君が受験生になるとき

When you will be a candidate for the entrance exam

 ひとは、いつ、受験生になるのだろうか?
 受験勉強の真っ最中にいる小学生、中学生、高校生、浪人生であっても、ちょっと立ち止まって考えてみる必要がある。
 どうして自分は受験生なのだろうか?
 もし君が入学試験を必要としない状態で自分の道を進むことができるなら、君は受験生になることはない。行きたい学校がなく、受験する学校もない中学3年生や高校3年生は、中学校や高校の最終学年であるとしても、受験生ではないだろう。つまり、小学校や中学校や高校の学年自体は、受験生とは関わりない。
 では、受験生って、なんだろう?
 文字どおりでいえば、「入学試験を受ける生徒」のことにちがいない。そうであるとすれば、中学でも、高校でも、大学でも、行きたい学校の入学試験を受ける意志を持っている生徒は、すべて受験生ということになる。やはり、ここでも学年自体は関わりがない。最終学年になると、受験準備の時間が限られてくるというだけで、どの学年であっても、行きたい学校があって、入学試験を受ける意志を持っている生徒は、すべて受験生なのだ。
 中学3年や高校3年を受験学年と呼ぶのは、「もう時間がないぞ」ということでしかない。
 そう考えれば、現在、小学何年生であっても、中学何年生であっても、高校何年生であっても、行きたい学校があって、入学試験を受ける意志があるなら、君はすでに受験生なのだ。
 おもしろいことに、グーグルのブラウザで日本語の「受験生」に該当する外国語を検索すると、
 英語 Candidates 候補者たち(そもそも「試験の参加者」A participant in an examinationという内容を持つ)
 フランス語 Candidats 候補者たち(同上)
 ドイツ語 Kandidaten 候補者たち(同上)
 ロシア語 Кандидаты 候補者たち(同上)
 中国語 候选人(本来であれば、考査に応じる、試験に応じる、という意味で、应考者、应试者という中国語のほうが「受験生」に近い)
 などと出る。
 なるほど、受験生は、抽象度を高くして考えれば、「候補者」にちがいない。事実として、埼玉県公立高校の合格者は、「入学許可候補者」である。埼玉県公立高校の入学者選抜の受検者たち(埼玉県公立高校の場合、学力検査問題を受けるので受検)は、各高校の入学者になるために立候補した生徒たちなのだ。
 普通選挙に立候補した大人たちは、有権者たちの定期考査(試験)を受け、選挙に当選(合格)したり、落選(不合格)したりすることになる。
 君たちの場合、志望校の試験を受け、合格したり、涙をのんだりすることになる。
 どちらにも共通するのは、「自分の意志」で名乗りを上げる、ということだ。早くから意志を固める人もいれば、直前になって意志を持つ人もいるだろう。
 成功法則の鉄則からいえば、できるだけ早くから意志を固めることが望まれる。
 難関大学に合格者をたくさん出す公立高校や私立高校の先生たちと話していると、
「高校1年生のときに、行きたい大学がある生徒が強い」と強調されることが多い。「現役で難関大学に行きたいなら、できるだけ早く行きたい大学を持つことだ」ともいわれる。
 これは、わたしたちの指導上でもはっきりいえることで、「志望校を持つから受験生」であり、「志望校があるから一生懸命に取り組める」のだ。
 さあ、小学何年生であっても、中学何年生であっても、自分の志望校を考えてみよう。
 本気で行きたい学校があるなら、君はすでに受験生である。

山手学院 学院長 筒井 保明