学院長からのメッセージ 2017 May

君は君のことをやる! You do your thing !  人と人との関係を「縁」という。「因縁果」(原因・縁起・結果)の「縁」であり、縁がなければ因も果もない。お釈迦様の悟りは、この「因縁果」を「空」と達観したことである。  「袖振り合うも多生の縁」という。私たちの悩みや苦しみの多くは、この多生の縁によって生まれる。  まず親子から始まり、兄弟や姉妹、友だち、学校生活や社会生活の中で出会う多くの人たち…  人は、基本的に人間関係で悩む。  悩みのもとは「縁」だ。だから、「縁」を制御できれば、悩みは消えるだろう。すくなくとも、悩みが薄くなるはずである。  では、悩みの「縁」とはなんだろうか? 人の「心」である。「なぜこうした状況が起こったのか」を解釈する人の考え方・受け止め方(ビリーフ、文章記述)が悩みをつくる。  仮に、目の前に、宿題を忘れた生徒たちに対して、猛り狂っている先生がいるとする。  ある生徒は涙を浮かべてうなだれている。ある生徒はうろたえて不安におびえている。ある生徒は反発してにらんでいる。ある生徒はあらぬ方向を見ている。ある生徒は冷静に叱責を聞いている。  かれらの反応の違いは、「できごとに対する考え方・受け止め方」(ビリーフ)の違いなのだ。  心理学者のアルバート・エリス博士は、この過程をABCモデルとして、 A 出来したできごと(Activating Event)あるいは、逆境(Adversity) B 考え方・受け止め方(Belief) ある状況に立ち至った理由に対する説明のつけ方 C 結果(Consequence)「考え方・受け止め方」が引き起こした感情や行動  とした。(仏教では、A原因、B縁起、C結果となる)そして、B「考え方・受け止め方」を書き換えることによって、ストレスや逆境 に対応しようというのが、エリス博士の心理療法である。  上記の例でいえば、「生徒たちが宿題を忘れたことによって、先生が猛り狂っている」という事実(A)→「先生が猛り狂っているのは大人げないが、宿題を忘れた私たちの将来を案じるあまりであろうから、非は私たちにある」という考え方・受け止め方(B)→「先生が落ち着くのを待って、先生に謝る」という結果(C)、のようなA→B→Cが望ましいところであろうか。  以上のように、何が起きた(A)としても、君は自分の考え方・受け止め方(B)を選択することができる。その選択によって、君の対応や解決法(C)が決まる。  くよくよと悩むということは、(B)の考え方・受け止め方に問題があるのだ。悩むのではなく、君の考え方・受け止め方をチェックして書き換えれば、悩みは消えていくだろう。  心理学者のフレドリック・パールは、人間関係について、つぎのようにいう。 私は私のことをやる。君は君のことをやる。I do my thing and you do your thing 私は、君の期待に応えるために存在するわけじゃない。I am not in this world to live up to your expectations 君は、私の期待に応えるために存在するわけじゃない。and you are not in this world to […]

学院長からのメッセージ 2017 April

自分に確信を持つこと! Affirm Yourself !  西洋の人の思考の根底に、イエス・キリストの言葉が生きている。西洋の人の言動に接していると、ときどき、その事実に気づいて、驚くことがある。  ひとが、イエス様、お釈迦様というとき、イエスその人、シッダールタその人を指すが、キリストやブッダと呼ぶときには、その人があらわした現象や思考や影響などを含めた全体を指すことになる。だから、イエスの生涯やシッダールタの生涯はあっても、キリストやブッダの生涯はない。キリストやブッダは「永遠」であり「常在」である。  さて、なぜ、こんな話を始めたのかというと、イエスのように確信をもって君たちに「学習の心得」「受験の心得」を説きたいからだ。  いうまでもなく、入学試験には、「合格」もあれば、「不合格」もある。くやしいのは、「不合格」にきまっているが、不合格の理由が学力不足であるなら反省して再起すればよい。ところが、多くの場合、不合格の理由が「心理」であるから、悔やまれてしまう。  試験会場で、入試問題に向かったとき、「できる」と確信したなら、君は自分の力をじゅうぶんに発揮できる。いっぽう、「できないかも…」と不安になったなら、君は自分の力を出すことができない。  これは、「ホームでリラックスした状態で試合に臨める」サッカー選手と「アウェイで緊張した状態で試合に臨まなければならない」サッカー選手の違いでもある。応援される選手は、脳が十全に機能するから、心身ともに活発に動く。ブーイングされる選手は、脳が機能しなくなるから、心身ともにこわばってしまう。  試験会場で、「できる」と確信した君の脳は、よく働く。「できないかも…」と不安になった君の脳は、残念なことに、停止してしまう。そして、この「不安」が、不合格の原因になる。  「不安」は、学習や受験の役には、まったく立たない。「不安」は、妨げでさえある。そういっても、現実を直視すれば、だれだって不安になるし、疑いを持つ。現実に目をつぶって「だいじょうぶ」と信じても、それはごまかしているだけだ。あくまで、現実を見て、自分の目標を考えて、「だいじょうぶ」と自分の中で確信を持つことが必要である。  では、どうすればいいだろうか。ふだんから、学習に取り組む前に、自分に対して「君はできる。だいじょうぶ」と太鼓判を押してから、学習を始めるようにする。テストの前に、自分に対して「君はできる。全力でやるだけだ」と確認してから、問題を解き始めるようにする。これをくりかえして習慣化してしまえば、入学試験のときにも、自然と「君はできる。全力でやるだけだ」と自分に気合を入れることができる。「確信」を持つと、人は、本当に強くなる。  イエスが人々の不安や疑いを強く戒めたのは、盲信させるためではなく、確信させるためだった。「確信」が、イエスの方法である。  マルコによる福音書のなかで、イエスは、 「よく聞いておくがよい。だれでもこの山に、動き出して、海の中にはいれと言い、その言ったことは必ず成ると、心に疑わないで信じるなら、そのとおりに成るであろう。そこで、あなたがたに言うが、なんでも祈り求めることは、すでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう」といった。イエスは、世界最高のコーチの一人だ。  「必ず成る」と信じて、学習に取り組むこと。これが、第一の学習の心得である。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2017 March

新しい学年の第一歩 The first step in the new grade  君は、自分の未来をプラスと見ているだろうか、マイナスと見ているだろうか?  まさか、小学生や中学生の君が、自分の未来をマイナスと見ているはずはないだろうから、君の未来は、いうまでもなく、プラスだ。つまり、未来の君は、現在の君よりも、さらにすばらしい。  では、自分の未来に、君は、なにをプラスするのか?  もし、すぐに答えられないとしたら、君は、まだ自分の目標を明確にしていないのかもしれない。  たとえば、君が公立U高校に進みたいという目標をもっているとすれば、まずプラスするべきものは、通知表の評価ということになるだろう。小学生なら、通知表の全教科の各項目をできるだけ多く「よくできる」にすることであるし、中学生なら、通知表評定を9教科合計40以上にすることだ。(小学生の「よくできる」は、中学生のAや◎の評価に相当する。全項目「よくできる」であれば、その教科の評定は5段階評価の5となる)  そして、入試当日までに、U高校に合格するための学力、つまり、U高校が求める以上の学力をつくっていくことになる。  君の目標は、君がやるべきことを示してくれるのだ。  中学受験・高校受験・大学受験であっても、英語検定・漢字検定・数学検定であっても、さらに、さまざまな資格試験であっても、目標や期限がはっきりしていれば、具体的にやるべきことは、すぐに決まる。  しかし、もっと未来の、もっと大きな目標となると、最初はおぼろげな方向性だけで、具体性はないだろう。それでも、そのおぼろげな方向性に沿って前進していけば、次第にやるべきことが具体的になってくる。そして、やるべきことが具体的にわかったとき、じつは、君は目標達成に近づいているのだ。(なぜなら、君がそれを実行するなら、目標は達成されるだろうから)  新しい学年の第一歩は、君の未来への第一歩でもある。そう考えれば、1学期の学習をおろそかにすることはできないだろう。なにをするにしても、最初が肝心なのだ。  まず、君は、すべての教科をとことん学ぼう!  学問は、本来、一つといえるのだけれど、研究や探究のためにさまざまな分野に分化されてきた。逆に見れば、どの分野も、どの教科も、学ぶ人によって統合的にとらえなおすことができる。  中学校で主要5教科と呼ばれる国語、数学、理科、社会、英語、そして、副教科と呼ばれる音楽、技術家庭、保健体育、美術。どれも重要だけれど、すべての学習の前提として、国語と体育にしっかりと取り組みたい。言語と非言語をそれぞれ代表するからだ。脳は、言語能力と身体能力を培うことによって、その力をじゅうぶんに発揮できるようになる。  学習というと、どうしても言語に偏ってしまいがちだが、じつは、非言語の能力が学習の根幹に必要なのだ。人のほんとうの賢さは、体育、音楽、技術家庭、美術など、副教科の学習によって鍛えられる。入学試験に代表されるペーパーテストにこだわり過ぎて、副教科をおろそかにすることは、君の能力を鍛えるチャンスを失うことを意味するだろう。  1学期のあいだ、すべての教科に積極的に取り組んでみてほしい。そうすれば、すべての教科に相乗効果が生じて、学力がグンと伸びることを実感できるはずだ。  さあ、君の未来に向かって、新しい学年の第一歩を踏み出そう。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2017 February

学習方法を身につけよう! Learn How to Learn!  1960年代、グレン・ドーマンは、脳に傷を負った子どもたちに学習を指導しながら、幼児や子どもたちへの学習方法を発見した。神経科学から見てもうなずけるものであり、当時としては卓見に富んでいる。  さて、赤ちゃんや幼児は、本が読めるのか?  ドーマン博士は、脳に傷を負った子どもたちが読めるようになるように、「読める」と結論づけた。それをまとめたのが、最初の著作である『赤ちゃんに読み方をどう教えるか』(How to teach your baby to read)である。「脳は自然に学習を吸収する」という基本的な考え方は、モンテッソーリ教育の立場でもあり、妥当なものだ。  まず、学習前に、親子が「ともに楽しく学びたい」という状態であることを確かめる。もし、どちらかにとって「素敵な時間」でないなら、やってはいけない。楽しく、速く、が学習のポイント。「子どもたちはじっと見つめない。見つめる必要がない。かれらは、スポンジのように吸収する」からだ。 【ステップ1】 単語(Single words)hand, mouth など、馴染みのある言葉を、大きなカードに、太い赤文字で書く。ABCではなく、単語そのものを教える。Mommyという単語を見せたら、「これはMommy」とはっきり話す。文字は1秒だけ見せてもよい。 【ステップ2】 二語の組み合わせ(Couplets)(色と物、状態と対象などの組み合わせ。blue eyes, violet grapes, big chair, little chair など。あとは単語と同じ) 【ステップ3】 二語以上の組み合わせ(Phrases)Mommy is jumping, Daddy is eating のようなフレーズをつくり、5日間、三回ずつ見せる。 【ステップ4】 一文(Sentences)Mommy is eating a yellow banana. のような文をつくる。文字を少しずつ小さくしていき、文字数を増やし、赤文字を黒文字に変えていく。 【ステップ5】 本(Books)子どもにとって興味深い本を読み聞かせる。子どもが自発的に読もうとしたら、任せる。自然な速度で読み聞かせをする。子どもが音読したがったら、音読させる。そうでないときは、黙読させる。(語彙を増やすときは、シソーラス(類語集)を使う)  これだけのことであるが、普遍文法や生成文法の考え方にも通じるし、脳の学習の手順にも従っている。  まず音声としての言語があり、その音声に対応する文字があり、単語から始めて、単文、重文、複文…と複雑な文章を認識できるようになり、さらに文で構成された全体(本)を読んで理解できるようになり、それを話したり、書いたりすることによって、言語を身につける。  言語習得の自然な手順に従えば、君が英語を学ぶとき、まず、目の前の事象に対して、どのように音声としての英語が発せられているのか、を意識する。そして、同じ事象に対して、自分の口で、同じように英語を発してみる。そして、それを繰り返しているうちに、さまざまな事象に対して、どのように英語を発すればいいのか、わかるようになり、英語が使えるようになってくる。この英語に読み書きを伴わせていくのが、本来の学習方法であろう。(君は同じようにして日本語を身につけた)  効果のある学習方法を身につけることは、とても重要なことである。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2017 January

「できる自分」を信じよう! Trust yourself. You can do it!  できないという誤った思い込みが、君をできなくさせている。  現在の状況を分析して、できない、とか、わからない、とか、よく人は言うけれど、ほとんどの場合、その一言が学習に対する強いブレーキになってしまっている。  その代表例は、アルプスの少女ハイジだ。  現代であれば、ハイジは、難読症と診断されてしまうかもしれない。少なくとも、クララの祖母が来るまでのあいだ、クララの家庭教師はそう判断していた。  クララの祖母がハイジに絵本を渡そうとすると、家庭教師は叫んだ。「絵本ですって! マダム、あの子は投げ出すだけです! 彼女は本を引き裂くでしょう。アルファベットを読むことを身につけられないのです!」 「試してみるべきでしょ!」祖母は、きっぱりと答えた。祖母がハイジに絵本を手渡すと、ハイジは絵を見て、泣き始めた。その絵がハイジに故郷を思い出させたからである。 「泣かないで、ハイジ、涙の理由はわかるわ。涙をとめて、目を拭いて。この絵のお話を知りたい? この絵のお話をしましょうか?」すすり上げながら、ハイジがうなづいたので、「よかった。泣き止んだわね。ところで、先生からなにを学んだの? あなたは読むことができるの?」  頭を振りながら、ハイジはつぶやいた。「できないの。不可能だって、知っているわ」 「不可能!」祖母はびっくりした。「なぜ、不可能なの?」 「なぜなら、できないから! それはよくわかっている。ペーターが私にそういったから! 彼は何年も努力した。そうして、できないってことがわかったの」 「まあまあ。ペーターを信頼しているのね。それはいいことよ。でも、私のことも信じて! この絵のお話を知りたいと思わない?」 「もちろんよ! 少しでも読めるなら、もちろん!」 「小さな意欲と集中があれば、じゅうぶん! 実際、読むことを身につけることは難しいことじゃない。すぐにわかるわ」  祖母はさっそく取りかかって、一語一語、示していった。  数日が過ぎて、ハイジは変わった。祖母の前で、家庭教師はうなだれて、認めた。 「この一週間のあいだに、私がかつて絶望していたこと(ハイジが読めるようになること)が起きて、奇跡がまだ続いているように思います」  ハイジの学習をストップしていたのは、ペーターの発言による思い込みのせいであった。つまり、ハイジの学習の問題は、ハイジの「心」であって、能力の問題ではなかった。  君にも、ちょっとわからなかったり、できなかったりしただけで、すぐに「不可能!」といってしまう悪い癖がついていないだろうか。できる、と思えば、できるようになるし、できない、と思い込めば、できないままだ。現状とは、あくまで現時点の状況で、いくらでも変わるものである。だから、「できない⇒できる」「わからない⇒わかる」「成績が悪い⇒成績が良い」が、君の本来の姿なのだ。  さあ、「できる自分」を信じて、積極的に学んでいこう。  ※ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』を参照しています。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2016 December

学習の本質は「楽しさ」だ。 Studying is Fun.  山手学院の塾生であったM君は、東京学芸大学で、保健体育を専修している。「どのように体育教育に取り組むべきか」が、現在の課題だという。  指導教授が、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』を教材として使っているそうで、その考察から得たM 君の結論は、「生徒たちが自発的であること、取り組みが楽しいこと、終了後に充実感があることが、体育指導には必要です」ということだ。  スポーツの指導において、いまだにスパルタ指導の奨励や体罰の擁護が存在するけれど、スポーツの本質が遊戯であることを認識すれば、叱責や恫喝、罰則や体罰が、完全に誤った行為であることがわかる。ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』Homo Ludens という著書は、日本でも評判になった。  ホモ・ルーデンスは「あそぶ人」ということで、ホイジンガは、ホモ・サピエンス(智恵のある人)やホモ・ファベル(つくる人)という定義のほかに、人類は、ホモ・ルーデンス(あそぶ人)であると主張した。  「あそび」は、日常のなかで、純粋な楽しみとして始まる。ただし、日常そのものではないから、時間的にも、空間的にも制限される。そして、複数の人があそぶとき、共通してあそぶための規則が必要になる。「あそび」は、本質的な楽しみとして始まるが、まじめにあそぶことも、真剣にあそぶことも、一生懸命にあそぶことも可能である。だから、「あそび」の対義は「まじめ」ではなく、「あそび」は「まじめ」を包摂 することができる。「あそび」から「儀式」「競技」「スポーツ」への移行のポイントは、ここにある。先に「あそび」があり、「あそび」が昇華されたものが「文化」(儀式や芸術やスポーツなど)なのだ、というのが ホイジンガの考えである。  東京学芸大学の指導教授は、おそらく、体育やスポーツの根源に戻ることによって、体育指導の在り方を根本的に考え直すことができると意図したのではないだろうか。  野球では、プレイボール(Playball)という。サッカーでは、プレイ・サッカー(Play soccer)という。  プレイ(Play)の本質は、あそびだ。あそびは、自発的なものだ。  そして、みんなであそぶために、時間的制限を設け、空間的制限を設け、規則を設ける。  みんなが承認した共通の規則があるから、競技が成立し、儀式が成立し、文化が成立する。  ホイジンガは、文化の中に「あそび」があるのではなく、文化の根源が「あそび」なのだと考える。  M 君が、体育指導において、自発性や楽しさや充実感を重視する必要があるという結論に至ったのも、M 君が指導教授やホイジンガの考えをじゅうぶんに検討したからだろう。たのもしい若者だ。  最後に、わたしの観点でいうと、「あそび」から「文化」への昇華の過程には、「学習」が不可欠である。「あそび」⇒「学習」⇒「文化」の流れがある。それこそ、自発的に、楽しく、満足するまで取り組んだ学習 の結果が「文化」であろう。  M 君がいう「体育教育には、自発性や楽しみや充実感が必要だ」とまったく同様に、どの教科にも、自発性や楽しみや充実感が必要である。学習の本質が「楽しさ」であることを知っておくことは、ホモ・ルー デンス(あそぶ人)の一員として、とても重要なことだろう。  楽しいと思って取り組むと、学習はどんどん捗るものだ。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2016 November

目標に向かって、これまでの限界を超えていこう! You Have No Limits.  冬期講習のパンフレットの表紙に、「いま、自分に何ができるのか。目標に向かって、これまでの限界を超えていこう!」という標題を掲げた。各期の講習のパンフレットの標題を考えるとき、いつも生徒たちを思い浮かべる。そして、その生徒たちの言動を思い出しながら、「こうあってほしいなあ」というイメージに合わせて、ことばを決める。今回のテーマは、「自分の限界」だ。  さて、君の限界は、だれがつくっているのだろうか。  答えをいえば、君の限界は君自身がつくっている。もちろん、君だけではなく、周りの人たちも君の限界をつくっている。「君には無理だよ」とか「もっと現実を見なさい」とか「あきらめたほうがいい」とか、とかく人は自分の思考の範囲内で判断するので、どうしても否定的なことをいう。大人は、君の可能性を制限してしまうことが多い。  でも、君は、未来に向かって成長する存在だ。現状を維持するために生きるわけではない。だから、未来にどんな大きな目標を持ってもいい。自分の目標を達成するために、「いま、自分に何ができるのか」と問いかけて、実行に移すことが必要なのだ。  もちろん、目標は、一つではない。人は、いくつもの目標を持つ。なぜなら、人は内から外に向かって生きる存在であり、自己と他者の関わりのなかでさまざまな目標が生まれるはずだからである。大きな目標もあれば、小さな目標もある。大きな目標は、細分化することができるし、小さな目標は大きく発展させることができる。  たとえば、「薬学者になりたい」という一つの目標があるとする。この目標には、「副作用のない、難病に効果のある薬を発明したい」「病気に苦しむ人を助けたい」のような、もっと大きな目標があるだろうし、逆に、薬学者になるために、「まず大学の薬学部に合格したい」「薬学部に合格実績のある高校に入学したい」「その高校に入るために、現在の成績を改善したい」という小さな目標もあるだろう。さらに、人として、「人類に貢献して、人格を高めたい」「最大限の努力をして、人生を充実させたい」のような抽象的な目標もあるだろう。  ものすごく抽象的にいえば、君自身が目標そのものなのだ。だから、小さな目標であっても、大きな目標であっても、君が目標を達成するために行うことのすべてが、君自身の存在である。  「人は、自分が考えたとおりの人物になる」という格言がある。これは、「君は、君の目標どおりの人物になる」と言い換えてもいいだろう。  なにも考えなければ、君は、いまの時点に停止することになる。  なにか目標を持てば、君は、いまの時点から動くことになる。  限界とは、そこで停止することである。そこで停止しなければ、限界はない。  しっかり自分の目標を考えてみよう。君が本気で達成したいなら、君は、目標に向かって動き出すことができる。  これまでの限界は、たんなる停止線にすぎない。  さあ、目標に向かって、これまでの限界を超えていこう。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2016 October

君のエネルギーは無限である。 Your Energy is Limitless.  エネルギーとはなにか。  定義をすると、「働きを成しうる能力」のことである。  エネルギーの分類は、力学的エネルギー、熱、光、化学、電気、原子核などになるが、いずれにせよ、なんらかの形で働く力である。  働きが表れていない状態のエネルギーを位置エネルギーと呼ぶ。学習が手につかず、ぼんやりした状態にあるとしても、じっとしている君は、もしかしたら位置エネルギーを蓄えているのかもしれない。位置エネルギーの例としては、高所に蓄えられたダムの水、強く引かれた弓の弦や輪ゴム、滑り台の上で待機する子どもたち、木の上で蔓を握ったターザン、崖の上に積もった雪…どれも、ある瞬間がきたら、運動エネルギーに変わる。この例は、力学的エネルギーであるけれど、光のエネルギー(放射エネルギー)は緑色の植物を育てるし、化学エネルギーは石油やガスを熱に変え物を動かすし、電気エネルギーや原子核エネルギーは現代文明をつくっているといえるだろう。  もちろん、自然界には、太陽光、風、竜巻、瀧、海流、噴火、温泉、稲妻、地震…  わたしたちの世界は、エネルギーに満ち溢れている。  さて、いうまでもなく、君は、エネルギー、つまり「働きを成しうる能力」を持っている。まさか、ぼくはなにもできないよ、とか、わたしは働けないわ、という人は誰もいないだろう。なぜなら、君は食事をし、食事がエネルギーに変わる以上、働かざるを得ないからだ。「働かざる者、食うべからず」という言い回しがあるけれど、エネルギーの観点からいえば、「食したる者、働かざるを得ず」が正確な表現であろう。  もし、勉強をさぼっている君が、お母さんから「勉強しないなら、ご飯抜きよ」と叱られたとしたら、君は反抗せずに黙って机に向かい、お腹が鳴ったタイミングで、「お母さん、お腹がペコペコだ。エネルギーを補給しないと、これ以上、勉強できない。だから、ご飯にしてよ」といえばよい。大人は、筋が通っていれば、必ずわかってくれるものだ。エネルギー源のないところから、エネルギーは生まれない。  食事を終えた君は、「食したる者、働かざるを得ず」で、ふたたび、机に向かうことになる。ただし、食べ過ぎていると、血液は胃腸に向かっているので、頭がよく働かない。だから、学習者は、食べ過ぎてはいけないのだ。  明治・大正時代の学習の秘訣に、  ① 食を細くする。(頭が回らないから)  ※現代であれば、消化の良いものを食べる。  ② 新聞を読まない。(記憶力が衰えるから)  ※現代であれば、テレビを見ない。  ③ 教科書をくりかえし読んで寝てしまう。(よく記憶できるから)  ※神経科学として正しい。  というのがある。とても理にかなった方法で、テスト勉強、受験勉強にピッタリだ。  最後に、君のエネルギーを最大限に引き出す方法を教えよう。  目標をできるだけ高くすること!  受験でも、スポーツでも、芸術でも、習い事でも、同じだ。目標を高くすることは、位置エネルギーを大きくすることにつながる。高い目標であればあるほど、君の位置エネルギーが増える。そして、君が本気になれば、その位置エネルギーが運動エネルギーに変わるのだ。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2016 September

学習速度を上げる Speed Learning  誰にでも時間は平等に与えられている、という人がいる。誰でも一日の持ち時間は24 時間ということが根拠だろうけれど、本当だろうか?  二人の人を並べて、静止した状態で時間を計るならば、なるほど同じ24 時間である。  しかし、人は動く。動く速度も、考える速度も、仕事をする速度も、勉強をする速度も、人によって大きく異なる。地球上を経過する物理的な時間は同じであっても、私たち一人一人が持っている時間は、実質的にずいぶん違うのではなかろうか。  一人の観察者から見て、静止した人の持つ時間ととても速く動く人の持つ時間は、特殊相対性理論では、 によって異なる。t′は、ある速度を持って動く人の時間、t は静止状態の時間、v は動く人の速度、c は光速で秒速30 万キロメートル。変数はv である。静止した人の速度は0であるから、1時間(3600 秒)はそのまま1時間である。もし君が光速の半分の秒速15 万キロメートルで動くとしたら、ある観察者から見て、君の時計は、1時間ではなく、52 分を指している。光速の10 分の9で動くとしたら、君の時計は26 分を指している。つまり、速く動けば動くほど、時間が縮むのだ。  もちろん、地球上で生活する以上、光速に近づいて動くことなどないので、身体的な時間は変わらない。しかし、頭(脳)の中の時間はどうだろうか? 直感や閃きは、膨大な情報を瞬時に処理した結果だから、ものすごい速度で頭が働いたはずだ。学習は、声や手を使うけれども、本質的には脳の情報処理である。だから、速度を上げることはできる。学習は、「習うより慣れよ」で、慣れれば慣れるほど、速くなることを君も実感したことがあるだろう。(計算練習による速算や読み取り練習による速読など)学習速度が速くなれば、脳のなかの時間は縮む。つまり、同じ1 時間でも、断然、学習量が多くなるのだ。  では、実際に、学習速度を上げるためのトレーニングをしてみよう。今回は、社会科の教科書を使う。 リラックスして、教科書を読む。(一冊丸ごとでもいいし、各章ごとでもいい)読み終わったら、読み終わるまでにかかった時間を記録する。 もう一度、教科書を読む。(当日でもいいし、別の日でもよい)今回は、意識して速く読む。読み終わったら、かかった時間を記録する。 もう一度、教科書を読む。意識して速く読む。時間を記録する。(この3 回目で、すでに最初より速く読めるようになっているはずだ) もう一度、教科書を読む。意識して、できるだけ速く読む。時間を記録する。(読後に、問題集に取り組んでおくと、さらに効果的だ)これを何日かかけて、10 回以上繰り返す。  10 回目を超えるころには、最初と比べものにならないくらい速く読めるようになっている。  まず繰り返して文章を読んでいると、文字の認識力が高まるので、読む速度が速くなる。また、社会科の用語が定着してくるので、知らない用語で止まることが減り、読む速度が速くなる。また、部分によっては記憶してしまうので、先の予測ができ、さらに速くなる。定着した知識が増えれば増えるほど、速度に拍車がかかる。一字一句とばさずに速く読めるということは、書かれている内容を自分のものにしていることの証拠でもある。(問題集を解いてみよう!)  専門家が専門分野の書籍をものすごい速度で読むことができるのは、定着している知識が多いからである。その分野、その教科が得意になればなるほど、学習速度は速くなる。  いちど速く学ぶことを体得してしまうと、どの教科にも応用が利く。ぜひ実行してほしい。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2016 July

世界の視点で Global Studies  国に先駆けて、さいたま市では、すべての市立小中学校で、新しい英語教育「グローバル・スタディ」が実施されている。教育目標は、「将来、グローバル社会で主体的に行動し、たくましく豊かに生きる児童生徒の育成」。さらに、目指す子ども像として、「外国の方と英語で積極的にコミュニケーションを図ることができる子ども」「日本やさいたま市の伝統・文化に誇りをもち、将来にわたり、社会に貢献する子ども」を掲げている。<br />  これからの日本や世界の状況を予想したとき、グローバル・スタディという取り組みの方向性は、正しい。取り組みの効果に疑問を持つ方々も多いようだが、グローバル社会に英語は不可欠になるので、失敗の可能性を論じてもあまり意義はないだろう。もし高い学習効果を期待するならば、いちばん簡単な方法は、子どもたちの目の前にグローバルな状況を出来させてしまうことだ。<br />  現在、山手学院のジュニア英語では、さまざまな国の、英語を国際語として使っている学生たちを授業アシスタントとして起用し始めている。これは、さいたま市の意図と同じく、彼らを教室に入れることによって、子どもたちの意識を日本語の世界からグローバルな世界に移動させ、体感として英語を学んでもらうためである。<br />  じっさい、外国の学生たちが入ったジュニア英語の授業を眺めていると、子どもたちは無意識のうちに彼らに英語を使おうとしている。なぜなら、目の前の人物が日本人でなく、どうやら英語を話せるらしいと認識すると、子どもたちの言語モードが日本語から英語に変わってしまうからだ。この状態で英語を学習すると、それが片言であっても、使える英語として身についていく。「英語が使える」という実感こそ、英語学習の鍵である。<br />  英語は、4技能習得の時代に入った。「聞く」「話す」「読む」「書く」をバランスよく身につけることを学習目標としているわけだが、言語習得の自然として、①「聞く」②「話す」③「読む」④「書く」という順番で、英語力をつくっていくべきだろう。<br />  わたしたちが日本語を身につけた順番も、①「たくさんの言葉のかたまりを聞いた」(Listening)②「聞いた言葉を自分の口でくりかえし話した」(Speaking)③「文字を読めるようにして、たくさん音読した」(Reading)④「くりかえし文章を書く練習をした」(Writing)である。<br />  小学生も、中学生も、積極的な気持ちで、英語を学べば、必ず英語は得意になる。これまでは英語を使う環境がそもそもなかったが、これからはグローバルな環境が身近なものになってくる。英語が必要な機会が増えてくる。<br />  いままで日本人が英語を苦手としていたのは、実感のない知識としての英語だったからだ。今後、君たちは、体感をともなって英語を学習することができる。日本自体が、そういう環境に変わってくる。<br />  さあ、いよいよ夏休みであるが、君たちは、世界の視点を持つために、なにをしたらいいのだろうか。<br />  まず目の前にある学習にとことん取り組んでみることを勧める。<br />  夏期講習・夏期合宿・サマースクールも、重要な学習機会になる。<br />  長い夏休みを無為に過ごすことなく、ともかく、たくさんのことを学んでいこう。<br />  できるかぎり学び、そして果敢に行動することによって、君たちは世界の視点を持つことができるようになる。<br />