「テスト」に合格する!

Pass the test! Pass the exam!

 「テスト」と聞くと、顔をしかめたり、身を震わせたりする生徒がいる。テストに慣れていないと、どうしても不安になるので、「どうしよう。ぜんぜん勉強してないよ」とうろたえてしまう。小学生でも、中学生でも、高校生でも、テストをいやがる生徒のほうが、断然、多い。
 でも、たんにテストといっても、人生を左右するような重要なものから、日ごろの取り組みを確認する気軽なものまで、さまざまなテストがあるから、ただ「テスト」といわれただけで驚くのは、慌て者でしかないだろう。
 本当に重要なテストのためにも、みんなはテストに慣れておいたほうがいい。
 「test(テスト)」という言葉は、「金銀などの貴重な金属を分析するのに使われた小さな容器」を意味する古フランス語のtestや「土器」を意味するラテン語のtestumが元になっている。現在のように、なにかの正確さを見極める「試験」の意味を持つようになったのは、16世紀、「容器の中で金銀を溶かすことによって、金銀の質を確認する」という行為から生じているようだ。
 ついでに英語の話をすれば、比較的に重要度の低い、小さなテストはtestで、比較的に重要度の高い、大きなテストはexam, examinationである。こちらはラテン語のexaminare(重さを量る、考察する)が語源で、やがて「知識をテストする」ということになった。
 テストに合格するためには、日ごろの学習や訓練が重要なことはいうまでもないけれど、テストの当日、これまでに培った実力を発揮できないまま、涙をのむ人たちも少なくない。そのテストが重要なものであればあるほど、なぜか実力を出すことができなくなってしまう。中学受験でも、高校受験でも、大学受験でも、資格試験でも、おなじ現象が起きる。
 実力があるにもかかわらず失敗してしまうのは、風邪などによる体調不良、強い不安や緊張による思考力の低下などが原因だ。
 スポーツ選手やアーティストが圧倒的な練習量をこなすのは、技量を磨くだけではなく、試合や本番で緊張しないためでもある。もし試合会場で選手が緊張してしまったら、身体が動かずに負けてしまうかもしれない。もし舞台でアーティストが緊張してしまったら、頭が働かずに失敗してしまうかもしれない。だから、リラックスした状態で試合や本番に臨めるように、徹底的に慣れるまで練習をくりかえす。
 受験生であれば、問題集に載っている小さなテストから、検定や模擬試験のような大きなテストまで、できるだけたくさん挑戦して、テストされること自体に慣れておくことが必要だろう。
 なにごとも、最初は意識して、なんどもくりかえして取り組んでいけば、やがて慣れてくる。「慣れる」というのは、ある行為を自然におこなえるようになる、ということだ。手工業の職人や料理人の世界では、「腕が上がる」という。なんどもくりかえすことを「腕を磨く」、上手になることを「腕が立つ」、やってみせることを「腕を振るう」。職人や料理人の世界は、「腕前」である。
 腕を磨くのも、学習も、練習も、秘訣はおなじだ。
 まずリラックスしてから始めること。
 「できる」と信じて、明るい気持ちで取り組むこと。
 まちがえは記憶にとって重要なので、まちがえても心配しないこと。(ただし、そのままにしないこと)
 そして、自然にできるようになるまで、くりかえすこと。
 腕を磨けば、かならず腕が上がるように、くりかえし学習すれば、かならずできるようになる。
 「テスト」なんて、ぜんぜん怖くない! 「やるぞ」という前向きな気持ちで、どんなテストでも平気になってくれば、君の実力はまちがいなく上がっているはずだ。

山手学院 学院長 筒井 保明