英語なんか、こわくない!
Who's Afraid of the English Language?
英語が苦手? 英語が怖い?
ひとは誰でも言語習得能力を備えている。だから、もし君が英語を苦手にしているとしたら、学習不足か、学習方法をまちがえているか、あるいは、苦手意識そのものが原因なのだ。
さて、この図は、ブーバ(Bouba)とキキ(Kiki)であるが、どちらがブーバで、どちらがキキであろうか。君のセンスを使って、指名してみよう。まわりに誰かいたら、ついでに、「どちらがブーバで、どちらがキキだろう?」と聞いてみてほしい。(答えは、最後に載せておく)
統計によると、母語に関係なく、どの国の人でも、95%~98%の確率で、ブーバとキキを指名できるそうだ。
わたしは、スペンサー・ケリー博士の『言語とマインド』(Language and the Mind)という講義ビデオでこれを知った。ケリー博士の講義はかなりおもしろくて、徹夜をして見てしまった。ケリー博士は日本語を学習したことがあり、「日本人はRとLの発音をうまく聞き分けることができないが、ぼくだって、居て(ite)Stay、と、行って(itte)go、の発音をうまく聞き分けることができなかった」と話していた。
言語のセンスは、英語に限ったものではない。母語の日本語であっても、英語であっても、他の国の言語であっても、頭を柔らかくして言語感覚に忠実になれば、根本はおなじである。つまり、英語を得意にしたいならば、根本に戻って学習することだ。
ひとは誰でも、音声として言語を習得する。音声言語が先で、文字言語はその後である。だから、英語の習得も、「聞く→話す→読む→書く」の順で学習することになる。英語が苦手な生徒の多くは、英語を聞くことがあまりに少ない。そして、発語することがあまりに少ない。母語の日本語でも、聞いた言葉をまねて話して身につけたのだ。英語もおなじようにすれば身につけることができるのに、多くの日本人の学習者は、文字を見て、読んで、書いて覚えようとしてしまう。
君が英語を得意にしたいならば、まず注意深く聞くこと! そして、聞いた言葉や文を発語すること! 英語の学習のスタートは、ここからである。
先に挙げたブーバとキキのように、音声と意味に関連性があることを、サウンド・シンボリズム(音象徴)という。日本語では、擬声語・擬音語・擬態語に代表されるものだ。
ケリー博士は、S音の例として、太陽を挙げている。英語では、sunサン、フランス語では、soleilソレイユ、スペイン語では、solソル、サンスクリット語では、suryaスルヤ、タミール語では、sooriyanスリヤン、みなS音を使っている。ほかにも類例はあるはずだ、とケリー博士がいっていたので、ちょっと考えてみた。「太陽」は中国語、「ひ」は日本語。どちらも輝くときには、「燦燦」「さんたり」で、S音である。ひとの言語のセンスは、ユニバーサルにつながっているのだろう。もし宇宙人が宇宙語を話したとしても、わたしたちは必ず理解できるようになる。なぜなら、言語の本質は他者に伝えようとする働きであり、宇宙人があきらめないかぎり、わたしたちはその仕組みに気づくだろうからだ。
音声言語として英語を受容できれば、英語はけっして怖いものではない。
さあ、英語のリスニングから始めよう。
※左側がキキ、右側がブーバ。
山手学院 学院長 筒井 保明