「できる自分」を信じよう!

Trust yourself. You can do it!

 できないという誤った思い込みが、君をできなくさせている。
 現在の状況を分析して、できない、とか、わからない、とか、よく人は言うけれど、ほとんどの場合、その一言が学習に対する強いブレーキになってしまっている。
 その代表例は、アルプスの少女ハイジだ。
 現代であれば、ハイジは、難読症と診断されてしまうかもしれない。少なくとも、クララの祖母が来るまでのあいだ、クララの家庭教師はそう判断していた。
 クララの祖母がハイジに絵本を渡そうとすると、家庭教師は叫んだ。「絵本ですって! マダム、あの子は投げ出すだけです! 彼女は本を引き裂くでしょう。アルファベットを読むことを身につけられないのです!」
「試してみるべきでしょ!」祖母は、きっぱりと答えた。祖母がハイジに絵本を手渡すと、ハイジは絵を見て、泣き始めた。その絵がハイジに故郷を思い出させたからである。
「泣かないで、ハイジ、涙の理由はわかるわ。涙をとめて、目を拭いて。この絵のお話を知りたい? この絵のお話をしましょうか?」すすり上げながら、ハイジがうなづいたので、「よかった。泣き止んだわね。ところで、先生からなにを学んだの? あなたは読むことができるの?」
 頭を振りながら、ハイジはつぶやいた。「できないの。不可能だって、知っているわ」
「不可能!」祖母はびっくりした。「なぜ、不可能なの?」
「なぜなら、できないから! それはよくわかっている。ペーターが私にそういったから! 彼は何年も努力した。そうして、できないってことがわかったの」
「まあまあ。ペーターを信頼しているのね。それはいいことよ。でも、私のことも信じて! この絵のお話を知りたいと思わない?」
「もちろんよ! 少しでも読めるなら、もちろん!」
「小さな意欲と集中があれば、じゅうぶん! 実際、読むことを身につけることは難しいことじゃない。すぐにわかるわ」
 祖母はさっそく取りかかって、一語一語、示していった。
 数日が過ぎて、ハイジは変わった。祖母の前で、家庭教師はうなだれて、認めた。
「この一週間のあいだに、私がかつて絶望していたこと(ハイジが読めるようになること)が起きて、奇跡がまだ続いているように思います」
 ハイジの学習をストップしていたのは、ペーターの発言による思い込みのせいであった。つまり、ハイジの学習の問題は、ハイジの「心」であって、能力の問題ではなかった。
 君にも、ちょっとわからなかったり、できなかったりしただけで、すぐに「不可能!」といってしまう悪い癖がついていないだろうか。できる、と思えば、できるようになるし、できない、と思い込めば、できないままだ。現状とは、あくまで現時点の状況で、いくらでも変わるものである。だから、「できない⇒できる」「わからない⇒わかる」「成績が悪い⇒成績が良い」が、君の本来の姿なのだ。
 さあ、「できる自分」を信じて、積極的に学んでいこう。

 ※ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』を参照しています。

学院長 筒井保明