宿題のやり方
新学期が始まってから、2か月ほどが経ちました。4月は、新しい環境に慣れるだけでも、子どもたちは思っている以上に力を使います。5月になると、少しずつ生活のリズムが整ってきます。そして6月に入る頃から、教室ではまた少し違う変化が見えてきます。本人も、さぼっているつもりはないのだと思いますが、ノートの字が少し雑になっていたり、宿題の直しが浅くなっていたり、わからなかった問題をそのままにして次に進んでいたりすることがあります。
その場で見ると、小さなことですが、後から振り返ると、成績が下がる前には、たいていこうした小さな変化が出ています。
先日も、ある教室で講師が生徒に声をかけているのを見かけました。「最近、宿題の直しが少し甘くなっているね」本人は、少し驚いた顔をしていました。授業もきちんと受けていますし、宿題も出しています。決して手を抜いているつもりはなかったのでしょう。ただ、話を聞いていくと、学校の宿題が増え、部活動も本格的になり、家に帰ると眠くなってしまうとのことでした。勉強をしていないわけではありません。むしろ、本人なりにはやっている。ただ、以前よりも一つひとつの確認が浅くなっていたのです。
この時期の乱れは、怠けというより、疲れや慣れから来ていることが多いです。本人も気づかないうちに、少しずつ丁寧さが落ちていく。そこに気づけるかどうかが、6月の大きな分かれ目になります。

成績が安定して伸びていく生徒を見ていると、宿題のやり方に共通点があります。宿題を「提出するだけのもの」として見ていません。まず自分で解いて、丸つけをして、間違えたところを直す。これをしっかりとやるだけでも、大分変わってきます。大きく伸びる生徒はそこで終わりません。なぜ間違えたのかを考えます。計算ミスなのか、問題文の読み違いなのか、そもそも考え方がわかっていなかったのか。そこを分けています。そして、自分だけで解決できなければ、先生や友人に聞きます。聞いたあとは、もう一度、自分で解き直します。
言葉にすると当たり前のことです。しかし、ここまで丁寧に宿題を使えている生徒は、決して多くありません。宿題は、終わらせるためだけにあるのではありません。今の自分がどこで止まっているのかを知るためにあります。だから、宿題の本当の価値は、提出した瞬間ではなく、間違えた後に出てきます。ここを雑にしてしまうと、学習はだんだん苦しくなります。
わからないところが少しずつ残る。直したつもりでも、もう一度出ると解けない。そうすると、次の単元に入ったときに、また止まります。本人は頑張っているのに、なぜか点数につながらない。そういう状態になってしまいます。
逆に、宿題の直し方が変わると、学習は安定します。すべてを完璧にする必要はありません。ただ、間違えた問題をそのままにしない。わからないまま抱え込まない。もう一度、自分の手で解いてみる。この小さな積み重ねが、夏以降の大きな差になっていきます。
もちろん、これは生徒本人だけの問題ではありません。私たちも、宿題を出して終わりにしてはいけないと感じています。宿題をやってきたかどうかだけでなく、どこで止まっているのか、直し方が甘くなっていないか、一人で抱え込んでいないか。そこまで見ていく必要があります。
6月は、結果だけを見て判断するには少し早い時期です。だからこそ、結果に出る前の小さな変化を見ていきたいと思います。表情、ノート、質問の回数、宿題の直し方。そうしたところに、その子の今の状態は出てきます。
ご家庭でも、点数だけでなく、ささいな様子の変化に目を向けていただければと思います。
最近、疲れていないか。宿題を終わらせるだけになっていないか。わからないことを、一人で抱え込んでいないか。 そうした声がけだけで、子どもはずいぶん楽になることがあります。新しい環境に慣れてきた今だからこそ、一度、自分の学習の進め方を見直してみてください。私たちも、教室での小さな変化を見逃さず、早めに声をかけていきたいと思います。
今月の教育アドバイス
学びて時に之を習う、亦説ばしからずや。
(学んだことを折にふれて復習し、身につけていくことは、なんと喜ばしいことだろう。) (孔子『論語』学而第一)
