五玉の発明
前回、小学生低学年のみなさんを悩ませる「さくらんぼ計算」は、さまざまに考えられる計算の仕方のひとつだということを話しました。
基本として、数をドッツ(dot・dots)としてとらえられるなら、かんたんだよ、ともいいました。
数をドッツとしてとらえるというのは、
1は、●というドット。
2は、●●というドッツ。(英語は複数形になるとdotにsがついてdotsになります)
おなじように、
3は、●●●
4は、●●●●
5は、●●●●●
6は、●●●●●●
7は、●●●●●●●
8は、●●●●●●●●
9は、●●●●●●●●●
10は、●●●●●●●●●●
11は、●●●●●●●●●●+●
12は、●●●●●●●●●●+●●
数字が大きくなるにつれ、●がどんどん増えていきます。もともとの数字のもとは、●に象徴されるなにかの物体です。●があらわすものは、🍎かもしれないし、🍊かもしれないし、🐶かもしれないし、🌳もしれません。1000という数字をあらわすのに、数字がなかったら、●を1000個、書かなければなりませんね。数字や算数は、計算の便利のために生まれたものです。
さくらんぼ計算というのは、8+7の場合、●●●●●●●●+●●●●●●●ということであり、ひとつずつ数えるのがめんどうなので、一けた、くりあがる10(●●●●●●●●●●)をつくって、のこりの5(●●●●●)を足し、15という答えを出すやり方です。さくらんぼ計算では、8(●●●●●●●●)+7(●●●●●●●)を8(●●●●●●●●)+2(●●)+5(●●●●●)=10+5=15と考えるので、なんだかめんどうに感じるのです。
でも、このやり方は、そろばんに似ていませんか?
もし、そろばんに五玉がなくて、一玉が9個だったら、さくらんぼ計算とおなじような考えかたをするのではないでしょうか。
でも、五玉がないそろばんは、幅が大きくなりますから持ち運びにも不便ですし、指を動かす回数もずいぶん増えてしまいます。
そこで、知恵のある誰かが、五玉を発明したわけです。
こんど、そろばんの練習をするとき、もし五玉がなかったら、と考えてみてください。五玉を考えた人は偉いなあ、と思うのではないでしょうか。
十進法を使用するわたしたちにとっては、現在のそろばんはとても効率的な形になっています。梁の上側に1つの五玉、梁の下側に4つの一玉という形です。
ところで、わたしが持っているそろばんは、梁の上側に2つの玉、梁の下側に5つの玉になっているものです。中国の尺貫法では1斤が16両と定められているので、16進法の計算ができるためだそうです。
また、コンピューターに使われる2進法の計算をするために、五玉だけの算盤もあるようです。
とてもおもしろいですね。
学院長 筒井保明