こども教育研究所「体験を、経験へ」
体験 その時、その場所で行う、一回限りの行動
経験 さまざまな体験を重ねることで、知識や技術、考え方が、自分の中に確かな力として身についた状態
体験は、子どもの心を動かします。経験は、子どもの未来を動かします。
この夏、山手学院で、子どもたちはさまざまな体験をしました。
サマースクールやジュニアサマースクールでは、親元を離れ、仲間と寝食を共にしながら、自然や文化に触れました。
Englishサマースクールでは、英語を使って学び、生活する模擬海外留学を行いました。言葉が思うように伝わらない難しさや、自分の英語が相手に伝わったときの喜びを感じた子どもたちもいたことでしょう。
普段とは違う場所へ行く。初めて出会う人と話す。やったことのないものに挑戦する。
こうした一回限りの体験は、子どもたちの世界を広げ、これまで知らなかった自分に出会うきっかけになります。
そして、このような体験ができるのは、子どもたちを送り出してくださった保護者の皆様のご理解とご協力があるからです。
初めての場所へ送り出すことには、期待だけでなく、不安もあったことと思います。参加に向けた準備を整え、子どもの背中を押し、帰宅後にはその話に耳を傾けてくださったことで、一日の出来事が、子どもの心に残る学びへと変わっていきます。
子どもに体験をさせることは、単に機会を与えることではありません。
子どもの可能性を信じ、少しだけ手を離し、自分の力で挑戦する時間を与えることです。
改めて、子どもたちの成長を信じ、貴重な体験の機会を託してくださった保護者の皆様に、心より感謝申し上げます。
一方で、私たち山手学院は学習塾です。子どもたちの成長に必要なのは、特別な場所で行う体験だけではありません。
夏休みに塾へ通い、同じ目標を持つ仲間と机を並べる。分からない問題を何度も考える。苦手な単元から逃げず、できるまで解き直す。
その一日だけを見れば、小さな体験にすぎないかもしれません。
しかし、それを何度も繰り返すことで、問題の解き方が身につきます。自分に合った勉強の仕方が分かるようになります。思うようにいかないときにも、簡単には諦めずに取り組めるようになります。
一度、問題を解いたことは体験です。何度も解き直し、自分の力で解けるようになったなら、それは経験です。
一度、先生に質問したことは体験です。分からないことをそのままにせず、自分から質問できるようになったなら、それは経験です。
一日、集中して勉強したことは体験です。毎日机に向かい、やるべきことを続けられるようになったなら、それは経験です。
子どもたちを本当に成長させるのは、一度の成功や感動だけではありません。
できなかったこと。悔しかったこと。途中で投げ出したくなったこと。それでも、次の日にもう一度挑戦したこと。
そうした体験を重ねることで、知識や技術だけでなく、自分を律する力、困難に向き合う力、最後までやり抜く力が育っていきます。

夏期講習では、多くの生徒が、同じ目標を持つ仲間とともに、自分の課題に向き合いました。
ライバルの頑張る姿に刺激を受けながら、できない自分から逃げず、もう一問に挑むこと。昨日まで分からなかった問題を、自分の力で解けるようにすること。
これもまた、真剣に取り組めば取り組むほど、日常を超えた価値ある体験になります。そして、努力を二学期も続けることで、その体験は確かな経験へと変わります。
二学期は、夏に始まった挑戦を、その時限りで終わらせないための時間です。
授業を集中して受ける。宿題を期限までに終える。間違えた問題を解き直す。
分からないことを質問する。自分で決めた目標に向かって努力を続ける。
一つひとつは、決して特別な行動ではありません。
しかし、当たり前のことを積み重ねる力こそが、子どもたちの未来をつくります。
山手学院は、子どもたちに多くの体験を提供するだけの場所ではありません。
一つひとつの体験を、知識や技術、自信、そして生きる力へと変えていく場所でありたいと考えています。
夏に踏み出した一歩を、夏だけの思い出で終わらせない。
保護者の皆様から託された思いを胸に、私たちは二学期も、子どもたちの挑戦と成長を支えてまいります。
体験は、世界の広さを教えてくれます。経験は、自分の可能性を教えてくれます。
子どもに必要なのは、失敗しない道ではありません。挑戦できる機会と、もう一度立ち上がれる場所です。
一度の体験が心を動かし、積み重ねた経験が人を成長させる。
未来とは、今日までに重ねてきた成長の、その先にあるものです。
今月の教育アドバイス
学ばなければできないことを、私たちは実際に行うことによって学ぶ。
知識や技術は、ただ教わるだけでは身につきません。自分で挑戦し、失敗し、もう一度取り組む。その体験を積み重ねることで、初めて自分の経験となり、確かな力へと変わっていきます。)
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』)
