感情を止めて、自分を観る
Restrain Your Emotions and See Yourself.

まず現在の自分のことを考えずに、未来の自分のことを考えてみよう。「明日の自分」のような、近い未来でもいいし、「二年後の自分」「十年後の自分」のような、遠い未来でもいい。そのとき、「自分はどうなっていたいか」と考えてみると、自分のやるべきことが見えてくる。
明日、仕上げた課題を提出して、先生に感心される自分になりたいなら、君はさっそく目の前の課題に取りかかるだろう。二年後、志望校に合格している自分になりたいなら、君はただちに学習に取り組むだろう。
いま、意識した自分がすぐに行動を起こせば、未来の自分(目的、目標)が実現する可能性がグンと高まる。君が目的や目標に向かう行動をすぐに起こすか、どうか。未来の自分は、この決断にかかっている。
少し先、また、かなり先の未来の自分を考えてみる習慣は、君の人生を大きく変化させるだろう。なぜなら、ひとは、思い描いた目的や目標に向かって、行動するからだ。逆に、目の前のことばかりに気持ちをとらわれていると、ひとは目的や目標を失ってしまうかもしれない。
もし、いま、目の前にゲームがあって、すぐにゲームを始めると、提出する課題は後回しになるだろう。また、友だちに誘われて遊んでしまうと、その日の学習はおざなりになるだろう。
そういっても、だれでも、目の前の誘惑には弱い。だれでも、のどが乾いたら水が飲みたい。お腹がすいたら食べ物がほしい。危ない車が近づいたら逃げたい。だから、楽しいことが目の前にあれば、大切なことを忘れて、飛びついてしまうのは、やむを得ないことかもしれない。
でも、そのとき、君が「こうなっていたい自分」(未来の自分)に気がつけば、誘惑に打ち勝って、君は課題に取りかかるだろうし、学習に取り組むだろう。
課題や学習を前にしたとき、もし「ゲームがしたい。遊びに行きたい。さぼりたい」など、誘惑の感情が起きたら、いちど、自分の感情を止めて、自分を観てみると、いま、やるべきことがはっきりするはずだ。
課題はどうする? 学習はどうする? 自分の問題を意識して、自分に問いかけてみる。すると、自然に答えが見えてくる。
仏教の「止観」という方法であるけれど、僧侶でも感情(煩悩)の制御はむずかしい。したがって、心が目的以外のことに誘惑されそうなときは、ともかく、いちど、感情を止めて、自分を観る。
君たちの場合、ゲーム、スマホ、テレビ、遊びなどに手を出す前に、いちど、その気持ちを抑えて、未来の自分を考えてみよう。いまの自分は、ゲーム、スマホ、テレビ、遊びなどの誘惑に負けそうだとしても、未来の自分は負けない。なぜなら、未来の自分は課題を仕上げることや学習に取り組むことを強く望んでいるからだ。
目的や目標を達成するのは、未来の自分にほかならない。
山手学院 学院長 筒井 保明