未来のソフトウエア・エンジニアたち

 たのしくプログラミングに取り組んでいますか?
 たのしく取り組めているなら、まちがいなく君たちのスキルはどんどんと進歩していきます。
 さて、プログラミングの世界では、プログラムを専門とする人を「プログラマー」、プロジェクトを統括する人を「エンジニア」と呼びます。エンジニアは、プログラムができますので、プログラマーとエンジニアのちがいは、一つのプロジェクトに対する立場のちがいです。
 たとえば、大工さんの世界では、床や柱や壁や屋根など、部分的なことに取り組む大工さんを「職人」と呼び、全体を統括する大工さんを「棟梁」と呼びます。棟梁は、大工仕事ができますから、やはり立場による呼び方のちがいですね。
 エンジニアengineerというアメリカ英語の単語は、「技術者」「技師」と訳されていましたが、最近では、そのまま「エンジニア」と呼ぶことが多くなっています。
 おおもとのエンジニアリングengineeringは「工学」ですから、「工」の字が表すように、「ものをつくる」学問です。かつては、エンジニアというと、機械を設計したり、電子機器を開発したり、わたしたちに役立つ便利なものをつくるイメージでした。
 ところが、現在では、自動車や電気製品をはじめとして、あらゆる機械にソフトウエアが入り込んでいますから、エンジニアというと、ソフトウエア・エンジニアが思い浮かびます。
 ただし、機関車トーマス(トーマス・ザ・タンク・エンジンThomas the Tank Engine)を運転する人もエンジニア(機関士)と呼ばれますので、おぼえておくといいでしょう。
 君たちはいま小学生ですから、将来、ザ・テック(the tech)と呼ばれるソフトウエア・エンジニアを目指すようになるかもしれません。なぜなら、IT(インフォメーション・テクノロジー)やICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)やAI(アーティフィシャル・インテリジェンス)が発展すればするほど、ソフトウエア・エンジニアがたくさん必要になるからです。すでに、世界中で、優秀なエンジニアは引っ張りだこになっています。
 なぜプログラミング学習が、日本の小学生・中学生の学習として必修となるのでしょうか。
 なぜなら、これからの社会のなかで、エンジニアだけでなく、プログラミング的な思考が要求される仕事がどんどん増えてくるからです。
 残念なことに、現在の日本のIT教育は遅れています。ITの世界で活躍しているアジア人はとても多いのですが、インド人や中国人が大半です。
 日本国内は、日本語の壁で、まだ日本人エンジニアが優位ですが、いつまでも続くとは限りません。だから、君たちの活躍が待たれているのです。
 スクラッチやキュレオなどが、子どもたちにふさわしい学習であるのは、試行錯誤しながら「組み立てる」作業であるからです。
 日本は「ものをつくる」技術立国であったのですが、遅れをとってしまいました。未来の日本の技術は、君たちの学習にかかっています。

学院長 筒井 保明

ことばの説明

IT=情報技術(Information Technology)
ITとは、私たちの身近にあるさまざまなものを、コンピュータとネットワークでより安全で便利に変えていくことです。パソコンや、スマートフォンなどの機械が相当します。

ICT=情報通信技術(Information Communication Technology)
ICTとは、ITの使い方そのものを指します。メール、チャット、SNSなど、人が関わってくるものが相当します。コミュニケーションが発生するからCommunicationのCが入っているのです。

AI=人工知能(Artificial Intelligence)
AIとは、人と同じように考える知的なコンピューターのことです。現在AI技術は、翻訳、自動運転、気象予報、囲碁・将棋など様々な分野で活用されています。