つくることをとおして学ぶ!

Learning through making.

 プロジェクトという言葉が、プログラミング教育にともなって、頻繁に使われるようになっている。
 文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」では、プログラミング的思考をつちかうことを教育目標として挙げ、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」をプログラミング的思考と呼んでいる。
 そもそもプロジェクトがなければ、プログラミングは始まらない。文部科学省のいう「自分が意図する一連の活動」がプロジェクトであり、そのプロジェクトを実現することがプログラミングなのだ。
 ところで、なぜ、「計画」という日本語に直さずに、プロジェクトと英語のまま使うのだろうか?
 プロジェクト(project)という言葉は、仕事(job)、課題(task)、働き(work)、活動(activity)、計画(plan)、意図(intention)、ねらい(aim)、目的(objective)、目標(goal)などの言葉を内包しているので、ぴったりと合うような日本語がない。だから、プロジェクトとそのまま使うのかもしれない。
 あるいは、プロジェクトのことを「つくることの基本単位」the basic units of makingと呼ぶ専門家もいるので、「つくる」という含意から、プロジェクトという言葉を使うのだろう。
 スクラッチ・プログラミングでは、自分がつくりあげようとしているプログラムのことをプロジェクトと呼ぶ。小学校や中学校で行われるプログラミング教育も、基本は「自分でつくる」である。自分でつくらなければ、多くを学ぶことはできない。「ともかく、自分でつくってみることだ」というのがプログラミング教育の精神だろう。
 かつて、アメリカの哲学者ジョン・デューイが「行うことによって学ぶ」Learning by doingということを主張し、19世紀から20世紀にかけて教育の世界に大きな影響を与えた。
 それに対して、スクラッチの開発者であるミッチェル・レズニックは、「なにかをする、だけでは足りない。君はなにかをつくる必要がある。つくる人の倫理にしたがえば、もっとも価値のある学習経験が得られる。なにかをデザインすること、なにかを築き上げること、なにかを創造すること…君はつくることをとおして学ぶ(learning through making)のだ」と主張する。
 2022年からは「情報」科目が必修となり、すべての高校生がプログラミングを学ぶ。大学入試センターも入試のサンプル問題を公表した。
 これから小学校や中学校でのプログラミング教育も本格的になっていくだろう。
 プログラミング教育にかぎらず、すべての学習にとって、「自分でやってみる。自分でつくってみる」はもっとも効果的な学習方法だ。
 さあ、自分を信じて、取り組もう!

山手学院 学院長 筒井 保明