ともかく、いろいろ試してみよう!

 MITのレズニック博士の「プログラミングを学ぶ人たちへの10のヒント」の三つめは、

③どうしたらいいのか、手がかりがないなら、ともかく、いろいろ試してみよう!
(If you have no clue what to do, fiddle around.)

 この三つ目のアドバイスは、プログラミングにかぎらず、発明や発見、研究や学問にとっても、とても重要です。どうしていいのか、わからないとき、いきなり誰かに尋ねるのではなく、自分でいろいろ試してみろ、ということです。
 Fiddle around(about)という英語は、人に対して使う場合、いじめっ子が誰かをいじめている感じの言葉です。日本語では「もてあそぶ」に近いでしょう。
 しかし、プログラミングの相手はコンピューターですから、「いじくりまわす」「いろいろ試してみる」となります。
「新しいプロジェクトをスタートするとき、不安を感じるだろう。一枚の白い紙を見つめているような感じだ。なにが書きたいのかもわからない。でも、心配するな。ゴールがなくても、プランがなくても、OKだ。いろいろやっているうちに、とてもいいアイデアが浮かんでくる。新しい方法で君のツールや材料を試してみる。ふつうの材料をふつうじゃない使い方をしてみる。ふつうじゃない材料をふつうに使ってみる。材料を使って、ばかげたような、気まぐれなようなことをやってみる。なにかが君の注意をとらえたとき、それをしっかりと見つめて、探求してみるんだ。好奇心を君のガイドにしよう。好奇心にしたがっていけば、君は、最後に、新しいゴールやプランにぶつかる。そして、新しい情熱を発見するだろう」
 このレズニック博士のアドバイスは、優秀な研究者やエンジニアやプログラマーの多くが、必然的に経験することです。
 研究者やエンジニアやプログラマーが、なぜ研究やプログラミングを続けられるのかというと、試行錯誤(trial and error)がおもしろいからです。いろいろ試してみるかぎり、失敗は必ずありますから、失敗でくじけているようなら、すぐれた研究者やエンジニアやプログラマーにはなれません。
 発明王のトーマス・エジソンは、白熱電球を発明したとき、何千回と実験をくりかえしました。
 白熱電球のなかには、高温になると光るフィラメントが入っています。(ご家庭にありましたら、ぜひ見てください)当初のフィラメントは炭化した紙であり、短時間で燃えてしまいました。
 そこで、実用化のためにエジソンは、実験をくりかえします。
 さまざまな素材を試す過程で、中国の竹に出会い、さらに世界中の竹を集めて、日本の京都の竹に出会いました。石清水八幡宮の竹でつくったフィラメントは、1,200時間、光り続け、白熱電球の実用化が実現します。その後、エジソンは、他のさまざまな素材でフィラメントをつくり、さらに実験を続けます。エジソンは、自分で納得できるまで、どこまでも実験(試行錯誤)を続ける人でした。
 プログラミングにもおなじことがいえます。いちど、だれかがつくりあげたとしても、プログラミングにエンドはないでしょう。たとえば、マイクロソフトのOSは、MS-DOSから最新のWINDOWS 11まで、ずっと続いています。WINDOWSのOSだって、「ともかく、いろいろ試してみた結果」です。
 ぜひ、みなさんも、いろいろ試してみてください。

山手学院 学院長 筒井 保明

Lifelong Kindergarten (Mitchel Resnick) The MIT Pressから引用・訳