Author: 八木雅彦

埼玉県入試情報

【入試情報】埼玉県公立高校入試 志願先変更2日目の概況(速報)

 志願先変更期間の2日目が終了し、「彩の国 さいたま公立高校ナビゲーション」に最新の出願状況データが19:00より公表されています。  埼玉県教育委員会の公式発表前になりますが、上記サイトのデータをもとに、概況をお伝えします。  なお、県教委の公式発表は、2月22日14:00頃を予定しています。 志願先変更後の志願者数と倍率 《普通科》  30,025人 1.13倍 《専門学科》   7,665人 0.98倍 《総合学科》   1,615人 0.95倍   ○普通科 1.50倍以上の高校(6校)  ※( )内は志願先変更前の倍率。  市立浦和  普通科    1.90倍(1.99倍)  川口市立  普通科    1.73倍(1.81倍)  川越南   普通科    1.67倍(1.77倍)  市立川越  普通科    1.64倍(1.64倍)  大宮    普通科    1.51倍(1.57倍)  川口市立  スポーツ科学 1.50倍(1.48倍) ○専門学科 1.50倍以上の高校(11校)  ※( )内は志願先変更前の倍率。  大宮    理数科    2.35倍(2.68倍)  市立大宮北 理数科    2.35倍(2.43倍)  川口市立  理数科    2.08倍(2.05倍)  越谷北   理数科    1.75倍(1.75倍)  松山    理数科    1.75倍(1.78倍)  所沢北   理数科    1.73倍(1.80倍)  浦和商業  情報処理科  1.60倍(1.61倍)  久喜工業  情報技術科  1.60倍(1.73倍)  市立川越  国際経済科  1.60倍(1.66倍)  越谷南   外国語科   1.53倍(1.58倍)  大宮光陵  美術科    1.50倍(1.53倍) ○出願2日目より志願者が20人以上減った高校(普通科)  川越南    普通科  632人 → 599人(-33人)  県立浦和   普通科  512人 → 480人(-32人)  豊岡     普通科  390人 → 362人(-28人)  浦和第一女子 普通科  521人 → 495人(-26人)  坂戸西    普通科  386人 → 360人(-26人)  草加東    普通科  381人 → 358人(-23人)  川口市立   普通科  507人 […]

私立高校個別相談会を開催します

山手学院主催 私立高校個別相談会 (山手学院の塾生を対象とした個別相談会です) ●実施日 11月22日(日) ●会場 山手学院川越本部校・山手学院川越西口校・山手日本語学校 ●効率よく個別相談を受けていただけます  山手学院では毎年11月に個別相談会を実施しています。私立高校から入試担当の先生方にお集まりいただくことで、1日に複数の高校の個別相談を受けることができます。11月までの会場テストの結果をもとに、最新の成績資料で相談することができます。山手学院の個別相談会は高校ごとに教室を分けて実施します。あらかじめ生徒一人ひとりのタイムテーブルを組むため、待ち時間も少なく、1日にたくさんの学校の個別相談を効率よく受けることが可能です。(今年は3校までと限定させていただきます) ※今年は参加高校を減らし、生徒保護者様一組当たりの相談件数も3校に限定する一方で、開催場所を3会場に増やしています。そうすることで会場が密になることを避けていますので、ご不便をおかけしますが、ご了承ください。 ●完全予約制  あらかじめ相談希望の高校のお申し込みをしていただき、個人登録する形をとっています。登録確認のため、事前に相談時刻の記載された整理券(登録確認カード)を発行し、当日お持ちいただきます。 ●学校主催の個別相談と同じ登録内容  山手学院の個別相談会での相談内容は、学校主催の個別相談会と同様に扱われます。相談結果は各高校が登録します。 ●参加校(50音順) 大宮開成高校、川越東高校、狭山ヶ丘高校、淑徳与野高校、城西大学付属川越高校、 城北埼玉高校、西武学園文理高校、西武台高校、聖望学園高校、東京農業大学第三高校、 星野高校、細田学園高校、山村学園高校、山村国際高校(五十音順)

授業再開について

 山手学院では6月1日(月)から通塾での授業を再開いたします。  再開後の時間割等については、各校舎よりご連絡をさせていただきます。  再開後も校舎では今まで通り、マスクの着用、消毒、換気などの感染予防対策に努めてまいりますので、ご家庭でのご協力も何卒よろしくお願いいたします。  生徒の皆さんには、マスクを着用しての通塾をお願いいたします。また、体温が37.5度以上ある場合や、咳やくしゃみなどの症状がある場合には、授業への参加を見合わせていただきますようお願いいたします。  なお、今後情勢の変化に応じて変更が生じる場合もございますので、予めご了承ください。

学院長からのメッセージ 2020 June

世界は人の努力でよりよくなる。 The world can be made better by human effort.  埼玉県の山林を歩いていると、杉と松の林が多いことに気づくだろう。針葉樹で圧倒的に多いのが杉で、その次が扁柏(ヒノキ)、赤松と続く。  むかしの日本の造林方法は単純で、造林しようとする場所の草を刈りはらって、杉やヒノキを植えていくというやり方であった。しかし、この方法がどこにでも通用するわけではなかった。  埼玉県久喜市で生まれた本多静六(1866-1952)少年は、窮乏生活のなか、農繁期は農作業をし、農閑期は上京して書生として勉学に励んだ。  1884年に東京大学(当時は東京山林学校)に入学し、首席で卒業。  林学を学ぶためにドイツに留学し、ミュンヘン大学で博士の学位を取得して帰国。  東京大学の教授となり、造園家として、東京都の日比谷公園や明治神宮、埼玉県の羊山公園や大宮公園や森林公園などの設計や改良に携わった。  ちなみに埼玉県比企郡嵐山町の嵐山渓谷を中心に「武蔵嵐山」と命名したのも本多静六である。  さて、杉がなかなか育たない場所で、どうやって杉を育てるか。  本多静六は、保護樹という方法をとった。  まず松林を仕立てて、そのあいだに杉を植え込んでいく方法である。つまり、松が杉を保護するのだ。松は育ちの早い木であり、寒冷地でなければ、どこでも育つ。松は保護樹として最適だ。  埼玉県は、海のない、山の多い県なので、ほとんどが赤松。他県の海岸で見かける枝ぶりのいい松は黒松である。  明治維新以降、日本人は、建築土木用として、木繊維用として、薪炭用として、むやみやたらに森林を切り倒してしまった。その結果が、全国各地で起きた洪水の被害であった。  よく茂っている森林であれば、降った雨の四分の一は、枝や葉の上にたまって、その後、次第に蒸発していく。残りの四分の三は、雨が葉から枝、枝から幹に流れて、徐々に地面に落ち、そこにある落ち葉に吸い取られる。本多博士の実験によると、松の落ち葉は、落ち葉の重さの五倍分の水を吸収して保つことができる。松以外の雑木や苔類は七倍~十倍の雨水を貯めることができる。よく茂っている森林があれば、洪水はかんたんには起きない。  森林の役割には、水の貯水や洪水の予防ばかりでなく、気候の調節、水源の涵養、雪崩や津波の防止など、さまざまな働きがある。  この森林を守るために、明治時代の末期から、造林や植樹に力が入れられた。  たとえば、明治36年から愛知県北設楽郡が始めた鴨山の造林は、5年間で、およそ69キロ平方メートルの面積に対して、杉220,883本、ヒノキ80,947本を植え付けている。  花粉症に苦しむ人たちにとっては杉やヒノキは厄介な存在であるかもしれないが、日本の歴史を振り返ると、人々の造林の努力によって杉やヒノキがここまで増えたのだ。  わたしたちが山林を訪ねて、杉やヒノキや松が多いことに気づいたら、その場所は人の手が育てた場所である。けっして自然にできているわけではない。  君たちの身の回りのほとんどのものに人が関わっている。世界は人の努力でよりよくなっている。そして、世界は、いつでも君の努力を待っているのだ。  さあ、しっかり学んでいこう! 学院長 筒井保明

そろばん通信|2020年6月号

そろばんで頭脳をきたえる!  日本で「右脳」という言葉を広めたのは、日本医科大学教授であった品川嘉也博士でしょう。ご本人は、交流があったことから、日本人として初めてノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士の最後の弟子と称していました。『意識と脳』(1982)ほか、多くの著作を読み直してみますと、大胆な、鋭い考察が多く、いまでもじゅうぶんに通用します。  現在では、すべての人に共通して右脳と左脳が分化しているわけではなく、「脳の機能のかたよりとして、左脳で言語をつかさどる人が多く、右脳でイメージをつかさどる人が多い」とします。また、女性よりも男性のほうが脳の分化がはっきりとしているようです。  そろばんが右脳を活性化するという主張の根拠も、じつは品川博士の実験に基づいています。  「右脳のイメージを使うことによって、脳の情報処理速度が飛躍的に上昇すること」を証明する実験に「そろばんの達人たち」が使われたのです。  数字や数学も一種の言語ですから、「九九は数を操作しているのではなく、言語操作にすぎない。つまり、九九の計算は、八十一個の熟語にすぎない」ということです。ですから、筆算は言語操作である、ということになります。計算は言語中枢を使いますので、左脳的ということです。  これに対して、品川博士は、脳波学的に、  「そろばんの達人たちは、計算しているときに言語中枢をほとんど使わず、右脳で計算している。頭のなかにそろばん球のイメージを浮かべて、イメージ操作をしながら右脳による計算をしている」  と主張します。これは珠算式暗算を習っているみなさんなら、当たり前の練習ですね。  品川博士の言葉を借りれば、そろばんの達人たちは、答えを「見ている」のです。  さて、そろばん熟達者のAさんの脳波分析をおこなったところ、達人がかけ算見取り算の暗算をしているとき、ベータ2波(16.5–20Hz, 脳の思考活動の部位に強くあらわれる脳波)が右脳側と右後頭部(視覚野)に強く出ました。  また、達人のBさんが、読み上げ算の暗算をおこなったところ、同様の結果になりました。読み上げ算にもかかわらず、聴覚野に相当する側頭部や言語中枢に強い脳波は出ませんでした。Bさんは、「計算中、ことばとして意識することはなく、言語は浮かんでこない。そろばんの球が浮かんで見える」といっています。この脳波の測定結果から、「そろばんは右脳を活性化する」といわれるようになりました。  たしかに、珠算式暗算はイメージ操作ですから、言語操作はしません。そして、イメージ操作は、言語操作よりも圧倒的に速いのです。  そろばんの達人たちだけでなく、アインシュタインなどに代表される物理学者たちや数学者たちも、イメージを操作して考える傾向が強いのです。数式で考えるわけではなく、イメージで考えて、数式で表現しているといってもいいかもしれません。  そろばんは、みなさんの頭脳をしっかりと鍛えます。  ぜひ楽しくそろばんの練習に取り組んでください。 学院長 筒井保明

生徒・保護者のみなさまへ

各学年の終わりまで、一人ひとりの目標をとことんサポートします  新型コロナウイルスの広がりのために、世界中が混乱しています。  緊急事態宣言以後、小学校・中学校・高校にかぎらず、図書館のような公共施設や学習塾まで、休業要請の対象になっています。小学生や中学生や高校生にとっては、学習をブロックされたような状態かもしれません。  山手学院でも、埼玉県の休業要請により、4月の授業に関しては、8月終わりまでの期間に、やれなかったところやできなかったところは学習時間を設けることとし、生徒たちが通塾できないあいだ、それぞれの状況やご要望に応じて、映像授業の配信、電話やオンラインによる学習相談、Zoomによる1対1の個別指導、感染防止をしたうえでの学習サポートなど、各校舎でできる範囲でおこなっています。また、5月14日に休業要請が緩和されなかった場合を考え、Zoomによるクラス授業を各校舎で準備しています。(今後の状況によっては、対応が変わるかもしれません)  事態がここまでこじれますと、もう一度、「山手学院とはなにか」というところに戻って考えたほうが、今後の対応がはっきりします。  生徒のみなさん一人ひとりの「目標」をとことんサポートするのが山手学院の役割です。実際に目標を達成するのは生徒のみなさん一人ひとりですから、わたしたちにできることはみなさんの目標達成をとことんサポートすることです。  まず、現在の自分の状態を一切気にしないで、自分の本気の目標を考えてください。受験生であれば志望校合格でしょうし、受験生以外であれば、通知表の評定や特定の教科を得意にすることでしょう。学習するにあたって、いつでも目標が先です。現状からかけ離れた目標でもかまいません。なぜなら、本気の目標であるなら、みなさんには達成できる可能性があるからです。そして、その可能性を実現するために山手学院が存在します。  4月、5月の授業に関しては、上記のような対応になりますが、わたしたちが本来やらなければならないことは、みなさんが自分の目標を達成するための学習指導であり進学指導です。新型コロナウイルスの混乱を言い訳にすることなく、各学年の最後まで学習指導・進学指導を徹底します。  くりかえしますが、山手学院は、生徒のみなさん一人ひとりが自分の目標を達成するための学習塾・進学塾です。目標はみなさんの成長とともに変化しますから、現在の正直な気持ちで、高い目標を持っていただければさいわいです。学習に対するみなさんのモチベーションは自分の目標から生まれますし、わたしたちの学習指導・進学指導もみなさんの目標によって具体的になります。  今後、みなさんが自分の目標を達成するために、一人ひとりをサポートすることをお約束いたします。 山手学院 学院長 筒井 保明

学校が休みのあいだに小学生・中学生・受験生のみなさんがやるべきこと

学校が休みのあいだ、君たちがやること (教科書の全体をおおまかにつかんでおくこと) まず意志を持つこと  新型コロナウイルスが広がることによって、世界中が混乱しています。  学校の休校や図書館の休館が続き、もしかしたら君たちの学習も止まっているかもしれません。テレビやゲームやYouTubeの動画などにたくさんの時間を費やしていませんか? 残念ながら、どれも君たちにとっては気楽に見たリ、プレイしたりできる、君たちが受け身になるメディアですから、君たちの学力や能力をほとんど高めることはありません。  学習でも、スポーツでも、芸術でも、取り組むためには自分の意志が必要です。  Where there's a will there's a way. (意志があるところに、道・方法がある)という英語のことわざのとおりで、「やりたい、やるぞ」という意志があるから、進む道があり、達成する方法があるわけです。  君たちの学力や能力を高めるものは、最初に君たちの意志を求めます。  学習でも、スポーツでも、芸術でも、君たちがすすんで能動的に取り組むとき、君たちの学力や能力は高まるのです。 キーワードは、「自分の声」と「全体」  さて、何人かの小学生や中学生から、「教科書が手に入りました。どうしたらいいでしょうか?」という質問がありました。  図書館が閉まっていて本が借りられない状態ですから、目の前の教科書を使う(過年度の教科書でも、新年度の教科書でもかまいません)、とっておきの学習方法を教えましょう。  この学習方法のキーワードは、「自分の声」と「全体」。  まず、人は、音声言語として、言語を身につけます。それも、聞くだけでは足りず、自分の声を発し、自分の声を自分で調整しながら、その言葉を自分のものにします。  ですから、国語が苦手な原因も、英語が苦手な原因も、専門的な用語が多い社会科や理科が苦手な原因も、多くの場合、自分の声を使用していないところにあるのです。(思い当たりませんか?)数学も言語ですから、もしかしたら数学が苦手な遠い原因も、おなじかもしれません。  そこで、自分の声のトレーニングとして、国語でも、社会でも、理科でも、英語でも、教科書を音読します。学ぼうと意識する必要はなく、楽しい読み物を軽く読むような感じで、教科書全体を最後までとおして音読してみましょう。  気をつけなければいけないのは、読めない文字(漢字でも英語でも専門用語でも)は、調べたり、聞いたりして、正しく読めるようにすること! まちがえておぼえてしまうと、あとで直すのに苦労します。  かつて日本の知性といわれた学者がベルリンの壁の崩壊を解説するとき、「本質的に、にんげんは、キジャクですからね」とくりかえしたことがあり、みんなが首をひねりました。横文字をまじえるクセのある学者でしたので、途中で「フラジャイル」と口走ったとき、「ああ、キジャクとは、脆弱(ぜいじゃく)のことか」と、はじめて合点がいきました。名前は伏せますが、日本を代表する知性でも、まちがえておぼえてしまうと、なかなか訂正できないものなのです。  まちがえておぼえないように気をつけながら、まず、音声として言葉をおぼえるようにしてください。もちろん、音声だけでは試験に通用しませんから、音声としておぼえた言葉や用語や英単語を、つぎは、書けるようにします。  「読めることが先。書けることが後」です。これは小学生でも中学生でも共通です。 先に全体に目をとおしておくと、きちんと理解することができる  つぎに、教科書を最後まで読んでしまうことです。  漢字や用語や英単語をまちがえずに読めるなら、おぼえようと意識しないで、国語や社会の教科書、また英語の教科書をまるまる音読・黙読してしまいましょう。学校が始まって、それぞれの教科を学習するとき、まちがいなく理解が速くなります。音読ですと、たしかに時間はかかりますが、自分の声を発して読んでおくだけでも、学校が始まったとき、その効果を実感することができるでしょう。先生の説明を自分の言葉として聞くことができるようになっているからです。(一冊全部に自信がない人は、とりあえず三分の一でも)  じつは、教科書をとおして読んでおくことには、もっと重要な効果があります。  むかしの考え方のまま、学習はレンガを積み上げるように「部分の積み上げ」であると思っている先生が多いのですが、これはまちがいです。たとえば、レンガで教会を作るとして、予想される教会の全体像が見えていないとしたら、はたして教会はできあがるでしょうか。  また、哲学であれば、アリストテレスでも、ニーチェでも、西田幾多郎でも、まず、だれかの一冊を最後まで読んで、おぼろげに全体像をつかみます。そうしてから、何度もくりかえして読みますと、書かれている内容が理解できるようになります。なぜなら、哲学者の頭のなかには思考の全体像(イメージ)があって、その全体像に対して思考(文)を組み上げていくからです。つまり、全体と部分が双方向に働きながら世界ができあがっていますので、一回、読んだだけではわからないのです。  よくできた教科書も、おなじです。教科書の編集作業は、その教科の全体像が先にあり、それぞれのページを集めて一冊の教科書に編集していきます。  ですから、全体をおおざっぱにつかんでから、こまかく学習していくほうが効果的なのです。  そもそも教科書はくりかえして読むように編集されています。参考書というのは、教科書を読むための参考ですから、「教科書をくりかえして読むこと」が先であり、基本です。 1学期に大きな飛躍をしよう!  「自分の声」と「全体」の意義がわかりましたか?  音読も、黙読も、教科書を読みとおすことも、君たちの意志がなければ、1ページもすすみません。ここに書いたことは、学校が始まって、実際の学習に取り組む前の、重要な下準備です。ぜひ、やってみてください。  ところで、もっと重要なことがあります。  受験生であれば志望校を持つことかもしれませんが、学習にも、スポーツにも、芸術にも、自分の目標が必要です。  君たちは、目標にむかって成長します。  目標がなければ、人は前に進むことができません。  もちろん、君たちの成長にしたがって目標も変化しますから、いまの自分が心から実現したいことであれば、どんなものでもいいのです。  君たちの意志があるところに、君たちが進む道があり、目標を達成する方法があります。  君たちの飛躍を期待しています。

学院長からのメッセージ 2020 May

情緒の知恵をきたえよう! Emotional Intelligence Quotient  人は、パニックになったとき、思考力を失ってしまう。新コロナウイルスが引き起こしたパニックは、多くの人びとから、容易に考える力を奪っていった。その証拠の一つとして、しばらくのあいだ、消毒液やマスク、トイレットペーパーやティッシュペーパー、さらに非常用になる食品までが、わたしたちの前から消えた。自分や身内のことで心が占められたとき、人の行動は独善的になる。不必要な買い占めをした人びとは、視野がとても狭くなっていた。  困難なときこそ、知恵が必要だ。(「知恵」という漢字は「知識」knowledgeのほうに意味が近いので、できれば旧漢字で「智慧」wisdomと書きたいが、常用外なので「知恵」)  この場合の知恵は、IQ(知能指数Intelligence Quotient)ではなく、EQ(心の知能指数Emotional Intelligence Quotient)のことだ。  福沢諭吉をはじめとして、明治時代の日本人の造語力はとても高かったけれど、現代の日本人の造語力は高くない。ちなみに、中国語でIQは、智商、智力商数。EQは、情商、情緒智慧、情緒智商。  もし明治時代の日本人が訳語をつくったとすれば、IQは、智力商数、EQは、情緒智力商数、になったのではなかろうか。明治人にとって、「智力」と「情緒智力」のちがいは、人間的価値の重みを決める決定的なちがいであった。福沢諭吉にも、勝海舟にも、西郷隆盛にも、高橋是清にも、「情緒智力」があった。かれらの言動や著作物に触れると、かれらのEQの高さがわかる。  「智力」だけでは、「学習能力」にとどまってしまう。  「情緒」だけでは、「感応能力」にとどまってしまう。  「情緒智力」を発揮することによって、周りの人たちに影響を与えるような大きな仕事ができるのだ。  「情緒」は、やまとことばになおせば、「もののあわれ」である。  平安時代の昔から、「もののあわれ」が人の心の根本になければ、その人に生きがいはない。  生きがいは、人と人との関わりのなかで生まれるものである。だから、人のために涙を流せないような人や、もののあわれを感じることができない人に、生きがいはない。自分のことしか考えない人は、一人ぼっちで砂漠を旅するような人生を送ることになるだろう。  困ったときはお互い様だ。  世の中の助け合いや共生は、IQではできない。世の中の問題を解決するためにはEQが必要なのだ。  では、情緒智力(EQ)はどうやって高めたらいいのだろうか?  小学生も、中学生も、「物語」をたくさん読んで、積極的に世界に関わっていくことである。もともと「物語」を読むことの効用の大きな一つが「情緒の感応能力」を高めることである。  原始的な感情をつかさどっているのは脳の海馬に隣接する偏桃体で、ヘビを見てギャッと飛びのくのも、火事を見て慌てふためくのも、攻撃に対して怒りを燃え上がらせるのも、いらいらしたり、くよくよしたりするのも、偏桃体の働きだ。  ところが、「物語」を読んで感動しているときの情動は、偏桃体の働きではない。脳の前頭前野の眼窩前頭皮質が働いて、他者の心を理解したり、社会的な情動を起こしたりしているのだ。つまり、情緒智力が働いている。  「情緒」や「もののあわれ」は、原始的な感情ではなく、人間を人間らしくしている感情だ。  たくさんの物語を読んで、たくさんのことを体験して、未来をひらく情緒の知恵を身につけよう! 学院長 筒井保明

そろばん通信|2020年5月号

学校が休みのあいだ、君がやるべきこと  新型コロナウイルスのために、世界中が混乱しています。とくにヨーロッパの国々は、歴史的にペストという疫病に苦しめられてきましたので、多くの人たちが強い恐怖を感じているでしょう。  緊急事態によって、学習の機会を失っている子どもたちが世界中にいます。  しかし、学校が休みだからといって、テレビやゲームやユーチューブの動画にたくさんの時間を費やしてしまうのは、自分の可能性の発展を止めてしまうことです。  なぜ、君たちにとって、テレビやゲームやユーチューブの動画は、よくないのでしょうか?  答えは、テレビやゲームやユーチューブの動画は、受け身でもじゅうぶんに楽しめてしまうメディアだからです。受け身で楽しめますから、あっというまに大量の時間が流れてしまいます。そして、受け身であるかぎり、君たちの思考力や創造力が鍛えられることはありません。  視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚のうち、脳では視覚野がいちばん大きいので、テレビやゲームやユーチューブの動画は、わたしたちの脳をかんたんに独占することができます。いいかえれば、わたしたちは、自分の意志を使わずに、いつまでもラクラクと見続けることができます。  いっぽう、音だけのラジオ、文字だけの本、スクラッチなどは、受け身では楽しめないメディアです。ラジオであれば、自分の意志で音や声を聴かなければなりません。意識しないと、聞き逃して、話がわからなくなります。  本はもっとたいへんです。自分で意志をもって読まないかぎり、一ページも読むことはできません。受け身で本を読める人はいないはずです。  スクラッチもおなじです。自分で意志をもってプログラムしないかぎり、なにも始まりませんし、なにも動きません。ゲームは、誰かが組み立てたものをプレイすることですが、スクラッチは自分で組み立ててプレイするものです。自分で組み立てるためには、意志や思考が必要です。  スクラッチを開発したMITのミッチェル・レズニック博士は、ゲームでは育たない創造的思考力を培うためにスクラッチを推進しています。「ゲームに時間を使うなら、スクラッチをやろう!」ということです。  そろばんも、君たちが意志をもって使わないかぎり、そのままですね。そろばんが自分で計算するなんてことは、ありません。  じつは、小学生のみなさんの学力や能力を高めるものは、すべて自分でやらなければならないことばかりです。「読み・書き・そろばん」といいますが、読むことも、書くことも、そろばんの玉を弾くことも、自分の意志を必要としますね。すべて能動的な学習です。  学校が休みのあいだ、君たちがやるべきことは、この能動的な学習です。  小学生の学習の基本は音読ですから、毎日、音読してください。音読することによって、音読された言葉が自分の言葉になっていきます。そして、たくさん読書することです。  また、漢字を覚えたり、文章を書いたりしてください。さらに、絵をかいたり、工作したり、スクラッチしたりしてください。  もちろん、毎日、そろばんを練習してください。暗算に取り組んでいる小学生は暗算も練習してください。  能動的な学習によって、君たちの力はどんどん成長していきます。 学院長 筒井保明

そろばん通信|2020年4月号

珠算式暗算は脳の働きを高める!③  珠算式暗算の利点については、①②で書きました。  では、西洋の人たちは、どのように暗算をするのでしょうか?  西洋の人たちの暗算は、珠算式暗算にも応用できる部分もあり、数学的興味も尽きません。  アメリカで暗算といえば、知る人ぞ知るアーサー・ベンジャンミン博士(Arthur T. Benjamin, Ph.D.)です。『マス・マジック』という暗算の教材は、世界中で売れました。日本でも販売されましたので、保護者の方の中にも購入した方がいらっしゃるかもしれません。わたしもかつて購入した一人ですが、現在のベンジャミン博士の講義を視聴してみますと、ますます磨きがかかっています。その講義の内容をかいつまんでみましょう。  暗算は、英語でメンタル・マス(Mental Math)、メンタル・カルキュレーション(Mental calculation)といいます。  暗算の第一段階としては、左から右へ(left to right)で計算すること。たとえば、2300+45であれば、自然に左から右へ、2345と計算するように、「左から右へ」がすべての計算において「より自然で速い」というのがベンジャミン博士の主張です。  暗算は、単純化のプロセスであり、たとえば、432×3は、3×400=1200、3×30=90、3×2=6;1200+90+6=1296と、最も大きい数から最も小さい数へと計算します。  54×7であれば、暗算の場合、7×50(350)と概算して、7×4(28)を足します。350+28=378となります。  ベンジャミン博士は、暗算や数字のおもしろさを伝えるために、さまざまな数字のマジックを紹介しながら、暗算の練習をうながします。  九九の9の段では、9×2=18(1+8=9)、9×3=27(2+7=9)、9×4=36(3+6=9)、9×5=45(4+5=9)、9×6=54(5+4=9)、9×7=63(6+3=9)、9×8=72(7+2=9)、9×9=81(8+1=9)で、9の段の答えの数字を足すと、みな9になります。  11のかけ算も数字のマジックで、2桁の数字に11をかけるときには、かけられる数字のまんなかにその数字の合計がはさまります。  たとえば、23×11 → 2+3=5 答えは253。同様に、35×11 → 3+5=8 答えは385。  41×11は? 同じように考えれば、4+1=5ですから、451ですね。  ところで、48×11のように、4+8=12 足した数が二けたになった場合はどうしたらいいでしょうか?  4(12)8の場合は、(12)の1を繰り上げて、528とします。85×11なら、8(13)5ですから、935です。  では、3桁の数字に11をかける場合はどうでしょうか?  たとえば、314×11 → (3+1=4)(1+4=5)→ 314のまんなかの数字に置き換えて3(4)(5)4、答えは3454となります。425×11を同じようにやってみてください。暗算でできましたか? 4675ですね。  ベンジャミン博士は、アメリカ人ですので、00をハンドレッドhundredと読み、たとえば1100という数字は、イレブン・ハンドレッド、3300という数字はサーティ・スリー・ハンドレッドと表現します。わたしは、最初、とまどいました。  ともあれ、メンタル・マス(暗算)は、左から右へ(Left to Right)です。 学院長 筒井保明