要なのは、君が目標に向かって、「一生懸命に取り組んだ」という事実だ。この経験で培われた力は、「生きる力」そのものである。君の人生はまだまだ続く。君に将来の目標があるかぎり、この力は君を大きく前進させていくだろう。  ところで、入学試験は、スポーツの試合や芸術のコンテストとおなじで、人の心身のコンディションによって結果が大きく左右される。体調不良や極度の緊張やアクシデントによって、実力が発揮されないことも少なくない。だから、模擬試験などの成績と実際の入試結果はかなりくいちがう。模試では合格の可能性が安全圏や合格圏であったにもかかわらず極度の緊張で失敗してしまったり、逆に模試では努力圏や再検討であったにもかかわらず開き直って高得点で合格したり、教師の予想と大きく異なることも多い。試験当日のコンディションの影響は、ものすごく大きいのだ。  まず体調管理に関しては、生活習慣を正すことが必要である。早寝早起きが基本。そして、学校生活を送っている以上、夜12時前に就寝する。睡眠を誘発するメラトニンの分泌を妨げるテレビやスマートフォンやパソコンなども控える。朝、起きられなくなるのは、夜更かしやゲームなどによって、成長ホルモンが出なくなることが原因である。健康にとって(学習にとっても)、熟睡することがもっとも重要だ。  つぎに緊張に対する対策は、もし不安であったら、先に何度か試験会場に足を運んでおくといい。試験当日は、開門時間に合わせて、早めに試験会場に行き、その場の雰囲気になじんで緊張を解いておく。試験前にリラックスして、試験に臨む。そうすれば、試験中は適度な緊張状態(集中状態)になるので、実力を発揮できるだろう。一つ試験が終わるたびに、次に備えて、リラックスする。試験に集中する。公立高校の場合、リラックス→集中を5回、くりかえす。  アクシデントというのは、たとえば、試験中に、極度の緊張から倒れる生徒がいたりする。そういうときには、手を上げて試験会場の先生に知らせて、君はすぐに試験にもどろう。  できるだけのことをやっていれば、君は、試験だけでは終わらない、ほんとうの力を手に入れているだろう。 山手学院 学院長 筒井 保明

プログラミング通信 | 2021年2月号

未来のソフトウエア・エンジニアたち  たのしくプログラミングに取り組んでいますか?  たのしく取り組めているなら、まちがいなく君たちのスキルはどんどんと進歩していきます。  さて、プログラミングの世界では、プログラムを専門とする人を「プログラマー」、プロジェクトを統括する人を「エンジニア」と呼びます。エンジニアは、プログラムができますので、プログラマーとエンジニアのちがいは、一つのプロジェクトに対する立場のちがいです。  たとえば、大工さんの世界では、床や柱や壁や屋根など、部分的なことに取り組む大工さんを「職人」と呼び、全体を統括する大工さんを「棟梁」と呼びます。棟梁は、大工仕事ができますから、やはり立場による呼び方のちがいですね。  エンジニアengineerというアメリカ英語の単語は、「技術者」「技師」と訳されていましたが、最近では、そのまま「エンジニア」と呼ぶことが多くなっています。  おおもとのエンジニアリングengineeringは「工学」ですから、「工」の字が表すように、「ものをつくる」学問です。かつては、エンジニアというと、機械を設計したり、電子機器を開発したり、わたしたちに役立つ便利なものをつくるイメージでした。  ところが、現在では、自動車や電気製品をはじめとして、あらゆる機械にソフトウエアが入り込んでいますから、エンジニアというと、ソフトウエア・エンジニアが思い浮かびます。  ただし、機関車トーマス(トーマス・ザ・タンク・エンジンThomas the Tank Engine)を運転する人もエンジニア(機関士)と呼ばれますので、おぼえておくといいでしょう。  君たちはいま小学生ですから、将来、ザ・テック(the tech)と呼ばれるソフトウエア・エンジニアを目指すようになるかもしれません。なぜなら、IT(インフォメーション・テクノロジー)やICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)やAI(アーティフィシャル・インテリジェンス)が発展すればするほど、ソフトウエア・エンジニアがたくさん必要になるからです。すでに、世界中で、優秀なエンジニアは引っ張りだこになっています。  なぜプログラミング学習が、日本の小学生・中学生の学習として必修となるのでしょうか。  なぜなら、これからの社会のなかで、エンジニアだけでなく、プログラミング的な思考が要求される仕事がどんどん増えてくるからです。  残念なことに、現在の日本のIT教育は遅れています。ITの世界で活躍しているアジア人はとても多いのですが、インド人や中国人が大半です。  日本国内は、日本語の壁で、まだ日本人エンジニアが優位ですが、いつまでも続くとは限りません。だから、君たちの活躍が待たれているのです。  スクラッチやキュレオなどが、子どもたちにふさわしい学習であるのは、試行錯誤しながら「組み立てる」作業であるからです。  日本は「ものをつくる」技術立国であったのですが、遅れをとってしまいました。未来の日本の技術は、君たちの学習にかかっています。 学院長 筒井 保明 ことばの説明 IT=情報技術(Information Technology) ITとは、私たちの身近にあるさまざまなものを、コンピュータとネットワークでより安全で便利に変えていくことです。パソコンや、スマートフォンなどの機械が相当します。 ICT=情報通信技術(Information Communication Technology) ICTとは、ITの使い方そのものを指します。メール、チャット、SNSなど、人が関わってくるものが相当します。コミュニケーションが発生するからCommunicationのCが入っているのです。 AI=人工知能(Artificial Intelligence) AIとは、人と同じように考える知的なコンピューターのことです。現在AI技術は、翻訳、自動運転、気象予報、囲碁・将棋など様々な分野で活用されています。

そろばん通信|2021年2月号

五玉の発明  前回、小学生低学年のみなさんを悩ませる「さくらんぼ計算」は、さまざまに考えられる計算の仕方のひとつだということを話しました。  基本として、数をドッツ(dot・dots)としてとらえられるなら、かんたんだよ、ともいいました。  数をドッツとしてとらえるというのは、  1は、●というドット。  2は、●●というドッツ。(英語は複数形になるとdotにsがついてdotsになります)  おなじように、  3は、●●●  4は、●●●●  5は、●●●●●  6は、●●●●●●  7は、●●●●●●●  8は、●●●●●●●●  9は、●●●●●●●●●  10は、●●●●●●●●●●  11は、●●●●●●●●●●+●  12は、●●●●●●●●●●+●●  数字が大きくなるにつれ、●がどんどん増えていきます。もともとの数字のもとは、●に象徴されるなにかの物体です。●があらわすものは、🍎かもしれないし、🍊かもしれないし、🐶かもしれないし、🌳もしれません。1000という数字をあらわすのに、数字がなかったら、●を1000個、書かなければなりませんね。数字や算数は、計算の便利のために生まれたものです。  さくらんぼ計算というのは、8+7の場合、●●●●●●●●+●●●●●●●ということであり、ひとつずつ数えるのがめんどうなので、一けた、くりあがる10(●●●●●●●●●●)をつくって、のこりの5(●●●●●)を足し、15という答えを出すやり方です。さくらんぼ計算では、8(●●●●●●●●)+7(●●●●●●●)を8(●●●●●●●●)+2(●●)+5(●●●●●)=10+5=15と考えるので、なんだかめんどうに感じるのです。  でも、このやり方は、そろばんに似ていませんか?  もし、そろばんに五玉がなくて、一玉が9個だったら、さくらんぼ計算とおなじような考えかたをするのではないでしょうか。  でも、五玉がないそろばんは、幅が大きくなりますから持ち運びにも不便ですし、指を動かす回数もずいぶん増えてしまいます。  そこで、知恵のある誰かが、五玉を発明したわけです。  こんど、そろばんの練習をするとき、もし五玉がなかったら、と考えてみてください。五玉を考えた人は偉いなあ、と思うのではないでしょうか。  十進法を使用するわたしたちにとっては、現在のそろばんはとても効率的な形になっています。梁の上側に1つの五玉、梁の下側に4つの一玉という形です。  ところで、わたしが持っているそろばんは、梁の上側に2つの玉、梁の下側に5つの玉になっているものです。中国の尺貫法では1斤が16両と定められているので、16進法の計算ができるためだそうです。  また、コンピューターに使われる2進法の計算をするために、五玉だけの算盤もあるようです。  とてもおもしろいですね。 学院長 筒井保明