SCHOOL DATA
埼玉県立川越南高等学校【県立・共学校】
住所:埼玉県川越市南大塚1丁目21−1
電話:049-244-5223
アクセス:西武新宿線 南大塚駅 北口 徒歩約13分
伝統と革新の融合で、さらなる進化を続けていく進学校
今回は、川越市郊外にある川越南高校を訪問し、校長の石川良夫先生にお話を伺った。昨年50周年を迎えた川越南は文武両道で共学の進学校として知られる。在校生や地域住民からは「川南(かわなん)」と呼ばれ、親しまれている。また、毎年1.5倍近い高倍率を出す高校でもあり、埼玉県西部では傑出した人気を誇る。ここ数年で大学進学実績が飛躍的に伸びていることでも注目されている。人気の要因のひとつにはファッションデザイナーの森英恵氏がデザインを手がけたスタイリッシュな制服もあるだろう。生徒数の内訳をみると女子が670人、男子が396人と女子生徒が男子生徒よりも多いのも特徴といえる。キャンパスは西武新宿線南大塚駅から徒歩13分ほどの距離に位置し、東武東上線や埼京線、所沢方面の乗り換えも便利なこともありかなりの広範囲から生徒が通学している。

新たな文武両道のかたち
文武両道の進学校として知られている川越南だが、石川校長は「以前の文武両道のイメージは勉強と部活動の二つだったが、今は学校行事も文武両道の一つになっています」と新たな文武両道のかたちを示された。 川越南では、学校行事にも力を入れており、毎年6月に行われる体育祭では、各学年でくじ引きをして分けられた色で、縦割りの団を組んで競い合う。ひとつの団に入学したばかりの1年生から入試を控えた3年生までいるので、交流が広がる。しかも団の組み合わせはくじ引きで決まるので、毎年異なるクラスの組み合わせとなり交流が広がることになる。衣装や楽曲を自分たちで決めて、ダンスの振り付けも一から考える応援合戦は、体育祭の目玉ともいえる種目で、生徒たちが最も力を入れる。このような体育祭や部活動では、年齢の違う仲間たちと学年を超えた縦のつながりを学んでいく。もう一つの目玉行事と言えるのが、毎年9月に行われる文化祭だ。クラスごとに最優秀賞を目指して、夏休み前から準備を始める。クラス内で協力して完成させていくことで、横のつながりを学んでいく。部活動などによるステージ発表も大きな盛り上がりをみせる。

進路指導の「三つの柱」
川越南の進路指導部では、「全教科学習」「長期記憶化」「7時間睡眠」という三つの指針を掲げている。
私立大学の場合は、入学試験で5科目すべてが出題されることはごくまれだが、生活の中では今までに積み重ねた知識すべてを生かしていくことになる。「全教科学習」を行うことで、その後の社会で生きていくための力を養う。
定期テストをその場の暗記で乗り切ろうとする短期記憶のスタイルではなく、今までの学習範囲のすべてが出題されることが多い模試などを通じて「長期記憶化」を図っている。また、模試についても、受けて終わりではなく、結果を各教科の教員が分析をしてフィードバックする。

勉強や部活動に加えて、その他の活動でも忙しいのが高校生だ。どうしても睡眠時間が短くなってしまいがちであるが、睡眠を削ることはパフォーマンスの低下につながるため、川越南では「7時間睡眠」の徹底を生徒に呼びかけている。
これらの取り組みによって、その場しのぎではない、長く役に立つ真の知識や学力が定着し、受験勉強を始めるタイミングで、他の受験生よりもリードが取れる。
川越南の進路指導は、近年、校長などの管理職が指示をして改革を行うトップダウン型ではなく、進路担当や各教科の教員が自ら考えて行うボトムアップ型となっているそうで、教員の中に確固たる進路指導の信念が根づいている。このようなかたちになることで、学校全体で流れが変わっており、教員が異動したとしても質の変わらない「川越南の教育」を提供し続けることができている。

躍進する進学実績
先述の取り組みの効果などもあり、近年の進学実績の躍進が顕著になっている。特に目覚ましいのが国公立大学の合格者数だ。5年ほど前までは10名程度だったが、ここ数年で倍増した。これは「全教科学習」により、総合力をつけた生徒たちが、選択肢を広げることができたことが結果として表れている。また、難関校を目指す生徒も増加しており、合格者数の増加だけでなく、難関大合格者も増加している。昨年度は、現役での筑波大学・横浜国立大学や既卒の京都大学などの難関国立大合格者も輩出しており、レベルの高さをうかがわせる。また、国公立大学だけでなく、私立大学も合格実績が向上しており、ここ数年でMARCHGの進学者数は日東駒専の進学者数と逆転した。 近年は大学入試において、入学試験の早期化がトレンドとなり、年内入試の割合を増やす大学も多い中で、年内入試で進路決定する生徒が減ったことも、近年の川越南の傾向として挙げられる。これは最後まで頑張って高みを目指すという姿勢が全体に浸透していることが表れている。それにより、実績の向上などの良い効果が見られはじめている。

ICTの活用と課題
どの高校もICT化が進み、すべての県立高校のホームルーム教室にプロジェクターが設置されている。川越南でも早い段階でプロジェクターが設置され、Wi-Fi環境下でこれらを活用している。取材に訪れた日に校内見学をさせていただいた際にも、多くの授業でプロジェクターを使って授業を行っていた。 近年、AIの活用が活発になっており、私たちの生活の中にも浸透し始めたが、その中で石川校長は心配もあるそうで、「AIは調べたいことをすぐに示してくれるが、鵜呑みにしてはいけない。どう使うかが大事です。」とおっしゃった。便利で新しいものを取り入れながらも判断力は身につけなければならないし、手を使って書くことも必要、学習を積み上げながら理解力を深めていく授業を柱とするのが川越南の学びだ。

国際交流
川越南は普通科のみの高校ながら、国際理解教育にも力を入れている。姉妹校提携を結んでいるオーストラリアのキャブラ・ドミニカン・カレッジに毎年交互に交換留学を行っている。これはただ留学に「行く」だけでなく、海外から来る姉妹校の留学生を「受け入れる」ことで、より深い国際理解につなげている。このほかにも、県内の大学に在籍する外国人留学生を招いて交流会を行っている。ここでは、アジアを中心とした地域からの留学生が中心にやってくるため、ALTの先生やキャブラ・ドミニカン・カレッジの生徒のような欧米文化圏ではない国の文化に触れることで、様々な文化に目を向けてもらう狙いがある。
文武の「武」 部活動
部活動も活発に行っている川越南では、1年生は全員加入、2・3年生は任意の加入となっており、加入率は9割を超える。多くの生徒が部活動に取り組む中で、結果を出している部活動も多くある。弓道部が今年の全国大会の県予選会で優勝を果たし、関東大会と全国大会の出場を決めた。美術部、放送部、書道部が2025年の全国高等学校総合文化祭に埼玉代表として出場した。とても広いグラウンドや独立した部室棟もあり、充実した環境といえるだろう。

内に秘めたる情熱を花開かせる3年間
最後に石川校長に、川越南の生徒の特徴をうかがうと、「元気な子たちだし、純朴で、いろいろなことはするが意外と控えめな感じです。」と答えてくださった。「基本的には真面目で控えめだけど、火がつくと熱中します。」という一面も話してくださった。学校行事での生徒の情熱の注ぎようは、映像や写真からでもひしひしと伝わるものがある。
最後に、どんな生徒に目指してほしいかを聞くと「学校の中で一生懸命、勉強・部活動・学校行事を頑張る生徒に来てほしいと思います。」と答えてくれた。「すべてが得意な子はいないので、下手でもいいからいろんなことに向き合って成長してほしいです。(川越南は)高校に通う生徒の範囲も広いので、新しい出会いが多いです。その環境の中で様々な経験をしていってほしいです。」とも話してくれた。 川越南らしい温かな校風はそのままに、進学面で見せる攻めの進化。今回の取材では、その両立を成し遂げている点が最も印象に残った。新たな環境で今の自分から変わりたい、勉強・部活動・学校行事のどれも全力で取り組みたいと思う生徒諸君は学年に関わらず説明会に足を運んで、川越南の良い雰囲気を全身で感じ取ってほしい。今よりも大きく成長した自身の姿が想像できるはずだ。

取材班よりひとこと
【狭山校 長谷川かほり】
学校一丸となって生徒の進路指導に力を入れているのはもちろん、通常より「全教科学習」を自然に取り入れている教育方針をお伺いし、川越南高校の近年の飛躍の理由を垣間見たと感じました。それでいて学校行事や生徒活動にも全力出取り組む、古きと新しきが良い意味で共存する学校です。
【川越西口校 勝村裕太】
県立高校らしい「文武両道」を目指す精神が印象的でした。「武」と聞くと「部活動」がすぐに連想されますが、川越南高校では「学習」「学校行事」「部活動」の3つのバランスを大切にしています。ぜひ、充実した学校生活が送れる高校を選んでください。
