珠算式暗算は脳の働きを高める!③
珠算式暗算の利点については、①②で書きました。
では、西洋の人たちは、どのように暗算をするのでしょうか?
西洋の人たちの暗算は、珠算式暗算にも応用できる部分もあり、数学的興味も尽きません。
アメリカで暗算といえば、知る人ぞ知るアーサー・ベンジャンミン博士(Arthur T. Benjamin, Ph.D.)です。『マス・マジック』という暗算の教材は、世界中で売れました。日本でも販売されましたので、保護者の方の中にも購入した方がいらっしゃるかもしれません。わたしもかつて購入した一人ですが、現在のベンジャミン博士の講義を視聴してみますと、ますます磨きがかかっています。その講義の内容をかいつまんでみましょう。
暗算は、英語でメンタル・マス(Mental Math)、メンタル・カルキュレーション(Mental calculation)といいます。
暗算の第一段階としては、左から右へ(left to right)で計算すること。たとえば、2300+45であれば、自然に左から右へ、2345と計算するように、「左から右へ」がすべての計算において「より自然で速い」というのがベンジャミン博士の主張です。
暗算は、単純化のプロセスであり、たとえば、432×3は、3×400=1200、3×30=90、3×2=6;1200+90+6=1296と、最も大きい数から最も小さい数へと計算します。
54×7であれば、暗算の場合、7×50(350)と概算して、7×4(28)を足します。350+28=378となります。
ベンジャミン博士は、暗算や数字のおもしろさを伝えるために、さまざまな数字のマジックを紹介しながら、暗算の練習をうながします。
九九の9の段では、9×2=18(1+8=9)、9×3=27(2+7=9)、9×4=36(3+6=9)、9×5=45(4+5=9)、9×6=54(5+4=9)、9×7=63(6+3=9)、9×8=72(7+2=9)、9×9=81(8+1=9)で、9の段の答えの数字を足すと、みな9になります。
11のかけ算も数字のマジックで、2桁の数字に11をかけるときには、かけられる数字のまんなかにその数字の合計がはさまります。
たとえば、23×11 → 2+3=5 答えは253。同様に、35×11 → 3+5=8 答えは385。
41×11は? 同じように考えれば、4+1=5ですから、451ですね。
ところで、48×11のように、4+8=12 足した数が二けたになった場合はどうしたらいいでしょうか?
4(12)8の場合は、(12)の1を繰り上げて、528とします。85×11なら、8(13)5ですから、935です。
では、3桁の数字に11をかける場合はどうでしょうか?
たとえば、314×11 → (3+1=4)(1+4=5)→ 314のまんなかの数字に置き換えて3(4)(5)4、答えは3454となります。425×11を同じようにやってみてください。暗算でできましたか? 4675ですね。
ベンジャミン博士は、アメリカ人ですので、00をハンドレッドhundredと読み、たとえば1100という数字は、イレブン・ハンドレッド、3300という数字はサーティ・スリー・ハンドレッドと表現します。わたしは、最初、とまどいました。
ともあれ、メンタル・マス(暗算)は、左から右へ(Left to Right)です。
学院長 筒井保明