やろうと思っているのに、やれない。
やめようと思っているのに、やめられない。
どうしたらいいのか?

I want to do it but I can’t! I want to stop it but I can’t! What should I do?


 定期テストの日が近づいてくる。君は、しっかりと学習しようと誓う。
 ところが、いざ机に向かってみると、自然とスマートフォンに手が伸びて、ゲームやメールやラインにたくさんの時間を費やしてしまう。あるいは、テレビやユーチューブを見続けてしまう。気がつくと、すでに就寝時間を過ぎている!
 たしかに、君は、しっかりと学習しようと思った。でも、できなかった。頭のどこかで、ゲームやメールやラインやテレビやユーチューブをやめて、学習しようと思っていたはずなのに、いつのまにか、時間は過ぎ去っていた。
 スマートフォンやゲームやテレビなどは、学習や練習よりも「はるかにお手軽なよろこび」である。気軽に即座にできることは、すぐに「即席のよろこび」を与えてくれる。ひとは本質的にめんどうなことが嫌いだから、学習や練習と違って、ほとんど準備が要らない娯楽は、ひとを容易に誘惑することができる。即席の刺激は、即席のよろこびをもたらす。価値の有無ではなく、君の脳が即席の刺激を本当のよろこびと錯覚してしまうのだ。
 技術の進歩によって、わたしたちは、たやすくデジタル・テクノロジーに支配されるようになっている。電車のなかのスマートフォン使用率を見れば、一目瞭然であろう。
 じつは、お菓子やジャンクフードやタバコやお酒をやめられないのも、おなじ仕組みである。お手軽だから、自然と手が伸びてしまう。このとき、脳内にドーパミンというホルモンが分泌されている。このドーパミンが「即席のよろこび」の正体だ。そして、おなじ行為をくりかえしていると、その対象にちょっと触れただけでも脳内にドーパミンが分泌されるようになる。これが「やめたいけれど、やめられない」という仕組みなのだ。
 だから、やめたいと思っていることは、目や手の届かないところに遠ざけて、接しないようにするしかない。君が学習や練習に集中したいなら、君を誘惑する対象を断固としてシャットアウトするのだ。
 そして、君を誘惑する対象に接することをしばらく我慢していれば、だんだんと「やらないでも平気」になってくる。君の目的や目標は、君を誘惑する対象よりも、君にとって大事なはずだから、君は学習や練習に励むことができるようになる。
 では、やろうと思っているのに、やれない場合は、どうしたらいいのか?
 これは、「めんどうだ」という気持ちが原因だ。脳内にドーパミンが分泌されないので、やる気になれないのだが、ドーパミンは行動を起こすことによっても分泌されるので、いやいやでも取りかかってしまうのが克服の方法である。
 学習や練習を習慣化するためには、①息を吐きながら、からだの余分な力を抜く。②顔の表情をゆるめて、少しうれしそうな微笑を浮かべる。③十分にリラックスしてから、学習に取りかかる。④目をつぶって休憩する。
 ①~④を1 セットとして、任意の時間(君が持続できると考える時間)、何度か繰り返す。また、毎日、1 セットでも繰り返す。すると、やがて学習や練習のことを意識しただけで、やる気(ドーパミン)が出てくるようになる。やる気があれば、必ずできるようになるのだ。
 さあ、やってみよう。

山手学院 学院長 筒井 保明