リラックスして、集中しよう!

Relaxation and Concentration

 2月26日(金)は、埼玉県公立高校の入試日だ。 いよいよ緊張が増してくるだろうけれど、過度の緊張は不安や失敗を招くから、君は、知らず知らずのうちに君を縛っている「緊張」をまず解いておかなければならない。
 そのためには、入試会場に早め(開門時間)に出向き、その会場の雰囲気になじんでおく必要がある。静かに呼吸しながら、ゆっくりと周囲を見回せばよい。すると、入場したときには気づかなかったものが見えてくるだろう。これで、少し緊張が解け始める。
 席についたら、静かに息を吐きながら、肩の力を抜いていく。肩の力が抜けた状態になったら、君は、リラックスできている。
 たったこれだけでも、君は、自分の力を十分に発揮できる状態になっているから、つぎは、試験が始まると同時に、集中して問題に取り組むだけだ。5教科すべての学力検査が終わるまで、振り返ってはいけない。休み時間は、リラックスして、つぎの学力検査に備えるのだ。
 ところで、「リラックスして、集中すること」を仏教用語で「禅」とか「禅定」という。お釈迦様でも、阿弥陀様でも、観音様でも、座禅を組んでいる仏像を見てみよう。どの仏様もみな肩に力が入っていないことがわかるだろう。ちなみに縁起物のまるいだるまさんは、中国禅宗の開祖といわれる達磨(ボーディダルマ)が座禅を組むすがたである。
 左の絵は、室町時代の画家である雪舟の国宝『慧可断臂図』(斉年寺)で、座禅を組む人物が達磨祖師、その背後の人物が二祖の慧可。壁に向かって座禅する達磨に教えを乞うために慧可は前腕を断って決意を示した、という故事に基づいて描かれている。
 『無門関』という本に「達磨安心」という有名な部分があるので、わかりやすく訳してみよう。
 達磨は、壁に向かって座っていた。慧可は雪のなかに立ち、前腕を断ち、
「わたしの心はいまだに不安です。先生、安心をください」といった。
「君の心を持ってきなさい。君に安心を与えよう」と達磨はいった。
「わたしの心がどこにあるのかわかりません」と慧可はいった。
「なんだ、もう安心だ!」と達磨はいった。
 君も心を探してみればわかるだろうけど、心は探しても見つからない。探しても見つからない心なら、安心を必要とするような心はない。とうぜん、安心も必要ないから、心が不安でも、なんにも問題がない。つまり、安心じゃないか。
 というのが、達磨の答えだと思う。
 心は脳の働きであり、その心を働かせているのは、じつは慧可であり、わたしであり、君なのだ。
 もし入試会場で不安になったら、ゆっくり呼吸して、肩の力を抜いてみよう。
 不安な心が消えて、自然に心が落ち着いてくるだろう。
 不安は、無意識の緊張感が生み出しているものにすぎない。
 入試会場では、まず緊張を解き、心が落ち着いた状態をつくり、開始の合図とともに、集中して学力検査に取り組もう。

山手学院 学院長 筒井 保明