Year: 2020

所沢西口校【1学期保護者面談】のご案内

 今回の山手学院のコロナ禍対応に関しましてご理解、ご協力をいただき、誠にありがとうございます。緊急事態宣言は解除されましたが、引き続き感染予防を徹底してまいりますので、ご協力のほど、お願いいたします。  所沢西口校では6月15日(月)~7月31日(金)の期間で、保護者面談を実施させていただきます。今年度の入試がどのように行われていくのかが不透明な状況ですが、今後の指導方針のご説明をさせていただくとともに、現在のお子様の学習状況、ご家庭からのご要望など、さまざまな点についてご相談させていただきたいと思います。 面談場所 山手学院 所沢西口校 面談期間 6月15日(月)~7月31日(金)の月曜日~土曜日 実施時間 ①午後1時30分~午後4時30分の間の30分程度      ②中学生の授業終了後の30分程度 山手学院所沢西口校の校舎案内へ戻る

プログラミング通信 | 2020年7月号

学院長あいさつ プログラミングの基本概念を身につけましょう。  「プロジェクト、情熱、共有、プレイを通して、創造的思考をつちかうこと」がMITのミッチェル・レズニック博士の理念です。  わたしたちは、その理念を共有するとともに、QUREOで身につけたことをベースにして、もっと広い世界へ、子どもたち一人ひとりが飛び出していけるようにしたいと考えています。  コンピューター・サイエンスの世界は、コンピューター・サイエンスを開発し発展させてきた英語の世界でもあります。ですから、プログラミングにとっては、英語ができることも必要です。  わたしはcode.orgというサイトをときどき訪れて、プレイします。ボランティアが日本語に翻訳している部分も多いのですが、ビデオ・クリップに登場するゲストも先生も生徒たちも話している言葉は英語ですし、日本語だと対応していないプログラミングもありますから、わたしも英語でプレイしています。  QUREOは日本語になっていますが、プログラミングである以上、ひっくりかえせば英語です。  でも、さらに英語の向こう側には、「概念」があります。「概念」というのは、「脳でとらえられたなにか」、「特定の例から生まれた抽象的、一般的なアイデアやテーマ」のことです。  たとえば、「普段の動きとは違うリズミカルな動き」のイメージが「ダンス」という言葉の概念になるでしょう。日本語であれば、「おどり」ですね。  現在、code.orgには、「ダンスパーティーをコードしよう」というページがあります。英語ではコード(code)ですが、日本語では「プログラム」と翻訳されています。この場合、英語の「コード」と日本語の「プログラム」の概念はおなじです。  ところで、ダンスパーティーを英語でプレイしたあと、日本語に設定してチェックすると、おもしろいことを見つけてしまいました。  きちんとプレイしていた英語では、23種類ある動きが、プレイしていない日本語では半分以下の11種類になっています。ジョン・トラボルタで有名なポーズ(Disco)もありません。手を抜くと、おもしろくならないよ、という注意でしょうか?  英語のみの動きは英語で、日本語になっているものは日本語で、ダンスの動きを並べますと、「Bend、ボディロール、Clap、手を高く上げてたたく、ダブ、Disco、ダブルダウン、ドロップ、フロス、フレッシュ、カンナム、Head+Hips、Hop、Kick、Knee、Kneel、Ole、Reach、Slide、星、Stretch、ディス・オア・ザット、ゾンビ」となります。英語の部分が、まだプレイしていない日本語のものからはカットされています。Head+Hipsは、マリリン・モンローの有名なポーズです。  ともあれ、QUREOをとおして、言葉ではなく、プログラミングの基本概念をしっかりと身につけましょう。概念を身につけていれば、それが英語や他の国の言葉に変わったとしても、直観的に把握することができます。  言語学的な話になりますが、じつは概念が先にあれば、英語や外国語を学ぶことはかんたんです。たとえば、「ずっとくりかえす」と「forever」の動きはおなじですし、「いちどだけ」と「once」の動きは同じです。なぜなら、おなじ概念を日本語と英語であらわしているからです。 学院長 筒井 保明 話題の「GIGAスクール構想」とは?  「GIGAスクール構想」とは、義務教育を受ける児童生徒のために、児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想です。GIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allの略です。単位補助のギガ(データの容量でGB:ギガバイトなどと使われる「ギガ」です)と掛けている部分もあるのでしょう。  Society5.0(※1)時代を生きる子ども達にとって、教育におけるICT「Information and Communication Technology(情報通信技術)」を基盤とした先端技術の活用は必須です。また、変化の激しい時代を生き抜くには従来の一斉教育だけではなく、多様な子ども達を誰一人取り残すことのない、個別最適化された創造性を育む教育の実現が重要であり、ICT教育で次世代の人材を育てる必要があります。これらを持続的に実現させる構想がGIGAスクール構想です。  文部科学省の調査によりますと、今年3月時点での学校現場における学習者用端末の導入台数は児童生徒5.4人に1台程度と、日本の学校ICT環境の整備は遅れており、自治体間の格差も大きいのが現状です。(埼玉県は児童数あたり約9.6人に1台。45位の低さです)  令和時代のスタンダードな学校教育像である「子ども達への公正に個別最適化され創造性を育む教育」の実現には、全国一律のICT環境の整備が急務となっています。  「GIGAスクール構想」による1人1台の端末(PCまたはタブレット)、校内のネットワークが整備されることで、小学生のプログラミング教育もより発展していくことになります。しかしながら、ハード面だけそろっても意味がないのは、想像に難くありません。ソフト面(指導力、使用するソフトウェア・アプリケーション、生徒の意欲など)がしっかりかみ合ってこそ、新時代の教育のあり方といえます。  QUREOはプログラミングの考え方を学ぶ入り口として、とてもよくできているものです。そこで学校で取り扱うであろうScratchの考え方、操作方法(プログラミングの考え方ももちろんですが、マウスなどの使い方も含めて)も学ぶことができます。  また、QUREOとは直接関係はありませんが、授業時間の中で取り組むタイピングについては、今後PCを使う上で打鍵をすることを考えていただければ、必須のものであることは、ご理解いただけると思います。 (※1) 狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会として、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会。

授業再開について

 山手学院では6月1日(月)から通塾での授業を再開いたします。  再開後の時間割等については、各校舎よりご連絡をさせていただきます。  再開後も校舎では今まで通り、マスクの着用、消毒、換気などの感染予防対策に努めてまいりますので、ご家庭でのご協力も何卒よろしくお願いいたします。  生徒の皆さんには、マスクを着用しての通塾をお願いいたします。また、体温が37.5度以上ある場合や、咳やくしゃみなどの症状がある場合には、授業への参加を見合わせていただきますようお願いいたします。  なお、今後情勢の変化に応じて変更が生じる場合もございますので、予めご了承ください。
埼玉県入試情報

【入試情報】令和4年度公立入試日程が発表されました

令和4年度の公立入試日が発表されました。現中学2年生が受検する入試の日程です。 ・学力検査:2/25(金) ・実技検査・面接:2/28(月) ・追検査:3/2(水) ・発表:3/7(月)  学力検査と実技検査・面接が土日を挟んで実施されるのは現中学3年生と同じです。なお、現中学3年生は2/26(金)が学力検査の実施日です。

学院長からのメッセージ 2020 June

世界は人の努力でよりよくなる。 The world can be made better by human effort.  埼玉県の山林を歩いていると、杉と松の林が多いことに気づくだろう。針葉樹で圧倒的に多いのが杉で、その次が扁柏(ヒノキ)、赤松と続く。  むかしの日本の造林方法は単純で、造林しようとする場所の草を刈りはらって、杉やヒノキを植えていくというやり方であった。しかし、この方法がどこにでも通用するわけではなかった。  埼玉県久喜市で生まれた本多静六(1866-1952)少年は、窮乏生活のなか、農繁期は農作業をし、農閑期は上京して書生として勉学に励んだ。  1884年に東京大学(当時は東京山林学校)に入学し、首席で卒業。  林学を学ぶためにドイツに留学し、ミュンヘン大学で博士の学位を取得して帰国。  東京大学の教授となり、造園家として、東京都の日比谷公園や明治神宮、埼玉県の羊山公園や大宮公園や森林公園などの設計や改良に携わった。  ちなみに埼玉県比企郡嵐山町の嵐山渓谷を中心に「武蔵嵐山」と命名したのも本多静六である。  さて、杉がなかなか育たない場所で、どうやって杉を育てるか。  本多静六は、保護樹という方法をとった。  まず松林を仕立てて、そのあいだに杉を植え込んでいく方法である。つまり、松が杉を保護するのだ。松は育ちの早い木であり、寒冷地でなければ、どこでも育つ。松は保護樹として最適だ。  埼玉県は、海のない、山の多い県なので、ほとんどが赤松。他県の海岸で見かける枝ぶりのいい松は黒松である。  明治維新以降、日本人は、建築土木用として、木繊維用として、薪炭用として、むやみやたらに森林を切り倒してしまった。その結果が、全国各地で起きた洪水の被害であった。  よく茂っている森林であれば、降った雨の四分の一は、枝や葉の上にたまって、その後、次第に蒸発していく。残りの四分の三は、雨が葉から枝、枝から幹に流れて、徐々に地面に落ち、そこにある落ち葉に吸い取られる。本多博士の実験によると、松の落ち葉は、落ち葉の重さの五倍分の水を吸収して保つことができる。松以外の雑木や苔類は七倍~十倍の雨水を貯めることができる。よく茂っている森林があれば、洪水はかんたんには起きない。  森林の役割には、水の貯水や洪水の予防ばかりでなく、気候の調節、水源の涵養、雪崩や津波の防止など、さまざまな働きがある。  この森林を守るために、明治時代の末期から、造林や植樹に力が入れられた。  たとえば、明治36年から愛知県北設楽郡が始めた鴨山の造林は、5年間で、およそ69キロ平方メートルの面積に対して、杉220,883本、ヒノキ80,947本を植え付けている。  花粉症に苦しむ人たちにとっては杉やヒノキは厄介な存在であるかもしれないが、日本の歴史を振り返ると、人々の造林の努力によって杉やヒノキがここまで増えたのだ。  わたしたちが山林を訪ねて、杉やヒノキや松が多いことに気づいたら、その場所は人の手が育てた場所である。けっして自然にできているわけではない。  君たちの身の回りのほとんどのものに人が関わっている。世界は人の努力でよりよくなっている。そして、世界は、いつでも君の努力を待っているのだ。  さあ、しっかり学んでいこう! 学院長 筒井保明

そろばん通信|2020年6月号

そろばんで頭脳をきたえる!  日本で「右脳」という言葉を広めたのは、日本医科大学教授であった品川嘉也博士でしょう。ご本人は、交流があったことから、日本人として初めてノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士の最後の弟子と称していました。『意識と脳』(1982)ほか、多くの著作を読み直してみますと、大胆な、鋭い考察が多く、いまでもじゅうぶんに通用します。  現在では、すべての人に共通して右脳と左脳が分化しているわけではなく、「脳の機能のかたよりとして、左脳で言語をつかさどる人が多く、右脳でイメージをつかさどる人が多い」とします。また、女性よりも男性のほうが脳の分化がはっきりとしているようです。  そろばんが右脳を活性化するという主張の根拠も、じつは品川博士の実験に基づいています。  「右脳のイメージを使うことによって、脳の情報処理速度が飛躍的に上昇すること」を証明する実験に「そろばんの達人たち」が使われたのです。  数字や数学も一種の言語ですから、「九九は数を操作しているのではなく、言語操作にすぎない。つまり、九九の計算は、八十一個の熟語にすぎない」ということです。ですから、筆算は言語操作である、ということになります。計算は言語中枢を使いますので、左脳的ということです。  これに対して、品川博士は、脳波学的に、  「そろばんの達人たちは、計算しているときに言語中枢をほとんど使わず、右脳で計算している。頭のなかにそろばん球のイメージを浮かべて、イメージ操作をしながら右脳による計算をしている」  と主張します。これは珠算式暗算を習っているみなさんなら、当たり前の練習ですね。  品川博士の言葉を借りれば、そろばんの達人たちは、答えを「見ている」のです。  さて、そろばん熟達者のAさんの脳波分析をおこなったところ、達人がかけ算見取り算の暗算をしているとき、ベータ2波(16.5–20Hz, 脳の思考活動の部位に強くあらわれる脳波)が右脳側と右後頭部(視覚野)に強く出ました。  また、達人のBさんが、読み上げ算の暗算をおこなったところ、同様の結果になりました。読み上げ算にもかかわらず、聴覚野に相当する側頭部や言語中枢に強い脳波は出ませんでした。Bさんは、「計算中、ことばとして意識することはなく、言語は浮かんでこない。そろばんの球が浮かんで見える」といっています。この脳波の測定結果から、「そろばんは右脳を活性化する」といわれるようになりました。  たしかに、珠算式暗算はイメージ操作ですから、言語操作はしません。そして、イメージ操作は、言語操作よりも圧倒的に速いのです。  そろばんの達人たちだけでなく、アインシュタインなどに代表される物理学者たちや数学者たちも、イメージを操作して考える傾向が強いのです。数式で考えるわけではなく、イメージで考えて、数式で表現しているといってもいいかもしれません。  そろばんは、みなさんの頭脳をしっかりと鍛えます。  ぜひ楽しくそろばんの練習に取り組んでください。 学院長 筒井保明
埼玉県入試情報

【入試情報】令和3年度県公立高校入試における選抜基準発表時期について

「令和3年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における各高等学校の選抜基準」の公表が8月下旬になることがわかりました。例年は7月に発表されています。 ○今後の発表予定 ・令和3年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施要項・入学者選抜要領(令和2年7月発表予定) ・令和3年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における各高等学校の選抜基準 (令和2年8月下旬発表予定)

生徒・保護者のみなさまへ

各学年の終わりまで、一人ひとりの目標をとことんサポートします  新型コロナウイルスの広がりのために、世界中が混乱しています。  緊急事態宣言以後、小学校・中学校・高校にかぎらず、図書館のような公共施設や学習塾まで、休業要請の対象になっています。小学生や中学生や高校生にとっては、学習をブロックされたような状態かもしれません。  山手学院でも、埼玉県の休業要請により、4月の授業に関しては、8月終わりまでの期間に、やれなかったところやできなかったところは学習時間を設けることとし、生徒たちが通塾できないあいだ、それぞれの状況やご要望に応じて、映像授業の配信、電話やオンラインによる学習相談、Zoomによる1対1の個別指導、感染防止をしたうえでの学習サポートなど、各校舎でできる範囲でおこなっています。また、5月14日に休業要請が緩和されなかった場合を考え、Zoomによるクラス授業を各校舎で準備しています。(今後の状況によっては、対応が変わるかもしれません)  事態がここまでこじれますと、もう一度、「山手学院とはなにか」というところに戻って考えたほうが、今後の対応がはっきりします。  生徒のみなさん一人ひとりの「目標」をとことんサポートするのが山手学院の役割です。実際に目標を達成するのは生徒のみなさん一人ひとりですから、わたしたちにできることはみなさんの目標達成をとことんサポートすることです。  まず、現在の自分の状態を一切気にしないで、自分の本気の目標を考えてください。受験生であれば志望校合格でしょうし、受験生以外であれば、通知表の評定や特定の教科を得意にすることでしょう。学習するにあたって、いつでも目標が先です。現状からかけ離れた目標でもかまいません。なぜなら、本気の目標であるなら、みなさんには達成できる可能性があるからです。そして、その可能性を実現するために山手学院が存在します。  4月、5月の授業に関しては、上記のような対応になりますが、わたしたちが本来やらなければならないことは、みなさんが自分の目標を達成するための学習指導であり進学指導です。新型コロナウイルスの混乱を言い訳にすることなく、各学年の最後まで学習指導・進学指導を徹底します。  くりかえしますが、山手学院は、生徒のみなさん一人ひとりが自分の目標を達成するための学習塾・進学塾です。目標はみなさんの成長とともに変化しますから、現在の正直な気持ちで、高い目標を持っていただければさいわいです。学習に対するみなさんのモチベーションは自分の目標から生まれますし、わたしたちの学習指導・進学指導もみなさんの目標によって具体的になります。  今後、みなさんが自分の目標を達成するために、一人ひとりをサポートすることをお約束いたします。 山手学院 学院長 筒井 保明
埼玉県入試情報

【入試情報】令和2年度県公立高校の入試状況が発表されました

令和2年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施状況が発表されました。 https://www.pref.saitama.lg.jp/f2208/documents/r2nyushijyouhou.pdf  注目は学力検査問題の数学の平均点です。前年比+25.6点となっています。学校選択問題が導入されてから4回目の入試でしたが、過去4年間でも最も高い数字となっています。 学力検査問題 学校選択問題 国語 社会 数学 理科 英語 数学 英語 2年度 57.2 55.4 67.9 51.1 52.2 55.2 58.9 31年度 58.3 60.3 42.3 44.5 47.7 53.5 64.3 前年度比 -1.1 -4.9 25.6 6.6 4.5 1.7 -5.4

学校が休みのあいだに小学生・中学生・受験生のみなさんがやるべきこと

学校が休みのあいだ、君たちがやること (教科書の全体をおおまかにつかんでおくこと) まず意志を持つこと  新型コロナウイルスが広がることによって、世界中が混乱しています。  学校の休校や図書館の休館が続き、もしかしたら君たちの学習も止まっているかもしれません。テレビやゲームやYouTubeの動画などにたくさんの時間を費やしていませんか? 残念ながら、どれも君たちにとっては気楽に見たリ、プレイしたりできる、君たちが受け身になるメディアですから、君たちの学力や能力をほとんど高めることはありません。  学習でも、スポーツでも、芸術でも、取り組むためには自分の意志が必要です。  Where there's a will there's a way. (意志があるところに、道・方法がある)という英語のことわざのとおりで、「やりたい、やるぞ」という意志があるから、進む道があり、達成する方法があるわけです。  君たちの学力や能力を高めるものは、最初に君たちの意志を求めます。  学習でも、スポーツでも、芸術でも、君たちがすすんで能動的に取り組むとき、君たちの学力や能力は高まるのです。 キーワードは、「自分の声」と「全体」  さて、何人かの小学生や中学生から、「教科書が手に入りました。どうしたらいいでしょうか?」という質問がありました。  図書館が閉まっていて本が借りられない状態ですから、目の前の教科書を使う(過年度の教科書でも、新年度の教科書でもかまいません)、とっておきの学習方法を教えましょう。  この学習方法のキーワードは、「自分の声」と「全体」。  まず、人は、音声言語として、言語を身につけます。それも、聞くだけでは足りず、自分の声を発し、自分の声を自分で調整しながら、その言葉を自分のものにします。  ですから、国語が苦手な原因も、英語が苦手な原因も、専門的な用語が多い社会科や理科が苦手な原因も、多くの場合、自分の声を使用していないところにあるのです。(思い当たりませんか?)数学も言語ですから、もしかしたら数学が苦手な遠い原因も、おなじかもしれません。  そこで、自分の声のトレーニングとして、国語でも、社会でも、理科でも、英語でも、教科書を音読します。学ぼうと意識する必要はなく、楽しい読み物を軽く読むような感じで、教科書全体を最後までとおして音読してみましょう。  気をつけなければいけないのは、読めない文字(漢字でも英語でも専門用語でも)は、調べたり、聞いたりして、正しく読めるようにすること! まちがえておぼえてしまうと、あとで直すのに苦労します。  かつて日本の知性といわれた学者がベルリンの壁の崩壊を解説するとき、「本質的に、にんげんは、キジャクですからね」とくりかえしたことがあり、みんなが首をひねりました。横文字をまじえるクセのある学者でしたので、途中で「フラジャイル」と口走ったとき、「ああ、キジャクとは、脆弱(ぜいじゃく)のことか」と、はじめて合点がいきました。名前は伏せますが、日本を代表する知性でも、まちがえておぼえてしまうと、なかなか訂正できないものなのです。  まちがえておぼえないように気をつけながら、まず、音声として言葉をおぼえるようにしてください。もちろん、音声だけでは試験に通用しませんから、音声としておぼえた言葉や用語や英単語を、つぎは、書けるようにします。  「読めることが先。書けることが後」です。これは小学生でも中学生でも共通です。 先に全体に目をとおしておくと、きちんと理解することができる  つぎに、教科書を最後まで読んでしまうことです。  漢字や用語や英単語をまちがえずに読めるなら、おぼえようと意識しないで、国語や社会の教科書、また英語の教科書をまるまる音読・黙読してしまいましょう。学校が始まって、それぞれの教科を学習するとき、まちがいなく理解が速くなります。音読ですと、たしかに時間はかかりますが、自分の声を発して読んでおくだけでも、学校が始まったとき、その効果を実感することができるでしょう。先生の説明を自分の言葉として聞くことができるようになっているからです。(一冊全部に自信がない人は、とりあえず三分の一でも)  じつは、教科書をとおして読んでおくことには、もっと重要な効果があります。  むかしの考え方のまま、学習はレンガを積み上げるように「部分の積み上げ」であると思っている先生が多いのですが、これはまちがいです。たとえば、レンガで教会を作るとして、予想される教会の全体像が見えていないとしたら、はたして教会はできあがるでしょうか。  また、哲学であれば、アリストテレスでも、ニーチェでも、西田幾多郎でも、まず、だれかの一冊を最後まで読んで、おぼろげに全体像をつかみます。そうしてから、何度もくりかえして読みますと、書かれている内容が理解できるようになります。なぜなら、哲学者の頭のなかには思考の全体像(イメージ)があって、その全体像に対して思考(文)を組み上げていくからです。つまり、全体と部分が双方向に働きながら世界ができあがっていますので、一回、読んだだけではわからないのです。  よくできた教科書も、おなじです。教科書の編集作業は、その教科の全体像が先にあり、それぞれのページを集めて一冊の教科書に編集していきます。  ですから、全体をおおざっぱにつかんでから、こまかく学習していくほうが効果的なのです。  そもそも教科書はくりかえして読むように編集されています。参考書というのは、教科書を読むための参考ですから、「教科書をくりかえして読むこと」が先であり、基本です。 1学期に大きな飛躍をしよう!  「自分の声」と「全体」の意義がわかりましたか?  音読も、黙読も、教科書を読みとおすことも、君たちの意志がなければ、1ページもすすみません。ここに書いたことは、学校が始まって、実際の学習に取り組む前の、重要な下準備です。ぜひ、やってみてください。  ところで、もっと重要なことがあります。  受験生であれば志望校を持つことかもしれませんが、学習にも、スポーツにも、芸術にも、自分の目標が必要です。  君たちは、目標にむかって成長します。  目標がなければ、人は前に進むことができません。  もちろん、君たちの成長にしたがって目標も変化しますから、いまの自分が心から実現したいことであれば、どんなものでもいいのです。  君たちの意志があるところに、君たちが進む道があり、目標を達成する方法があります。  君たちの飛躍を期待しています。