
首都圏中学入試概況
2025年度入試(令和7年度入試)も昨年度と受験者数に大差なく、依然として厳しい入試でした。
これまでの入試を振り返ると、2023年度入試(令和5年度入試)は、受験者数が5万2600人で、過去最多となりましたが、2024年度入試(令和6年度入試)は、少子化の影響もあって若干減少し5万2400人となりました。2025年度入試(令和7年度入試)の推定は5万2300人で微減しましたが、過去3番目に多かったことになります。エリア毎の受験者を見ると、埼玉エリアは、開智所沢・開智の応募者増の影響で、総受験者が大幅に増加。神奈川エリアは女子校を中心に減少。東京・千葉は昨年度とほぼ同程度でした。
東京都教育委員会のまとめでは、去年、2024年3月に都内の公立小学校を卒業したのは9万7572人で、このうち20.1%にあたる1万9655人が、都内の私立中学校に進学しました。この中には、都外の私立中学校や都立の中等教育学校(公立中高一貫校)に進学した人は含まれておらず、実に東京都では、5人に1人が私立中に進学する時代であることがわかります。
埼玉県中学入試概況
埼玉県内の私立中学校や中高一貫の中等教育学校の出願者数は、1月6日時点でのべ7万6599人で、去年、2024年の同時期と比べ1万6000人あまり増え、県が統計を取り始めた2011年以降最も多くなっていました。今年度、最も出願者数が多かったのは、所沢市の開智所沢中等教育学校で、去年の同時期と比べ8300人あまり多い1万5175人、次いで、開智中学校がおよそ7200人多い1万4100人、栄東中学校がおよそ200人多い1万2757人などとなっていました。
開智所沢中等教育学校(以降、開智所沢)は、開校元年である昨年度の倍率が、すべての回を総合して1.49倍と思ったより落ち着いた入試でした。そのため今年度は応募者が殺到しました。2025年度入試(令和7年度入試)では、すべての回を総合した倍率は2.38倍となり苛烈を極めました。受験者数は昨年度の220%にもふくれあがったのに対し、合格者を昨年度とほぼ同数しか出さなかったため、当然、高倍率になりました。昨年度の第一志望率が高かったことを考えると、学校としては「受験者が増えたのは嬉しいが、定員を大幅に超過しては困る」というわけで、合格を昨年度とほぼ同数に絞り込んでおき、辞退者の状況を見ながら繰り上げ合格を出していく方針をとったのでしょう。来年度の開智所沢ですが、今年度の高倍率が衝撃的であったため、敬遠されてやや落ち着いた倍率になる可能性もあります。チャレンジ層が減り、東京・神奈川の難関校を志望する強力な受験生たちが、練習受験に使うケースが増えるでしょう。学校側としては、学力の高い東京・神奈川の受験者の手続き率が低いのは目に見えていますから、多めに合格者を出しておく必要が出てきます。第一志望の埼玉県内生にとっては、そこにチャンスが生まれると思います。
開智所沢の爆発のあおりを受けて応募者を減らした中学校もあります。来年度入試では、入試日程を工夫するなど何か手を打ってくるかもしれません。
大学合格実績以外の要素で応募者を増やしている学校の特徴①
……ホームページの更新頻度が高く、SNSで在校生の姿を毎日配信!
2020年度を振り返ると、コロナ禍によって、私立中の募集合戦に新しい傾向が生まれました。それが、ホームページやSNSを利用した情報発信への注力でした。それまでは、学校説明会が勝負でしたが、コロナ禍により受験生と保護者が学校を回らなくなったため、指導内容・学校施設だけでなく、在校生たちの生きいきとした姿まで手に取るようにわかるような工夫をホームページに凝らすようになります。特に、在校生たちの受験生への応援メッセージを掲載するようなコーナーは大人気で、コロナ禍にあって「受験生たちの心を在校生たちが支えるような心の温まり」が、インターネットを通じて生まれたように思います。また、SNSを通じて、「今日の在校生の様子」を写真で配信するなど、タイムリーな在校生の姿が直接個人の携帯電話に届けられ、学校と受験生個人が直通回路で結ばれていることを実感させるものでした。
こうして、コロナ禍を通して受験生と保護者に根付いた、インターネットを通じた情報収集の重要性は、コロナ禍が落ち着いても継続し、さらに一段階レベルを上げることになります。受験生の明るく楽しい生活ぶりを彷彿させるようなフラッシュ(動画)をがっちり仕込んだホームページは、コロナ禍の一時期と比べてやや減りましたが、2025年度入試でも「情報発信が積極的な学校と、人気が上昇した学校がほぼ一致している」のは確かです。
大学合格実績以外の要素で応募者を増やしている学校の特徴②
……在校生の活躍をナマで見せる企画を積極的に開催!
さて、コロナ禍がようやく収まって、再び受験生・保護者が動き出すと、それをどう受け入れるかが肝心になります。学校を知る第一歩はホームページ。そこには、在校生たちの明るく生きいきとした姿や受験生応援メッセージ。そして、いよいよ学校訪問。そこで在校生が、ホームページやSNSで見てきたとおり、明るく生きいきと受験生・保護者を出迎えれば、観念が現実に変わるわけです。学校と受験生個人の直通回路を利用して、いかに受験生・保護者を引き出すかが第一のポイント。学校に足を運んでくれた受験生・保護者に「やっぱり来て良かった。思っていた通りだった」と思わせ、学校と在校生のファンにさせるのが第二のポイントです。現在の受験者募集のカギは絶対にそこにあると思います。
とにかく東京都内私立は、生徒募集に在校生を関係させることを恐れず積極的です。従来の「在校生を生徒募集に使うのはあまりよろしくないのでは……」という考えは、もう古いようです。それと比べると、埼玉県内私立の多くは、まだそこまで踏み込む勇気がないのです。もちろん、旧来の枠にとらわれない西武学園文理は、在校生中心イベントを、もう3/23(日)に開催しました。
みなさん、あまり学校訪問を堅苦しく考えずに、いろいろな私立中高の募集イベントに参加して、在校生の姿をナマで見てきてもらいたいと思います。世間評では知りえない在校生たちの実際の具体的な姿がそこにあるはずです。その学校の制服を身に付け、その校舎で動き回っている自分をイメージすることは、学習のモチベーション・アップにも繋がるはずです。
〈在校生が活躍するイベント開催例〉
■佼成学園
「新中2が本音で語る! 入学前の不安、今どうなった?」をテーマに学校説明会を実施。
■芝浦工業大学附属
スクールサポーターの生徒が校内案内する。
■大妻
授業体験・クラブ活動体験・生徒会による校内探検ツアーなど、在校生とふれ合う参加型・体験型オープンスクール。
■学習院女子
卒業式を終えたばかりの卒業生が、少人数グループを率いて40分程度校内散策。
■神奈川学園
教育の特徴をコンパクトにまとめた説明会を実施。在校生が質問に答えながらホンネの学園生活紹介をする「座談会」も実施。
■東京都市大付
生徒たちにリアルな学校生活を聞ける「ミニ説明会」を実施。在校生や卒業生が校内を案内しながら学校について紹介。
■日本大学
「謎解き 在校生と学校探検しよう」を2回開催。在校生と一緒に校内施設を見学しながら「謎解き」に挑戦するイベント。
■渋谷教育学園幕張
「生徒が案内する学校見学」を実施。約90分の見学を予定。原則教師の随行なし。しっかりした生徒のイメージをアピール。
■西武学園文理
「謎解き学校見学ツアー(東京ドーム3つ分の広大な敷地が会場)」と「学校説明会+校内見学ツアー(在校生に直接質問できるチャンス!)」を実施。楽しく西武文理を知る特別イベント。
■高輪
在校生の企画・運営による「春休み学校説明会~高輪生が語る学校生活~」学校紹介と見学ツアー
■三輪田学園
「MGP(生徒有志の広報委員会)生徒主催!春の体験型説明会」を開催。企画・運営まですべて在校生がおこなうイベント。
■開智日本橋学園
「【春期特別企画】生徒による校舎案内ツアー」を開催。説明会実行委員が校舎案内
■桐蔭学園
「新5・6年生対象スタートアップ!学校説明会」を開催。在校生が司会や教育内容の発表・学校案内のクイズなどを実施。
■千葉明徳
「MEITOKUの魅力を知りたいかい(会)?」。「MEITOKUの魅力伝え隊(在校生)」が本校の魅力をお伝えする。
■東京女学館
インタープリター(生徒有志による案内係)の案内による少人数での「校内見学ツアー」を開催。約40分から1時間で校内の各施設を紹介。
■聖園女学院
聖園生による「体験プログラム」や「校内ツアー」を企画。
■光塩女子学院
ミニ説明会のメインは高3生徒による学校紹介。
■普連土学園
「生徒・教員への質問コーナー」「初めての方向けの説明会」も。
■豊島岡女子学園
「豊島岡生による相談会」を開催。受験生から在校生に対面で直接質問できる機会。個別相談は1組15分。
