学習速度を上げる

Speed Learning

 誰にでも時間は平等に与えられている、という人がいる。誰でも一日の持ち時間は24 時間ということが根拠だろうけれど、本当だろうか?
 二人の人を並べて、静止した状態で時間を計るならば、なるほど同じ24 時間である。
 しかし、人は動く。動く速度も、考える速度も、仕事をする速度も、勉強をする速度も、人によって大きく異なる。地球上を経過する物理的な時間は同じであっても、私たち一人一人が持っている時間は、実質的にずいぶん違うのではなかろうか。
 一人の観察者から見て、静止した人の持つ時間ととても速く動く人の持つ時間は、特殊相対性理論では、 によって異なる。t′は、ある速度を持って動く人の時間、t は静止状態の時間、v は動く人の速度、c は光速で秒速30 万キロメートル。変数はv である。静止した人の速度は0であるから、1時間(3600 秒)はそのまま1時間である。もし君が光速の半分の秒速15 万キロメートルで動くとしたら、ある観察者から見て、君の時計は、1時間ではなく、52 分を指している。光速の10 分の9で動くとしたら、君の時計は26 分を指している。つまり、速く動けば動くほど、時間が縮むのだ。
 もちろん、地球上で生活する以上、光速に近づいて動くことなどないので、身体的な時間は変わらない。しかし、頭(脳)の中の時間はどうだろうか? 直感や閃きは、膨大な情報を瞬時に処理した結果だから、ものすごい速度で頭が働いたはずだ。学習は、声や手を使うけれども、本質的には脳の情報処理である。だから、速度を上げることはできる。学習は、「習うより慣れよ」で、慣れれば慣れるほど、速くなることを君も実感したことがあるだろう。(計算練習による速算や読み取り練習による速読など)学習速度が速くなれば、脳のなかの時間は縮む。つまり、同じ1 時間でも、断然、学習量が多くなるのだ。
 では、実際に、学習速度を上げるためのトレーニングをしてみよう。今回は、社会科の教科書を使う。

  1. リラックスして、教科書を読む。(一冊丸ごとでもいいし、各章ごとでもいい)読み終わったら、読み終わるまでにかかった時間を記録する。
  2. もう一度、教科書を読む。(当日でもいいし、別の日でもよい)今回は、意識して速く読む。読み終わったら、かかった時間を記録する。
  3. もう一度、教科書を読む。意識して速く読む。時間を記録する。(この3 回目で、すでに最初より速く読めるようになっているはずだ)
  4. もう一度、教科書を読む。意識して、できるだけ速く読む。時間を記録する。(読後に、問題集に取り組んでおくと、さらに効果的だ)これを何日かかけて、10 回以上繰り返す。
 10 回目を超えるころには、最初と比べものにならないくらい速く読めるようになっている。
 まず繰り返して文章を読んでいると、文字の認識力が高まるので、読む速度が速くなる。また、社会科の用語が定着してくるので、知らない用語で止まることが減り、読む速度が速くなる。また、部分によっては記憶してしまうので、先の予測ができ、さらに速くなる。定着した知識が増えれば増えるほど、速度に拍車がかかる。一字一句とばさずに速く読めるということは、書かれている内容を自分のものにしていることの証拠でもある。(問題集を解いてみよう!)
 専門家が専門分野の書籍をものすごい速度で読むことができるのは、定着している知識が多いからである。その分野、その教科が得意になればなるほど、学習速度は速くなる。
 いちど速く学ぶことを体得してしまうと、どの教科にも応用が利く。ぜひ実行してほしい。

学院長 筒井保明