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HOTLINE202505 室長が行く 埼玉県立川越高等学校
本部より
2025/05/13
HOTLINE202505 室長が行く 埼玉県立川越高等学校

SCHOOL DATA
埼玉県立川越高等学校【県立・男子校】
住所:埼玉県川越市郭町2-6
電話:049-222-0224
アクセス:
 西武新宿線「本川越駅」より徒歩約15分
 東武東上線「川越市駅」より徒歩約20分
 東武東上線・JR「川越駅」より徒歩約25分

今回は川越市にある埼玉県立川越高校を訪問し、教頭の塩原めぐみ先生にお話をうかがった。川越高校は県内屈指の進学校として名高く、令和7年度の大学入試においても、東京大学に10名が合格するなどの素晴らしい実績を出した。
その歴史は古く、1899年(明治32年)に埼玉県第三中学校として開校して以来、120年以上にのぼる。地域の方々からは、近隣の川越工業高校との区別のためなどから「かわたか」と呼ばれており、親しまれている。在校生や卒業生は「かわこう」と呼ぶことが多く、川越高校の第一応援歌「奮え友よ」や第四応援歌「凌雲の志」の歌詞でも「かわこう」という読みになっている。
これまでに、研究者やアナウンサー、映画監督や小説家、お笑い芸人など、様々な分野の第一線で活躍する卒業生を輩出しており、2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏も出身者の一人だ。

「川越高校」という環境

川越高校は埼玉県内にわずか5校しかない公立の男子校のひとつである。女子がいないという環境だからこそ、生徒たちは自分らしさを存分に発揮することができる。その背景には、どんな個性も尊重し受け入れるという、川越高校ならではの風土がある。実際に、中学校時代には引っ込み思案だった生徒が、川越高校に入学したのちに大きく成長し、積極的に自分を表現するようになるケースも少なくないという。このような環境のなかで個性を十二分に伸ばした生徒たちは、卒業後、さまざまな分野でプロフェッショナルとして活躍し、目覚ましい飛躍を遂げている。
塩原教頭先生は川越高校の特徴として、「生徒が学校を愛していること」を挙げられた。そのように感じる理由として、生徒が校歌や応援歌をしっかりと歌えること、同窓会の結びつきの強さ、そして学校の伝統を大切にし、しっかりと引き継いでいこうとする姿勢などを具体的に述べられた。これらの点から、生徒たちが母校に対して深い愛着と誇りを持っている様子がうかがえる。

生徒と教員の信頼関係のもとでの自主自立

川越高校の校風は「自主自立」であるが、その背景には生徒が教員との対話を繰り返し、獲得をしたという歴史がある。それにより、生徒が自身の自由を保障する「生徒憲章」を定め、今もなお受け継がれている。その中には、川越高校の特徴の一つでもある服装の自由についても記載されている。
自主自立といわれると、教員が放任しているのではと思われてしまいそうであるが、実際はそうではない。生徒は、自分たちが自主的に行わなくてはならない環境の中で、自らが考え、勉強や部活動をはじめ、どんな物事にも全力で取り組んでいる。
また、何か特別なことを行いたい場合は「なぜそのようなことをしたいのか」「それを行った場合にはどのような利点があるのか」を教員に対して提案をする。その際には、企業のプレゼンのようにデータ等を用いる場合もあるそうだ。それに対して、教員が判断をし、時には教員が生徒のために行動することもある。この生徒と教員の厚い信頼関係が、川越高校の自主自立を成り立たせている。
川越高校の生徒は何事に対しても全力で行う。これは勉強や部活はもちろん、文化祭や陸上競技大会、修学旅行や球技大会などの学校行事までにも言えることだ。球技大会では、優勝を目指して、休み時間や朝の時間を使って練習を重ねる。修学旅行では、広島から京都までの移動が各班の裁量で決められており、中には遠回りになる四国や、京都とは反対方向の福岡を経由して、京都に行く班もあるそうだ。決められた条件の中で自分たちができることを全力で楽しむ、なんとも川高生らしいといえるだろう。

最難関大学への挑戦

進学校である川越高校は、コンスタントに最難関大学の合格者を輩出している。
東京大学10名合格は、埼玉県の公立高校では3位、全国の公立高校で見ても21位(インターエデュ調べ)と抜群の実績を誇った。そこには、教員の生徒の志望校合格のサポート体制がある。職員室では、各科の教員が教材研究の議論や学習が遅れている生徒に対してのフォローをどうするべきかなどの話し合いを活発に行っている。また、進路指導においても、生徒の意見にしっかりと耳を傾け、志望動機などを生徒に聞くことで、生徒の勉強のモチベーションを保ち、研鑽を重ねるという信頼関係が成り立っている。
フォロー体制も充実しており、夏期講習では、昨年度は99もの講座が開講された。その中で自らの目指す進路などから、今の自身に足りないもの、必要なものは何かを考えて受講することが可能である、と塩原教頭先生は話す。その他にも、生徒自らが教員に学習したい分野を提案して開講される「自主ゼミ」と呼ばれる講座などもあり、自主自立の精神のもと、生徒たちは目標に向かっていく。
進路指導についても、大学受験を終えた直後の先輩を招いて受験の話を聞く合格者体験懇談会や保護者を対象とした進路学習会など、川越高校全体がチームとなって大学入試を乗り越える。

川高サイエンス探究

川越高校では、11年間のSSH事業を発展させ、独自の最先端科学教育を継続する「サイエンス探究」を行っている。自然科学・工学全分野を融合した最先端技術を大学等の研究機関と連携をしながら学び、課題研究を行う。研究発表会には、川越高校のOBであり、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏も毎年来校する。生徒たちの発表を真剣に聞いて、助言や指導を行う。また、世界的に著名な講師を招いて最先端科学に関する講演を行う「サイエンス探究特別講座」では、科学の最先端を俯瞰し、進路決定に役立てる。
それらの成果として、今年3月に行われた第14回の科学の甲子園に出場し、47都道府県中の7位入賞を果たし、特別賞も受賞した。その他にも2024年のロボカップジュニア世界大会出場や日本生物学オリンピック銀賞、日本地学オリンピック銅賞など、多くのすばらしい実績を残している。

G・L・P(グローバル・リーダーシップ・プログラム)

川越高校はグローバル人材の育成にも力を入れており、「G・L・P(グローバル・リーダーシップ・プログラム)」という名の国際教育を行っている。三つのステップがあり、1年生全員が参加するSTEP1は異文化理解プログラム。LHR時に、各クラスに2人、英語圏以外の国からの講師を招く。英語しか共通言語がないので、英語でのコミュニケーションが必要となる。STEP2では英語圏出身のベテランの進行役のもと、英語圏からの留学生らと4日間、英語のみでディベートやアクティビティなどをこなす疑似留学体験を行う。STEP3では次世代リーダー養成プログラムとして、現地の大学に7日間の短期留学を行う。

全国有数の規模を誇るくすのき祭

川越高校の大きな魅力の一つとして、やはり文化祭は外せないだろう。「くすのき祭」という名前がついており、正門を入ってすぐにそびえ立つ大きなクスノキに名前を由来している。川越高校といえば、「ウォーターボーイズ」を連想するかもしれない。はじめは水泳部の生徒が思いつきで始めたものだったが、それが大きな話題を呼び、川越高校水泳部をモデルとして、映画化やドラマ化もされた。映画放映直後の文化祭は来場者が30000人を超え、過去最高を記録した。現在でも、2日間の来場者は毎年15000人前後を記録し、全国有数の規模を誇る。それを支えるのがくすのき祭実行委員だ。川越高校の文化祭は1年がかりで準備を行う。200人以上の文化祭実行委員がおり、6つの班に分かれて活動をしている。当日の成功のために、それぞれの班で生徒が主体となって文化祭を作り上げる。そのなかでも特に、「門班」と呼ばれる部隊が毎年制作する門は、高さ10m以上になることもあるくすのき祭の名物の一つで、実際に見ると圧巻の迫力である。また、内装や装飾にもこだわっており、門班の生徒の一年間の努力の結晶を感じることができる。
文化祭を間近に控えた8月になると、埼玉県内の主要駅前で文化祭のビラ配りを行っており、「川越高校くすのき祭です!」の声を聞くと「今年もくすのき祭の季節が来たな。」と思わせてくれる夏の風物詩だ。

川越高校とは、「男子生徒の臨界点」である

最後に、塩原教頭先生は「高校で新しい自分と出会いたい、変わりたいという気持ちがある、高い志を立てて、努力を積み重ね、自己を高めたいと思っている、そんな生徒に来てほしいと思います。」とおっしゃった。自主自立という自らが考えて行動をしないといけない中で、男子のみという異性の目を気にすることなく本当の自分をさらけ出せる環境だからこそ、川越高校の生徒たちはのびのびと、柔軟な発想を展開することができるのだろうと、取材を通して強く感じた。
今の自分から変革をしたい、本当の自分に出会いたいという男子生徒諸君は、ぜひ川越高校に足を運んでみてほしい。人生を変える出会いがそこに待っているかもしれない。

[山手学院 学院長 下村秀一]
120年の歳月で磨かれた校風は、厳しさではなく信頼によって生徒を自走させる。教員は伴走者として生徒の挑戦に寄り添い、研究から文化祭まで全力で学ぶ姿が印象的だった。男子だけの空間が仲間への敬意と探究心を加速させていると感じた。

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