Day: June 10, 2020

そろばん通信|2020年7月号

大学入試でかけ算の速さが役立つ!  小学生のみなさんにとって、大学入試はまだまだ先のことですが、そろばんや珠算式暗算に真剣に取り組んでおきますと、大学受験生になったとき、大きなアドバンテージを得ることができます。  山手学院高校部の生徒たちは、東大や京大をはじめとする国公立大学や私立難関大学を目指しています。化学の授業のとき、1⃣のような問題を解く場合、「時間が足りなかったら問4はあきらめるしかないだろう」という前提で、生徒たちに問題を解かせたところ、多くの生徒が時間切れになるなかで、3人の生徒が時間内にスッと終えたので、S先生は驚きました。  S先生の指導経験では、3ケタの数字のかけ算が入りますと、ほとんどの生徒の計算速度が落ち、時間切れになってしまうはずでした。  3人の生徒に「すごいなあ。どうしてそんなに速く計算できるんだ?」と聞きますと、 「珠算式暗算で計算しているんです」  3人ともおなじ返事でした。  みなさんも大学受験で化学を選択した場合には、1⃣のような問題を解くようになります。化学の計算の問題では、ともかく「かけ算が速いこと」が要求されます。かけ算でもたついていますと、あっという間に時間切れになり、合格点がとれなくなってしまいます。  ですから、かけ算が遅い生徒にとっては、時間がかかる計算問題はあきらめるしかありません。  ところが、珠算で鍛えられた3人にとっては、こんな計算問題など、お手のものです。S先生自身、計算は速いほうですが、この3人の速度には歯が立ちません。「そろばん、恐るべし」とS先生はいっています。ちなみに、問4の解き方は、つぎのようになります。  中学受験でも、高校受験でも、大学受験でも、計算を伴う入試問題に対する大きな課題は、計算速度です。なぜなら、入試には制限時間がありますから、計算が遅ければあきらかに不利になります。逆に、速くて正確な計算ができるならば、大きなアドバンテージになります。  この化学の問題を楽々と解く3人の高校生にとっては、むしろ計算で苦労している人たちのほうが不思議に見えるでしょう。計算は速ければ楽ですし、遅ければ苦痛です。  いま、そろばんや珠算式暗算に取り組んでいるみなさんは、ぜひ楽しく学習してください。算数も数学も計算が楽になれば、きっと楽しい教科になります。 学院長 筒井保明

学院長からのメッセージ 2020 July

目標にむかうと、君の時間が始まる。 Your time will begin for your goals.  時間というものは不思議だ。 国語の時間に、対義語として、空間⇔時間と教わるけれど、相対性理論によれば、空間と時間は本質的におなじものだ。  「空間は前後左右上下へと移動できるが、時間は過去から未来へと一方向にしか移動できない」という「時間の矢」の問題があるけれど、『方丈記』(鴨長明)の「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし(川の流れは途絶えないが、もうもとの水ではない。よどみに浮かんでいる水の泡は、消えたり結んだりするが、そのままであることはない)」のとおりで、時間とともに空間も変わる。時間も空間もこの一瞬に存在するだけである。  時間と空間については、古代から現代まで、さまざまな考察や議論や説明が行われている。 たとえば、古代インカ帝国の人びとは、時間と空間をpachaの一語で表していた。つまり、時空というとらえ方である。まるでアインシュタインのようだ。  ギリシャの哲学者たちも、ローマの宗教家たちも、ムスリムの科学者たちも、時間と空間について深く考察した。ドイツの哲学者カントは、時間と空間をアプリオリ(先天的)な概念ととらえたけれど、現代の考え方ではアプリオリなものは存在しない。ライプニッツとニュートンは、空間と時間が絶対的なものであるか関係的なものであるかで議論した。そして、アインシュタインは、特殊相対性理論によって、空間と時間が本質的におなじものであると説いた。  もし興味がわいたならば、できるだけ新しい解説書を読んでほしい。新しい考え方から古い考え方にさかのぼるほうが、わかりやすいからだ。  さて、わたしたちの空間と時間は、宇宙の誕生とともに生まれた。  宇宙という言葉は、空間、時間、物質(情報)の総称だ。  漢字の語義でいえば、「宇」は、「上下四方、空間、世界」を意味する。「宙」は、「古往今来、時間」を意味する。  「宇宙」という漢字自体が「空間と時間」で一つなのである。古代インカ帝国の人びとが空間と時間を一語でpachaとしたのとおなじ発想であろう。  わたしたちは、宇宙(空間と時間)のなかで生きているし、宇宙が生んだ物質(情報)によってつくられている。つまり、わたしたち一人ひとりが宇宙のたまものなのだ。  あまり大きな話ばかりしていると、地球に戻れなくなるので、ここで時計の時間を見てみよう。  地球上の時間はあっという間に過ぎていく。  学習の時間も、宿題の時間も、受験勉強の時間も、いつのまにか過ぎ去ってしまう。  なんとなく毎日を過ごしていると、砂時計の砂のように時間はサラサラと流れてしまう。  ところが、君が、志望校合格などの目標を目指したとき、君は、時間を意識するにちがいない。受験日がはっきりしていれば、受験日までの時間の長さを意識に上げるだろう。現在の自分と未来の自分のあいだの時間が、じつは、君の時間である。  時間をムダにしたくないのなら、自分の目標を意識することが必要だ。目標を意識すれば、目標を達成するために時間を使いたくなる。そして、実際に目標に向かったとき、君の時間が始まるのだ。 学院長 筒井保明