
アメリカのトランプ大統領は3月、カナダやメキシコなどの国に対し、特定の品目について追加関税を発表しました。続いて4月にはすべての輸入品に対して10%の一律関税を、加えて国別のものなど次々と新たな関税を発表し、「トランプ関税」とも呼ばれています。今回はこの内容について扱います。
関税とは:外国からの輸入品に課せられる税金です。この税金をかけることで、外国の商品が高くなり、結果として自分の国で作られた商品が売れやすくなるようにする狙いがあります。
●追加関税を課すことを決めた主な理由

トランプ大統領が様々な形で関税を課すことを決めた主な理由は、以下のとおりです。
● 貿易赤字の削減: トランプ大統領は、アメリカが他国との貿易で巨額の赤字を抱えていることを問題視し、これを減らすことを重要な政策目標としました。
※貿易赤字:輸入額が輸出額を上回っている状態。
● 中国・EUなどとの貿易不均衡の是正:トランプ大統領は、中国やEUなどの国々がアメリカ製品に高い関税をかけていることを「不公平」とし、同じ水準の関税を課すことで「公正な貿易」を実現しようとしています。結果として、特に中国とは互いに報復として関税率をあげる関税戦争ともいえる事態になっています。
● 国内産業の保護: トランプ大統領は、特に鉄鋼やアルミニウムなどの産業が外国からの安価な輸入品によって打撃を受けていると認識し、これらの産業を保護しアメリカ国内での製造業の再生を促すことを目的として追加関税の導入を決めました。また、海外の自動車メーカーに対しては、アメリカ国内での生産を増やすことを期待しています。
● アメリカ第一主義: トランプ大統領は、「アメリカ第一主義(America First)」を掲げ、アメリカの利益を最優先する政策を推進しました。関税をかけることで、アメリカの企業や労働者を守り、アメリカ経済の競争力を高めようとしています。
●関税の引き上げによって貿易が制限される例

このように、国内産業を外国からの輸入品から守るために、輸入品に対して関税を課したり、輸入制限を設けたりすることがあります。こういった貿易を「保護貿易」といいます。以下に、実際の保護貿易の一例を挙げます。
● 日本の農産物に対する保護(農業政策)
日本は、農業分野において長年にわたり保護貿易政策を採用してきました。特に米、牛肉、乳製品などの農産物は高い関税で守られています。
米:1kgあたり405円 牛肉:38.5% 乳製品:チーズは約29.8%
これは、国内農業を保護し、農家の収入を安定させるためです。
● インドの自動車産業保護
インドは、国内の自動車産業を保護するために、高い輸入関税を設定していることが多いです。完全に組み立てられた自動車に対して最大60%の関税を課しています。外国製の車両に対して高額な関税を課すことで、インド国内メーカーを有利にし、国内市場を守るねらいがあります。

現在、世界全体の貿易の流れは、これらとは逆に、政府や国際機関が貿易に対して最小限の制限や規制を設け、輸出入を行う際の関税や輸入規制などをできる限り排除するという「自由貿易」が主流ですが、状況によっては今回のアメリカのような動きが行われることがあります。
トランプ関税は、アメリカだけでなく世界中の経済に様々な影響を与えています。ただ、トランプ大統領の発言は二転三転し、現在も関税についての交渉は続いており、これからの政策がどうなるか注目されています。
