そろばん通信|2019年4月号
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「そろばん」という呼び名になった理由 「そろばん」の名の由来について、いろいろなことがいわれています。多くの人が推理していますけれど、答えはそれほどむずかしくないと思います。 答えをいう前に、どのような考えがあったのか、見てみましょう。 「算盤は、珠が揃って並んでいる盤でありますから、揃え盤であります。そのソロエバンという意味から、ソロバンになったのです」 「ソロバンの珠を弾くとき、珠の音がサラサラと聞こえます。サラという音とソロという音は似ていますから、サラサラと鳴る盤というサラバンが、ソロバンに変わったのではないでしょうか」 「算盤は、中国では珠盤ともいいます。シュバンを急いで発音すると、ソロバンと聞こえます。シュバンがなまって、ソロバンになったのです」 「中国の人がサンバンと発音すると、ソルバンに聞こえます。それを聞いた日本人がソルバンをソロバンとなまって発音したのです」 なるほど、ソルバン、ソルバンと何度もいっていると、ソロバンになります。 しかし、これはカンボジアから伝来された南瓜が、カンボジア、カンボジア・・・と何度もいっているうちに、カボチャとなまったようなものですね。 算盤は、現代中国語では、スアンパンと発音します。シュンポン、ソンポン、スアンバンと発音する人たちもいます。中国の客家(ハッカ)の人たちはソンパンと発音します。 しかし、算盤の歴史は二世紀までさかのぼれますから、現代中国の発音では当時の発音はわかりません。 文化人類学的に考えれば、いちばん古い中国語の発音を使用しているのは、極東に位置する日本人です。(その証拠に、たとえば、日本人は「仏陀」を原音どおりブッダと読みますが、現代中国人はフォトォと発音します) そうだとすれば、日本人の使っている呉音・漢音・唐音のなかに、答えがあるのではないでしょうか。 たとえば、「行」という漢字は、呉音ではギョウ(行列)、漢音ではコウ(旅行)、唐音ではアン(行脚)です。ずいぶん音が変わるので、おどろくでしょう。ちなみに、現代中国語では、シンです。 したがって、「算盤」という字がどのように発音されてきたのかを考えますと、時代によって、地域によって、たくさんの発音が存在していたことはまちがいないでしょう。 山田孝雄という国文学の大学者は、ソロバンは、唐音なんじゃないだろうか、と推測しています。 わたしとしては、ジョージ君が旅をすると、フランスではジョルジュ君と呼ばれたり、ドイツではゲオルグ君と呼ばれたりするように、いろいろに発音される「算盤」は日本ではソロバンと呼ばれたのだと考えています。 どんな言語もその国の言葉になるとき、変化を生じるものだからです。 英語では、日本の算盤は「SOROBAN」です。 おもしろいですね。 学院長 筒井保明