スマイルで学力UP!

Smile makes you stronger.

 入試の最大の敵の一つが、緊張である。不安に縛られてしまうと、自分が持っている力を発揮することができなくなってしまう。緊張を解く呼吸法を教えたけれど、ある男子が「ゆっくり呼吸しながら、肩の力を抜こうとしても、緊張で体がこわばります。どうしたらいいでしょうか」と相談に来たので、とっておきの秘伝を教えた。
「君は、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いたモナ・リザか、広隆寺の弥勒菩薩像を思い浮かべることができるかな。どちらも美術の教科書に載っていると思うけど。どうかな」
「モナ・リザは美術の教科書に載っているので、わかります」
「そうか。それなら、美術の教科書を開いて、なんどもモナ・リザの絵を見る。そして、学習前でも、テスト前でも、なにかする前に、モナ・リザの顔を思い浮かべて、おなじような表情をつくる。モナ・リザの微笑を自分の顔で再現するんだ。同時に、モナ・リザのように肩の力を抜いて、右手を左手に添えるポーズをとるのもいいね。さいわい、マスクをしているから、恥ずかしがらずに、どこでもスマイルの練習ができるだろう」
「練習すると、どうなりますか?」
「モナ・リザの微笑を浮かべているかぎり、緊張することはない。いやなことがあっても、ムリしてモナ・リザの微笑をつくると、いやな気分になれないから不思議だ。また、モナ・リザの微笑を浮かべて学習すると、学習効果もまちがいなくアップするよ。頭がよくはたらくようになる」
「本当ですか?」
「もちろん。やってみればわかる」
 楽しければ笑顔になり、苦しければしかめっ面になり、悲しければ泣き顔になるように、感情や思考が顔の表情としてあらわれることは経験的な事実である。だから、心の内面が、表情などの外面を決定するのだと考えられてきた。
 ところが、演劇において、怒りや悲しみの演技、喜びや楽しさの演技をしていると、ほんとうに腹が立ってきたり、悲しくなってきたり、うれしくなってきたり、楽しくなってきたりする。迫真の演技で、顔の表情が演者の感情を変化させるのだ。
 もし、君が、モナ・リザの微笑や弥勒菩薩の微笑を自分の顔に浮かべることができるなら(つまり、演じることができるなら)、君の心の状態はモナ・リザや弥勒菩薩の心の状態に近づいていく。なんと、君の微笑が、落ち着いた、穏やかな、リラックスした状態をつくるのだ。
 現在では、外面の表情で、内面の感情や思考をコントロールできることがわかっている。内容が形式を決定するという従来の考え方に加えて、形式もまた内容を決定するということである。
 つらいときでも、ムリして明るい表情をつくっていれば、つらさは薄らいでいく。
 きらいな学習でも、いやな顔をせずに、微笑を浮かべて学んでいれば、だんだん楽しくなってくる。
 緊張する場面でも、モナ・リザのようにほほ笑えんでいれば、心が落ち着いてくる。
 とくにスマイルは、君の学力をアップさせる力も持っている。
 さあ、笑顔で新学年の学習に取り組もう。

山手学院 学院長 筒井 保明