“環境”と“習慣”が“未来の君”をつくる!
Your Environment and Habits Make Your Future Self!
「ぼくは、意志力がとても弱いんです。寝る前に学習すれば、しっかり定着すると、頭ではわかっているんですが、どうしてもスマホを操作して楽しんでから寝ることになってしまいます。あいかわらずテストの結果は悪いし…。ぼくは、志望校に合格できるでしょうか?」
まじめな生徒から相談されたものの、答えをごまかすことはできないので、
「現状では、合格はむずかしい。夜更かしをしているうえに、電子機器のブルーライトで睡眠も浅くなっている。メラトニンも成長ホルモンも分泌されないから、頭の調子も体の具合も悪くなっていくだろう。目標を意識して、少しでも行動を起こせば、学習できないはずはないのだが…」
生徒は悲しげな顔をして、
「ぼくには意志力がないんです。先生、どうしたらいいんでしょう?」
意志力というのは、シェークスピアの英語を借りれば、Will Power。Willというのは、「やるぞ」という強い気持ちを表している。だから、Will Powerというのは、「やるぞ」という気持ちによる力のことだ。
ひとが自分の目標を意識して、少しでも行動を起こせば、そこに「意志力」が生まれる。よく使われる言葉でいえば、モチベーションである。モチベーションを維持する方法は、「すぐに行動すること」だから、この生徒の場合、寝る前であっても、スマホを操作するのではなく、すぐに学習に取り組めば、問題は解決する。
そういっても、ひとは生来的に目の前の誘惑に弱い。ことわざにあるとおり、「朱に交われば赤くなる」だ。「ひとは容易に他人の影響を受けてしまうから、いい友だちを選びなさい」という教えだけれど、じつは、他人に限らず、ひとは自分の身の回りにある、あらゆるものから容易に影響を受けてしまう。だれでも、環境から強い影響を受け、気をつけないと環境にコントロールされてしまう。
したがって、この生徒への第一のアドバイスは、「学習できる環境をつくること」「学習できる環境を選ぶこと」だ。
子どもたちの学習環境の重要さを発見したのは最初期のモンテッソーリ(イタリアの教育学者)だけれど、現代でも『Willpower doesn’t work』※(意志力は働かない)というような、環境の重要さに着目した書籍が評判になっている。その序文に「意志力は働かない。正直になろう。君は何千回も人生を改良しようとした。そして、疲れ切って、何千回も元の計画に戻った。悪い習慣を追い出そうと意志力を試した。でも、元の木阿弥だ。(中略)もし人生をコントロールしたいなら、意志力は、君が選ぶ戦略ではない。(中略)君が必要とするのは、君の環境をつくり、コントロールすることだ」
この本には、自分の環境を作り、環境をコントロールする方法がいくつも書かれている。
でも、この本を読むまでもなく、君はやるべきことがわかっているはずだ。
まず自分の目標を意識して、目標達成に「必要なこと」と「不必要なこと」を見分ける。つぎに「不必要なこと」をできるかぎり自分から遠ざけてしまう。そして、「必要なこと」を自分の身の回りに置く。そうすれば、自分の目標を意識したとき、すぐに行動に移すことができる。この「目標を意識したとき、すぐに行動する」が君の習慣になったとき、君は自分の目標にむかって、確実に前進できるようになっている。
この夏、“できる自分”を実現しよう!
※WILLPOWER DOESN’T WORK 2018 by Benjamin hardy (Hachette Books)
山手学院 学院長 筒井 保明