その日をつかめ!

Seize the Day

 君はその日に近づいていく。いよいよ試験に臨むことになる。
 未来に向かうのは君であって、その日をつかむのは君なのだ。
 「その日をつかめ」Seize the Dayという言葉は、いろいろな状況で使われるので、そのときによって意味は異なるけれど、試験に臨んでいるその時こそ、君は「その日」をつかむのだ。
 1976年にノーベル文学賞を受賞したアメリカの作家ソウル・ベローは、小説の中で、「現在のこの瞬間だよ。過去は役に立たないし、未来は不安に満ちている。でも、現在は現実だ。ここ、と、いま、さ。さあ、その日をつかもうぜ」と登場人物に語らせている。たしかに、目の前に入試問題と答案用紙があるとき、過去も未来もなく、君は、その日をつかむだけである。
 では、その日、その時まで、君はどういう準備をしたらいいのであろうか。学習方法に関してはこれまで何度も書いてきたから、それを読み返してもらいたい。今回は、試験のコンディションづくりである。

1.朝型の生活を守る。
 自分の受験する学校の試験時間を確認して、その時間に意識的に頭を働かせる生活をする。夜型は絶対にだめである。深夜は、睡眠による成長と療養と記憶の時間だ。

2.リラックスしてから、志望校を意識して学習する。
 人は緊張状態では学習を吸収できないし、力をじゅうぶんに発揮できない。学習や試験の前に、いちどリラックスすることが必要だ。ゆっくりと呼吸しながら、肩の力を抜く。そして、リラックスできたら、志望校を意識する。志望校は君の目標であり、目標はやる気を引き起こす。目標に対して取り組もうとすると、脳の中で、やる気分子と呼ばれる神経伝達物質ドーパミンが分泌される。俄然、学習が進むのだ。

3.過去の入試問題に馴染んでおく。
 多くの中学・高校が自校の過去の入試問題を見直して検討し、今年の入試問題を作成する。以前、早稲田の先生方が、「模試なんて見ないし、気にしません。基本的に自校の過去問題を見直して検討し、今年の問題をつくります」と言っていた。豊島岡女子学園の先生方も同じことを言っていた。過去の入試問題に馴染んでおくと、当日、焦らずに済むのだ。焦ると緊張状態を引き起こすので、失敗を誘発してしまう。試験会場に早めにいく。入試問題に馴染んでおく。いずれも緊張しないための方法である。

4.電子機器との接触時間を減らす。
 テレビ、パソコン、ゲーム機、携帯電話などに、長時間、接することは避ける。まず受験学習の時間が削られてしまう。学習後であれば、短期記憶が壊されてしまう。また、就寝前であれば、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑えるので、眠りが浅くなってしまう。さらに電子機器の画面を見つめることは、ビタミンやミネラルをかなり消費するという報告もあるので、体調を崩される恐れもある。

5.食事のバランスに気をつける。
 風邪をひきやすい季節であるから、ビタミンやミネラルが不足しない食事をする必要がある。暴飲暴食は、禁止。肉類など消化に時間がかかるものは継続的に血液を胃腸に集めるので、できれば試験前日の夜には避けたい。豚カツは、試験前ではなく、勝ってから、なのだ。

 当日の体調は、実力の発揮を決定的に左右する。試験は試合とまったく同じなのだ。
 君はその日に近づいていく。その日をつかめ。

学院長 筒井保明