目標と希望とねばり強さ

Goal, Hope, and Tenacity

 目標の達成に必要なのは、「ねばり強さ」である。そして、「ねばり強さ」の根源は、「希望」である。だから、自分の目標を決めたら、まず強い希望を持って、ねばり強く取り組んでいくことだ。そうすれば、君はきっと目標を達成できるだろう。 
「粘り強さ」と聞くと、わたしは、ドイツの詩人、科学者、政治家であったゲーテ(1749-1832)を思い浮かべる。わたしの場合、森鴎外の影響であるけれど、「聖書」の次に重要だといわれた『ファウスト』という作品を例に説明してみよう。
 ゲーテ自身の手紙に「20歳のとき、思いついたものを、80歳になって完成させ、発表するのだから、容易なことではない」と書かれている。つまり、『ファウスト』を完成するまでに、60年、かかっている。
 森鴎外の『ファウスト考』から引用すると、「ゲーテは満82歳になるまでに、第2二部が脱稿するようにと心掛けた。そして、とうとうその希望を遂げた。(中略)第二部を書くようになってからは、毎日、朝早く、眠りの後に、気分が爽やかに、強くなっていて、まだ日常生活の醜い姿が心を乱さないうちでなくては、出来ない。それも原稿一ページが、珍しく出来の好い時で、ふだんは手の平でおおわれるほどの行数しか書けない。それよりも少ない時もある」
 手の平でおおえる行数は、ノート1ページの三分の一程度。そして、それより少ないときもあったのだから、どれほどの「ねばり強さ」が必要であったか、想像できるだろう。
 ゲーテは、歴史上、最高の勉強家の一人であった。主人公のファウスト博士には、ゲーテ自身が投影されている。ゲーテ以前のファウスト博士と悪魔メフィストフェレスの契約は「なんでも自由にできる期間を与えよう。ただし、期限が来たら、おまえの魂は悪魔のものだ」であったけれども、ゲーテのファウストとメフィストフェレスの契約は、「向上の知識欲を捨てて、受容(学習)に満足したとき、つまり、みずから向上心を捨てたとき、おまえの魂は悪魔の手に落ちる」というものだった。このとき、契約は試験になった。ファウストは、学び続けることによって、この試験に合格しようと努力した。
 たしかに、ファウストがいうように、「人は努力するあいだ、迷うに決まったもの」である。けれども、学び続けるかぎり、ファウストは、悪魔の試験に負けない。
 ファウストは、高い努力を続けた。そして、彼は亡くなる間際、一瞬、受容(学習)に満足を感じた。そのとき、悪魔は「勝った」と思ったけれど、神の使いの童子は、ファウストの魂に向かって、「あなたは学びました。つぎは、わたしたちに教えてくれますね」といった。目標を達成したのは、悪魔ではなく、ファウストだった。
 靄や霧の道(先が見えない道)を進みながら、ゲーテも、ファウストも、けっして希望を捨てなかった。
 君の目標が本気のものならば、必ず希望が生まれる。自分の希望を大切にして、どんなことにも、ねばり強く取り組んでいこう。
 「目標」「希望」「ねばり強さ」が君の未来を開くのだ。

山手学院 学院長 筒井 保明

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